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館の中

「それで僕はこれからどうすればいいんですか?」


魅也子の話は、にわかには信じかたいが一般市民の僕一人をおちょくるためだけにこれだけ手の込んだ事をする訳ないし、それに何より魅也子の瞳に写った現象は説明する事ができない。

バーンと大きな音がしたのでそちらに目をやると。

女子高生のお尻の匂いを嗅いでいたメガネ女子はその行動を本人に気付かれ、思い切り扇子で叩かれていた。


「そもそもあのコはさっきから何をやってるんですか?」


「ああ、彼女は前世が犬だからあれは挨拶だろう」


「えっと?犬って?てか、犬なら犬のお尻の匂いを嗅ぐのでは?人間のお尻なんて嗅いでどうするんですか?」


「そんなの知らん、ここに前世が犬なのはあやつしかおらんのだから仕方の無い事なのではないか?」


そんな無茶苦茶な…。


「別に気にする事ではないだろう?それよりも今は自分の事を気にするべきではないか?」


そうだった、魅也子の言うことが真実であるならば、僕は数日後に自分の命を自分で絶ってしまうのかもしれないのだ。


「それで僕はどうすればいいんですか?」


また同じ質問をした。

魅也子はじっと僕を見てから一言だけ言った。


「知らん!」


「……へっ?」


「知らん!」


聞き間違えかと思ったが、魅也子は間違いなく、『知らん!』と言ったのだ。


「え?僕を助けるためにここに呼んだんですよね?」


「はて?誰がそんな事を言った?」


「え?」


「私はただお前の前世に興味があったからここに招き入れただけだ。お前の前世は海外のありふれた一般家庭だな。父親は警備の仕事をして主に美術館の警備を担当しているようだな、母親は編み物が得意だったみたいだな」


「え…?」


「そこでお前だ。前世のお前も今のお前のように急に死にたいと思うようになった。それまでは何の悩みも無く普通に日常を生きていたんだがな」


「…彼はそれでどうなったんですか?」


「…18を迎える前日に死んだ」


!それってやっぱりやばいじゃん、僕!


「何とかしてくださいよ」


どうして僕が死ななければいけないのか?


「私には何もできん」


しかし、救いの綱の魅也子の口から出てきたの思いがけない一言だった。


「じゃあ貴女は何故僕に声を掛けたんですか?」


「そんなの決まっておる。私は前世ヲタクだからだ」


「前世ヲタク?」


初めて聞く言葉に首を傾けてしまった。


「そう!人の前世が気になって気になって仕方がないのだ。人の前世を聞くのが私の趣味じゃ」


そして、またティカップにお茶を注ぎ満足気に口に運んだ。


「そんな理由で…、それじゃあ僕はどうしたら?」


僕はどうすれば死なない未來に向かう事が出きるのか?

こんな女を頼ってここに来たのが間違いだった。

こんなとこで時間を潰してる訳にはいかない。


「何じゃもう帰るのか?」


席を立った僕を面白そうに眺めたままの魅也子の傍に先ほどまでブンブンと飛ぶ振りをしていたハチ男が止まった。


「魅也子さまの言葉に耳を傾けた方がいいぞ」


え?

男から割りと高めの声が出てきたので驚いた。


「しゃべれるのか?」


「当たり前だろ?今は人間なのだから」


先ほどとは違い、しゃんと背を伸ばし恭しく魅也子に頭を下げる姿はちゃんとした人間だった。

その人間はじっと僕を見ていた。

先ほど扇子をかかげふんぞり返っていた女子高生、その女子高生の足元にまとわりついていたメガネ女子も僕を見ていた。

ここは一体何なんだ!





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