起
「ここに居たのか我が番!」
名前も知らないどころか、会ったこともない人からいきなり言われた私の困惑を想像してみて欲しいです
ごきげんよう
私の名前はローズ=ジィです
子爵家の長女です
今夜は婚約者のジーク様と王家主催の夜会に出席しておりました
いえね未婚既婚に関わらず令嬢夫人は出席するようにとの通達があったのです
そんな権力をかさにきた王家の行動は初めてのことでした
ですから皆さん本当に困惑していましたわ
でも王命は王命
貴族としては無視することはできません
病気などで無理な場合を除いて全員が出席しましたわ
婚約者と話をし、喉が渇いたので果実を絞ったジュースを飲んでいた時のことです
いきなり
「我が番!」
と大声で抱き着かれましたの
「ふーむー」
思わず窒息して死にそうになりましたわ(涙)
「私の婚約者に何をする!」
ジーク様が助けてくださいましたの
とても頼りになって大好きですわ!
・・・失礼、つい愛が溢れましたわ
ジーク様は助け出してくださった上に背に庇ってくれましたわ
・・・はあ、広い背中
頼もしい広い背中に意識を飛ばしている最中もジーク様と変質者の諍いは続いていました
変質者に一歩も引かないジーク様
大好きですわ
「我が番だ!」
「私の婚約者だ!」
と不毛な、でも負けられない争いが続くかと思われました
後で分かったことですが隣国の獣人が番を探す旅をしていたそうです
侯爵家子息を筆頭に数多くのお貴族様のご子息が来訪していたとか
そりゃ令嬢をかき集めるはずですわよね
大事な同盟国の上級貴族のためですもの
でもだからって婚約者がいる令嬢を番にする必要があるのかと思います
自分の国で探しなさいよ、と思います
・・・そういえば自分に国で探せなかったから我が国まで来ていたんでしたっけ
騒動は夜会の警備をしていた騎士団によって治められました
獣人の子息を宥めてと言う形で、でした
ですから安心していました
でもまさかあんなことになるとは思いませんでした