挑発
3人は、住人に聞いた小学生の子が住んでいたと思われる家がある7丁目を歩いていた。
「ほんとにあるのかぁ?こんな所によぉ 結構町の外れの方だぜぇ」
「まぁ、そういうなって菫 家が見つかればなんか手がかりが手に入るかもしれないだろ?」
「そうだけどよぉ」
3人で歩いていると、表札がない家を見つけた。
「あれ、これ空き家じゃねぇか?」
「いや、表札出てないだけじゃないか? 菫」
「表札が出てないから空き家なんだよ この町の家は閻魔様が管理してるから誰かが住んでると自動的に表札が付けられるんだ じゃないと荷物届けられないだろ?」
「そうなんだ 初めて知った じゃあ、ここは空き家か」
「そうだな」
「調べてみよっ!」
そう言うと朱は、おじゃましまーすと言いながら空き家の中へと入った。菫と蒼は朱の後に続いた。家に入ると、 床や壁にあったホコリが宙を舞い、朱と菫は咳をした。2人が咳をしているのを横目に蒼は、廊下を進んで行った。ホコリや汚れなどに1番拒絶反応を示しそうな蒼が咳をしていないのを見て、2人は不思議に思いながら蒼についていった。
廊下の先にリビングがあり、3人はリビングを散策した。
「なんかあったかー?」
「んー 今のところはなんもねぇなぁ そう言う朱はなんかあったのか?」
「なんもないから聞いたんだろ〜」
「そりゃそうか」
「おい 2人とも これって」
蒼が2人を呼び、ホコリが被った1枚の写真を見せた。
「ん?小学生が5人写ってるなぁ」
「小学生ってこたぁ こいつらが犯人じゃねぇか!?」
「だなぁ! 犯人は5人だったんだ!」
「蒼! おめぇやるなぁ! よく見つけたよ!」
「ま、まぁな」
「よし!ここが犯人の家ってことはほとんど確定だ 今回の事件に繋がりそうなものも探そう!」
「みんなで同じとこ探してても効率悪いから こっからは手分けして探さないか?」
蒼の提案に2人は賛同し、3人は手分けして家の中を探し始めた。
その後、3時間ほど探したが、これといってめぼしいものは見つからず、その日は解散となった。
翌日、朱が目を覚まし、いつものように出かける準備をし、家を出ると、郵便受けから紙が出ていた。疑問に思いつつ、その紙を抜いて、中を覗いてみた。するとそこには「お前らにおれらが捕まえられるかな」と拙い字で書かれていた。
「なんだこいつー!ぜってぇ犯人のやつが入れて行きやがったんだ! くそムカつくー!ぜってぇ捕まえてやるからなー!」
そう言うと朱は、顔を真っ赤にしながら今日の集合場所である犯人の空き家へ怒りをぶつけるように走った。
朱が空き家に着くと、そこには朱と同じように顔を真っ赤にした菫がいた。
「おい!菫!お前にも届いたか!?」
「じゃあ、朱にも届いたのか!」
「うん マジムカつくよなぁこの犯人」
「あぁ絶対許せん この俺をバカ呼ばわりしやがってよぉ!」
「バカ呼ばわり? お前紙になんて書いてあったんだ?」
「え?お前らにおれらが捕まえられるかなって書いてあって、その下にお前はバカって書いてあったけど?」
「アッハハハハッハッハッハ」
朱は腹を抱え、大口を開けて笑った。
「菫のやつはバカって書かれてたんだ さすが菫だな 犯人にバカってバレてんだぁ」
「おらぁバカじゃねぇよ! ぶん殴るぞ!?」
「あー わりぃわりぃ いや〜 笑い疲れちゃったよ」
「そういうお前はなんて書いてあったんだよ?」
「ん? 普通にお前らにおれらが捕まえられるかなだけだよ」
「なんでだよ!」
2人が話していると、少し離れた角から蒼が歩いてきた。2人は、少し遠くから歩いてくる蒼を見て、怒っていないことに気づき、不思議がった。しかし、段々と近づいてくる蒼を見た2人は寒気がした。蒼の顔は般若の様になっていた。普段、感情をあまり表に出さない蒼が、怒りを全面に出し、こちらに向かって歩いてくる。蒼が2人の目の前に来ると、朱が恐る恐る話しかけた。
「蒼…??どうしたんだ?てか、蒼だよな…?」
「あぁん??蒼だけど!?これ見ろ」
そう言うと、蒼は手の中からグシャグシャになった紙を朱に手渡した。朱は手渡された紙を広げ、文章を読み上げた。
「お前らにおれらが捕まえられるかな てかカッコつけすぎじゃない?クールぶってるけど、ただの中二病!」
朱が読み終わると朱と菫は、転げ回って笑った。それを見た蒼は恥ずかしさからゆでダコの様に顔を赤くしていた。一通り笑い終わると菫が蒼に話しかけた。
「まぁまぁ気にすんなよ 俺なんかバカって書かれてたんだからよ」
「う、うるせー! 気にするだろ わざとやってる訳じゃないのによ」
「そりゃそうだ とにかく俺らのことバカにした犯人はぜってぇ捕まえねぇとな 」
「バカって言いやがってー!」
「おれは中二病じゃねぇ…犯人ぜったい捕まえる…!」
3人の目が犯人捕獲に向けて、燃え上がっていた。3人はすぐさま犯人の空き家に入り、捜索を始めた。
ひとしきり探し終わり、3人はリビングで休んでいた。
「全然ねぇなぁ 他の部屋はなかったか?朱」
「こっちも全然ない ここにはねぇのかもしれねぇなぁ」
「もう少し探そう」
「そうだな 蒼」
3人で話しながら、菫が壁に寄りかかった。
すると、ビーと音がしたと思った瞬間、上の方からガガガガガドッゴンと何か大きなものが降りてきたような音がした。
「菫、なんか押したのか?」
菫は恐る恐る自分が寄りかかった壁を見た。しかし、そこにはボタンのようなものはなく、代わりに一部が人工的にへこんだ壁が見えた。
「なんかへこんでる…」
「それはきっと隠しスイッチだな」
と蒼が言った。
「上に行ってみよう!」
朱がそう言うと3人は様子を伺いながら、階段を上がり、2階に向かった。2階に着くと、廊下に屋根裏へと続くはしごが降りていた。
「お、おい この上になんかあるんじゃねぇのか?」
と菫が訝しげに言うと
「行ってみるしかねぇな!」
と朱が答えた。
そして、3人は屋根裏に向かった。