第2話
僕達は現在平原にいて、杉下さんと数人がいる、広がる森に小屋と風車もいくつかあり奥には城が見えている
どんなトリックで僕達を連れてきた来たかはわからないけどセットにしては現実味がありすぎる
海外?でもこの短時間じゃ無理だ、地面に生えてる草をちぎって確かめたが本物だ。
頭を悩ませていると。
「灰さん どうしましょう?」
僕が聞きたい
「とりあえず城に向かってみようか」
皆で踵を揃えて城に向かう 道中気まずいので魔法少女?について質問した
「杉下さんのスキルはなんですか?」
「スキル?」
あー杉下さんゲームとか無縁な感じするし言葉を変える
「さっき選んだ能力ですよ」
「変身?です、どもどうやって使うんでしょうね」
「確かに、道具もないし掛け声とかですか?」
杉下さんがごそごそ制服のポケットをし始めた。
「何故かポケットに魔法少女エリーのマジカルミラーがありました」
手鏡を開いて見せてくれた という事は僕にも・・・腰のあたりが少し膨らんでいた
周りを見ると剣を持って慌てている人もいる、今配布されたのかな。
「どうやって変身するんです?」
「呪文をとなえるのですが・・・今は遠慮しておきます」
「灰さんはもう貰いましたか?」
「後でのお楽しみです」
にやっと笑うと杉下さんがむすっとして。
「ずるいです」
「まあまあ、門が見えて来たので行きましょうか」
「もう!」
あんまり女の子とは喋らない人生だったから新鮮で少し嬉しい、気分がいいので歩みも少し早くなる。
ついに門にたどり着く、小さいドアもないし声を出して呼んでみるが返事はない、皆で話し合って押してみることにした。
「ふん、んんんんんんんん」
今ある力を全力で扉伝える、体制を変えたりしながら押し続けるが扉の反応は無い。
「うおおおおおおおおお」
「ふん!」
「開いてください!」
全員の力の入った声が響く、隣の杉下さんも顔を赤くして頑張っている
僕はもう一度力をこめる、すると扉がごごごと横に開き始める。
隙間から人が見える、ついでに開門してる兵士のような人もたくさんいる。
「これって横開きだったのかぁ、早く気づいていれば...」
「まあまあ、開いたことですし」
少しうなだれながら、城に入っていく。
「ようこそゆうしゃ様!」
「ようこそ!」
「待っていましたよ!勇者様」
「・・・す・・・け」
「すげー」
気が付いたら僕達の周りに人だかりができて、あたりから歓迎の声が聞こえる
少し姿勢を良くしてしゃきっとしてみる、気持ちのいい声援だ運動会とか大会で優勝したような気分になる。
すると道をかき分けて来たローブをきた神官らしき人が来た。
「これはこれは勇者どの、遠き地からよくぞおいでなすった、城ではもう歓迎の準備はあるのでぜひパーティーにきてください」
案内されるがままに僕達は城に向かっていった、道中の声援もなかなかだった。
だいぶ城の中を歩いて豪華な大扉まについた
「この扉の奥には王がいますのでご無礼の無いように」
咳をついてこちらを見る、ゆっくりと扉が開く。
玉座にそれらしき長髪の男が・・・。
「やあやあ勇者諸君よくぞこの世界にきてくれた!!!!」
ハイテンションで走ってこちらに向かっていき。
そうそう皆にフレンドリーに話しかけ、肩を組んだりこづいたりしている。
ずいぶん陽気な人だな。
「で君たちはどこからやってきたのかな?」
「僕達は・・・えーと地球?からきました」
地球といってもわかるかどうかは知らないがとりあえず答えた。
「私はわからないがそれはここもそうかもしれないね」
「うーん?どう説明すればいいのか」
地球の設定じゃないのかな、意外と自分の出身を説明するのは難しい。
困っているとぞくぞく他の人も玉座に集まってきた。
「全員集まったかな?それでは君たちに一つ教えておこう」
「君たちは魔王を倒しにこの地にはるばるやってきた、そうだろう?」
「しかし魔王はもう倒してしまったのだよ」
え?もう倒した?別の人達がやってしまったのかな?出番がなく少しショックだ。
「じゃあ僕達はどうすれば」
「基本こちらからの転移はできないからここに住みたまえ、衣食住は私が保証しよう」
話がわからなくなってきた、魔王はいないのにもう終わりじゃないのか。
すると一人が。
「すみません、私には家内がおりまして、そろそろ帰らせて欲しいのですが」
「とりあえずここは食事でもどうかな?家内や会社には連絡済みだから大丈夫だよ」
「は、はぁ」
しぶしぶ引き下がったようだが、僕もここにいるのは家族も知っているのかな。
どんどん設定はわからなくなってきた、どうやったらクリアになるのだろう、異世界の人の演者もかなりいたしそうとう大きな会社がしているのかな。
こんな大きな場所も使えて家族や会社にも説明できるくらいには有名なのだろう、でも今家内とか会社ってちょっと設定甘くないか?
王様が指を鳴らすとたくさんのご馳走がはこばれてきた、初めてみるくらいの豪華さでちょっと驚く、食器も高級品だろうなぁ。
「では勇者ご一行に祝して乾杯!」
王様がグラスをあげると同時に場が賑やかになった、周りを見るとお酒も進んだようで近くの人と談笑している人もいれば
会社の愚痴や様々だ、隣には杉下さんがいて戸惑っているようだ、食事には手をつけず水しか飲んでいない。
「大丈夫?」
「私こんな豪華な食事初めてで、食べてもいいんですか?」
「せっかくだし食べちゃおうよ、僕もこんな食事めったに食べられないよ」
「アメリカのご飯ですか?凄いです」
「じゃ、まず乾杯しよっか」
「じゃ、じゃあ」
二人で乾杯をし、チンとグラスが鳴る。
ドタ、いきなり席から倒れた人が数人いる、飲みすぎだよ
一瞬静寂になったがまた賑やかになると思いきやどんどん人が倒れていく、どうなちゃったんだ
食中毒?アレルギー今ある考えでは理解が追い付かない。
杉下さんも具合が悪そうだ。
「ごめんなさい、少し具合悪くなったみたいです」
「僕誰か呼んでくるよ」
「すいませーん、お医者さんかスタッフさんはいますか?体調悪い人がいるようで」
声を出して外を見る、まだスタッフは現れない、しかし食事を運んで来たウェイトレスや周りの兵士に反応は無い。
「誰も来はしないさ、君たち以外にはね」
微笑んだ王様の体がいきなり伸びて近くの人を襲い始めた。
なにが起きてる、あがる血しぶき飛び散る肉体、どうにか動こうとしても体が動かない。
これは演出じゃない、多分現実。
やばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばい
やばいやばいやばいやばいやばいやばい
もう僕の目の前に
死ぬ
死
「灰さ・・・」
僕の前に真っ赤な触手がぺとりと当たる
よく見ると体を貫かれた杉下さんがいる
触手が引き抜かれぼとりと体が落ちた。
「杉下さん・・・どうして」
杉下さんは動かない。
第二話
杉下さんが僕に倒れこむ、抱きしめた瞬間温かさを感じる、血がとくとく溢れて僕の服を染めている。
普段なら汚れの方を気にしていただろう、明日の学校、クリーニング、でも今は
嗚咽しながら杉下さんを抱きしめる、何かの企画では否定しきれないリアルが僕に流れ込む。
出会って少ししか経っていないとしても。
奴の触手がもう目の前まで来てる、もうどうでもいい
その瞬間
ぼさぼさの髪に眼鏡をかけたローブの男が剣で触手を弾いていた。
「大丈夫かい!?」
「あ・・・」
言葉が出ない、考えたくも無かった。
「早く逃げてくれ!!」
「逃げてどうなるんですか・・・」
ローブの男が僕の頬を叩く
「いいから逃げろ!」
じんじん頬が痛むが同時に体に力も入ってきた
杉下さんを抱えて玉座の端へ走る。
しかし玉座にいた兵士が普通じゃない雰囲気で武器を構えてこちらにじりじり寄ってくる。
僕は警戒しながら少しずつ後ろに下がる。
「・・・悪いな」
槍で突いてきた、僕は杉下さんをかばう為に身をそらしたが槍はよけられなかった。
じわりと背中が熱くなる。
「どうしてこんな事を・・・!」
「すまない」
もう一度槍が迫る
僕は一旦杉下さんを床にそっと置いて兵士に死に物狂いで組み付く。
兵士は僕を引き離そうと力を加えるが僕は必死に食らいつく。
顔を殴られ力が弱まりかけたが腰にある短剣が目に入る。
それを引き抜き甲冑の隙間に差し込む、厚い肉に刃物を刺す感覚が手に伝わる。
兵士の苦しむ声が聞こえる。
なんとも嫌な感覚だ、怯んだ兵士に馬乗りになり顔をぼこぼこに殴る。
「がっ・・・」
初めて人を殴る感覚に意外と嫌悪感は無く、むしろ興奮していた。
兵士がぐったりして動かなくなった、鉄の兜を殴った拳は皮がずたずたで血も出ている。
僕はその場に崩れて座り込む。
「どうしてこんな事に・・・」
力なくぼろぼろの拳を握りこむ。
視界が薄くなってきた、そうださっきさされたから、もう死ぬのかな。
嫌だ!!!!!!!
何もわからないまま死にたくない!!!!!!
杉下さんがどうして死ななくちゃいけない!!!!
僕はどうしてこうなったか知らなくちゃいけないんだ!!!!!
まずは傷をどうにかしないと、倒れた兵士を見て少しの可能性を託して体をまさぐる。
腰にあるのは包帯と緑色の液が入った瓶だ、一か八かでそれを飲み干して包帯をがっちり巻く。
まずい・・・でも血は止まったみたいだ。
ひとまず辺りを見渡すと、王とすさまじい戦闘を繰り返している集団がいた、さっき助けてくれたのローブの人もいる。
でもどうしてまだ襲われてる人を助けないんだ、僕は残りの人を助ける為に槍と短剣を持ち助けに向かう
でもその前に杉下さんを開いたままの目を閉じてさっきの兵士のマントをかける。
「杉下さん、僕行くよ」