第五十話 「新しい稼ぎ口」
「武器の販売、ですか?」
「そう、ヘルプさんがどうかって」
エフェクト廃坑道での素材集めを終えて、ファストトラベルで近くの町に帰って来た後。
カフェで小休憩をとりながら、僕はヘルプさんに提案されたことをヴィオラにも伝えた。
「鍛冶メニューで製作した武器はかなりの高品質で、おまけに特殊なスキルも付与される。装備者に自己再生の能力を与えたり、武器がまったく破損しなくなったり、中には装備者の恩恵を上昇させるものまであるらしい」
僕は製作したばかりの【竜晶の短剣】を取り出して、それをヴィオラに見せながら続ける。
「そういう武器は冒険者たちにとってかなりの需要があるから、冒険者向けに武器を作って売ったらいい稼ぎ口になるんじゃないかって」
「それはいい提案ですね」
少しでもお金を稼ぎたい今。
その現状と鍛冶メニューの機能を照らし合わせて、ヘルプさんは最適な提案をしてくれた。
新しい稼ぎ口を増やすことができれば、目標金額に大きく近づくことができるから。
「それにアイテムメニューの中には、今まで倒してきた魔物から剥ぎ取った素材がいくつも残されてるからね。アイテムメニューの収納数に限界はないけど、中身の整理のために少しは処分した方がいいって思ってたから」
「『いつか使うかも』と言って、片っ端から剥ぎ取ってきましたからね。まさにそれが役立つ機会が訪れたわけですね」
その素材を使って、冒険者が欲しがりそうな武器を大量に生産する。
そうすればアイテムメニュー内の素材の整理もできるし、使い道がなかった素材も充分に生かすことができる。
具体的にどれほどの値段で売れるかはまだわからないけれど、いくらか解呪費の足しになったらそれでいい。
「だからヴィオラの武器を作ったら、次は販売用の武器を作ってみることにしようか」
「賛成です」
そう言って僕たちは席を立ち、次はヴィオラに最適な武器を製作しに行くことにした。
ヘルプさんの助言に従って、僕たちはポップス王国の辺境にある小さな森を訪れた。
そこにいる『王樹』から採れる素材で、良質な杖を製作できるらしい。
加えてヴィオラに必須とも言えるスキルが宿るとのことで、その武器を作ってあげることにした。
「そいっ!」
マップメニューにて即座に王樹を捕捉し、流れるように討伐を済ませる。
討伐推奨ランクは“A”とのことだけど、ヴィオラと二人で連携をすることで難なく倒せた。
そして目的の素材を剥ぎ取り、さっそく鍛冶メニューにて製作を開始する。
◇王樹の宝杖◇ ◇必要素材◇
攻撃力:250 王樹の梢×3
耐久力:200 王樹の枝×10
スキル:【聡明】
【王樹の宝杖を作製しますか?】
【Yes】【No】
タンッと【Yes】を押して製作完了。
これでヴィオラの専用武器――【王樹の宝杖】も無事に完成した。
ちなみに杖における“攻撃力”とは、“魔力の増幅力”を示すらしい。
つまりヴィオラの破壊的な魔力に、ますます拍車が掛かることになるのだ。
何よりこの『聡明』のスキルがヴィオラの助けになってくれる。
『王樹の宝杖に付与される【聡明】のスキルは、魔法を使う際の精神力の消費を半減する効果になります』
消費精神力が半減。
実質、精神力が倍増するスキルと言ってもいい。
これでヴィオラは強力な魔法を連発しても、精神力が枯渇するようなことにはならないということである。
彼女の魔法は強力な反面、精神力の消費もまた甚大なので、こちらのスキルが必須になるとヘルプさんが教えてくれた。
「大事に使わせていただきます!」
その武器を作ってヴィオラに渡すと、彼女は大切そうにそれを抱えてとても喜んでくれた。
さて、こうしてヴィオラの武器も作り終わったところで、いよいよ販売向けの製作に取り掛かろうと思う。
いや、まずは先に……
「ヘルプさん、どの町で売ったらいいかな?」
『上級冒険者が集まるトランスの町はいかがでしょうか? 強力な武器を欲していて、かつ蓄えもある冒険者が多いため、武器を販売するのなら最適な場所かと』
「トランスの町か……」
以前、ホルンと再会した少し因縁のある町。
確かにあそこには上級冒険者が多くいる。
周囲には危険度の高い危険区域も多数あるので、強力な武器を求めている冒険者はたくさんいそうだ。
そこでの販売を決めて、僕たちはまず先にトランスの町に移動することにした。
【トランスの町に移動しますか?】
【Yes】【No】