90 魔物肉(レミリオ視点)
突然ですが、リースの兄、レミリオ視点です。今後、関わって来ます。
因みにリースが手紙を送ったのは目次33です。かなり前ですね。
私はセーラン王国の王太子、レミリオ。リースの兄だ。
「魔物の肉が美味しかったので、是非ご賞味下さいませ、か。」
リーリスの手紙を読んで呟くと、側近や侍従達は青い顔をした。それも仕方がない。
魔物は野蛮で、それを食べる隣国の獣人も野蛮人。それが、このセーラン王国の常識だからだ。
私自身も同じ認識で、本来なら、誰が何と言おうと、魔物肉なんて食べようとは思わない。が、三つ年下の妹、リーリスが関わると、話は変わってくる。
私は兎に角、リーリスに甘い。と言われているが、キッカケは十歳の時だろう。
第一王子で、王太子でもある私は、幼少期、病弱だった。
「レミリオ殿下の命は、いつ尽きても、おかしくはありません。」
王宮医師が両親に話しているのを聞いてしまい、眠れない不安な夜を過ごしていた。
そんな命の危機に瀕していた私を救ったのが、妹のリーリスだった。
私を助けたい一心で使った癒しの力は、当時、リーリス自身も全てを理解出来ていなかった。
その為、力を使いすぎて、私の身代わりになる様に体調を崩して、しばらく昏睡状態が続いていた。
「お前が、私の代わりに死ねば良い。」
私は元気なリーリスに嫉妬して、思わず言ってしまった事を酷く後悔した。
リースの意識が戻った知らせを聞いて、どんな顔をして会えば良いのか分からないながらも、直ぐにリーリスの元へ駆けつけた。
「レミリオお兄様、元気になったのですね?良かった……。でも、私、こんな力があるなんて。本当の家族じゃないかもしれません。魔女かもしれません。」
いつも笑顔だったリーリスが、弱々しく震えながら泣いていた。
「リーリスは誰が何と言おうと、私の命の恩人で家族だ。父も母も皆、リーリスの味方だ。心配しなくて良い。だから、はやく元気になれ。」
母の王妃がリーリスを生んだ直後、私はリーリスを抱っこさせて貰った。
だから、絶対にリーリスは妹だし、魔女である筈がない。
例えそうでも、自分を犠牲にして命を救ってくれたのは間違いない。だから、今度は私が、リーリスを何があっても絶対に守る。
あの時そう誓った。
それなのに、野蛮人とされる獣人の国、テナール王国にリーリスを嫁がせるのを、阻止出来なかった。
国家の為には仕方がないとしても、悔やんでも悔やみきれない思いが込み上げた。
リーリスにばかり負担をかけている。私も出来る事は何でもしてやりたい。
でも、リーリスは一度も望みを口にした事が無い。
ただ元気でいて欲しい。
そう言うのだ。
そんなリーリスが初めて望んだ。
魔物の肉はリーリスの舌を満足させ、貴族にも受け入れられる確信があるのだろう。
輸出出来れば、テナール王国は潤い、我が国は天候不良で食糧危機に陥っても、肉を食べられる。
獣人の食文化を受け入れられれば、獣人に対して差別的感情が薄れ、国交正常化のキッカケになるのではないか、と。
心優しいリーリスは、他国で頑張っているようだ。
兄として、応援するのは当然だろう。
「それで、これをどう思う?」
急遽呼び出した料理長に、送られてきた魔物の肉と、同封されていたレシピを見せてみる。
「初めて見ましたが、成る程、かなり大きな塊ですね。しかし、普通の肉とよく似ています。味は、食べてみないと何とも。」
「では、調理してみてくれ。」
周りの者達が驚いているが、どうでも良い。分かりきった反応だ。
「本当に食べるのですか?」
「リーリスが食べれて、私が食べれない筈はないだろう。」
「リーリス殿下が……そうですか、畏まりました。」
料理長は何か吹っ切れたらしい。
確か、あの料理長は、よくリーリスのお菓子作りに付き合わされていた者だ。
何かしら思うところがあったのだろう。
リーリス、お前一人を野蛮人の仲間だなんて言わせない。国民全員野蛮人にしてやるからな。
私は、ニヤリとほくそ笑んだ。




