表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/128

88 帰って来た

「やっと帰ってきた――――!」

テナール王国の地に足をつけて、背伸びをする騎士達を見て、笑みが零れる。


出発が決まった十月初旬頃、木々の葉は紅葉前だったのに、十二月になった今は、既に葉は散って、雪が降り、銀世界が広がっている。


吐く息は白く、外気の冷たさで、鼻の先は赤くなり、ツンとする。

二か月という時間の経過を実感した。


夕方四時頃、テナール王国に到着した私達は、リロイ国王陛下が待つ謁見の間へ行き、帰還報告をする。


謁見の間へ行くのは、何だかいつも緊張していた。

けれど、今日は違う。

緊張よりも、リロイ国王陛下とデニス王妃殿下に会える喜びの方が、勝っていた。


玉座に座るリロイ国王陛下は、変わらず威厳を放っていた。

隣に座るデニス王妃殿下も、傍に控えている宰相のイーサンも元気そう。


「王魔討専部隊部隊長グレーシス、妻のリーリス、王魔討専部隊、ハイヤー王国騎士団。王宮医師クレイン、侍女のマイとメイ。全員欠ける事無く、任務を達成致しました。」


グレーシス様が帰還報告をして、謝礼として賜った品の目録を、宰相のイーサンに渡した。


「皆、よく無事に帰ってきてくれた。ハイヤー王国の騎士達も送迎感謝する。簡単ではあるが、別室に食事を用意している。私は参加出来ないが、王太子のティミラーが迎えるから、皆、楽しんで貰いたい。」

「「「ハッ。」」」


リロイ国王陛下が私達に目を向けた。


「グレーシス、リーリスは残るように。」

「「はい。」」


報告は早々に終了し、私達以外は夕食を兼ねた慰労会の会場に移動となった。


全員が退室し終えると、謁見の間には、私達とリロイ国王陛下、デニス王妃殿下だけになった。

いつの間にか、イーサンも席を外している。


「グレーシス、リーリス、此方へ。」

リロイ国王陛下が玉座から手招きするので、高座のすぐ近くへ行く。


「明日、大事な話があるので、二人とも執務室に来てくれ。それと、もう一つ。」


リロイ国王陛下が立ち上がり、高座から降りて来た。

両手を広げたかと思うと、私達を纏めてハグした。


「え?」

「父上?」


私とグレーシス様は、リロイ国王陛下の行動が予想外だったので、少し戸惑った。


「よく帰ってきた。父として嬉しく思う。」

リロイ国王陛下は腕を解くと、グレーシス様の肩に、ポンと手を乗せた。


「たまには親として、息子を可愛がりたいのだ。許せ、グレーシス。」

「……はい。」


グレーシス様はいつもと変わらない対応だけれど、何だか嬉しそうにも見えた。


「リーリスもよく帰ってきた。ホーウル王国だけでなく、ハイヤー王国の信頼も得るとは。予想外だったぞ。」

ポンポンと頭を撫でられた。


「お義父様もお元気そうで何よりです。」

再開出来た事が嬉しくて、思わず顔が綻ぶ。

リロイ国王陛下が再びハグしてくれた。


「息子も良いが、娘も可愛いものだな。」

娘。家族として認めてくれるその言葉が、とても嬉しい。私もハグを返した。


「父上、いい加減リーリスから離れて下さい。リーリスは大人の女性であって、子どもではないのです。」


グレーシス様が呆れたように、リロイ国王陛下に苦言を呈している。


「何だグレーシス、嫉妬か。仕方ないな。」

リロイ国王陛下がグレーシス様に、力一杯ハグをした。


「違うっ。そうじゃない。父上っ、離れて下さい。」

「遠慮するな。」

「してない!」


お義父様に強く抱き締められて、身動きが取れないでいるグレーシス様を、微笑ましい気持ちで眺めていた。

私と同じように二人を眺めていたデニス王妃殿下と、はた、と目が合い、自然と互いに微笑んだ。


「リーリスお帰りなさい。会いたかったわ。」

「ただいま戻りました。私も会えて嬉しいです。」


デニス王妃殿下にもハグされた。

お義父様とお義母様が、お帰り。と言ってくれて、私をちゃんと家族として受け入れてくれる事が、とても嬉しい。


「よく帰って来てくれたわね。兄弟の中で騎士を選んだ貴方が一番心配よ。」

グレーシス様もデニス王妃殿下に、ハグされていた。


「心配をかけてすみません。でも、必ず戻ります。」

グレーシス様が、デニス王妃殿下を慰めるように、ハグを返している姿が印象的だった。


「さて、そろそろ仕事に戻るとしよう。お前達も会場に行かなくてはな。」

お義父様は切り替えるように、威厳のあるリロイ国王陛下の顔になった。


見計らったように、宰相のイーサンが外から出入口の扉を開けた。

リロイ国王陛下が、デニス王妃殿下を伴って、出口に向かって歩きだしたので、私達も後に続く。


今回の要請は私が感染すれば、絶望的な結果になる可能性があった。

私とグレーシス様は勿論、不安だった。


けれど、お義父様とお義母様は、親として心配する気持ちを抱えながら、国王や王妃として、我が子に命をかける任務を強いなければならず、苦渋の決断だったに違いない。


そして、国王と王妃でいる限り、今後も、その決断をし続けなければならない。


「二人とも、決して私達より先に逝くな。分かったな。」


背中越しの言葉から、リロイ国王陛下が、どれだけ心配していたかが伝わって来た。


「「はい。」」


私達は愛されている事を実感して、力強く返事をしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ