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獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ


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81 報告

グレーシス様に抱き抱えられて、客室に着いたのは夕方四時頃だった。


「この度はお守り出来ず、怪我をさせてしまい、申し訳ございませんでした。」


部屋の前で待機していたエイガーが、私を見るなり深々と頭を下げた。


「頭を上げて、エイガー。貴方はちゃんと守ってくれていたわ。それに、無事で良かった。お陰で、私は助けて貰えたわ。有り難う。」


エイガーの胸には矢傷、顔は赤く腫れあがっている。

きっと酷い目にあったのね。でも、元気そうで良かった。


「無事で良かったは、こちらの台詞です。」


優しいエイガーは、私を気遣ってばかり。

そして、とても真面目だった。


「グレーシス、報告がある。後で時間をくれ。」

「分かった。このまま部屋の前で待機しておいてくれ。」


まさに阿吽の呼吸。

グレーシス様がそれ以上何も言わなくても、エイガーは部屋をノックして扉を開け、グレーシス様が私を部屋に運び込んだ。


「妃殿下、よくご無事で……もないじゃないですか!」


一瞬、マイの尻尾の毛が、ぶわっと逆立った。

誘拐された事は、エイガーから聞いていたのだとか。


「マイ、クレインを呼んでくれ。リーリスの怪我を見て欲しいと伝えろ。」

「はい。」


グレーシス様は侍女のマイに指示を出すと、私をベッドまで運んでくれた。

マイに呼ばれたクレインは、直ぐに来てくれた。


「右肩と右足首、他にもあれば診てくれ。私は一旦部屋に戻る。クレイン、終わったら報告を頼む。マイ、夕食はリーリスと取る。準備出来たら、呼びに来てくれ。」


「「畏まりました。」」


傷を確認するには、肌を晒す。

グレーシス様は私を気遣って、部屋を退室してくれた。


「右肩は痛みが暫く続くでしょう。腕を動かすのも辛い筈です。痛み止めの薬草茶を出しますので、寝る前に飲んで下さい。足首の腫れは三日程で引くでしょう。」


クレインは薬草茶と足に塗る薬を処方すると、ベッド脇の椅子に座り直した。

他にも何かあるみたい。


「実は茶会の後、ネル殿下を交えて、ホーウル王国の王宮医師と意見交換したのです。それで、狂気病感染者の、早期発見方法が分かったのです。タイミング良く来たハーレンス殿下に報告したら、直ぐに、感染者に関わった全ての者を調べるよう、指示を出して下さいました。」


「凄い展開ね。で、どうやって発見したの?」


そんな話をされたら、聞きたくなる。

クレインも話したくて、仕方がなかったらしい。


「栄養投与に使っていた薬草茶、あれが患者の口に触れると、変色していたのはお気付きでしたか?」


「え?そうなの?」

全然気づかなかった。


「ネル殿下が紹介してくれた、狂気病を研究している王宮医師と、薬草について話をしていた流れから、その話をしたのです。もしかしたら……と、研究所で幾つか採取してあった狂気病患者の唾液と、私達の唾液で調べたのですが、変化が起きたのは、狂気病患者だけだと分ったのです!」


「凄い発見じゃない!」

クレインが興奮するのも分かる。


「そうなのです!で、皆で意見を出して、紙に薬草茶を染み込ませ、それを口に含む方法なら、検査も簡単で大量生産出来る。と意見が纏まった時に、タイミング良くハーレンス殿下が、マーチス殿下を探しに、やって来たのです。まさか、私をグレーシス殿下が探しているとは思いませんでした。」


私が誘拐されている間、クレインは良い出会いをして、有意義な時間を過ごしていたみたいだった。

その場に立ち会えなかったのが残念でならない。


「その時に出来た実物がコレです。既に患者に関わった者達には渡されています。」


クレインが十センチ位の細長い紙を出した。

紙の半分は白く、半分は茶色に変色している。


「この茶色い方を三秒ほど口に含むだけです。妃殿下も試して下さいませ。」


紙を受け取って、言われた通り、茶色い方を口に入れて、三秒位待って、口から出して紙を見た。

茶色のまま、変化はない。


「妃殿下は感染しておりません。もし、感染しているならば、赤く変色するのです。」


さっき話しを聞いた筈なのに、感動してしまった。


「こんなに早く簡単に、結果が分かるなんて、凄いわ!これがあれば、二週間待たなくて良いわね。それに、元気なうちに治療が出来るし、ヒト型の状態で治療したら、いつまで安静にすべきか分からないけれど、この紙があれば、治ったと確認出来るわね。」


マイが居るから、癒し手は伏せて話をする。


「ネル殿下によると、今日と明日、一日かけて、ここ一か月の間に治療した患者の濃厚接触者や、その周辺の関係者を洗い出して、この紙で、感染者の調査をするそうです。」


ここ二週間は新規感染者が出ていないし、その前も数人程度だったから、出ても、一日二十人以下だと予想出来る。

となると、早ければ明日、遅くても明後日には感染者に癒し手が出来る。


帰国日は明後日だけど、ヒト型で感染者が見つかれば、ギリギリ癒し手を施せる。

これなら潜伏期間の感染者全員の治療を終えられる。

見通しが立ってホッとした。


「明後日の帰国ギリギリになりそうだけど、終息宣言出来そうね。」


グレーシス様や、全員と帰国出来るのは嬉しい。

けれど、二週間後、新たに感染者が出る可能性を思うと、後ろ髪を引かれる思いだった。


「はい。これで心置き無く帰国でます。」


クレインも私と同じ気持ちだったみたい。


「まだ研究段階ですが、この変色した紙を元の茶色に戻せる何かが、狂気病の治療薬になる可能性が出てきました。」


「その何かが見つかれば、もう自国で治せるし、狂気病も怖くなくなるかもしれないのね。」


早く見つかって欲しい。


「はい、妃殿下が栄養の投与を提案しなければ、ここまで辿り着かなかったでしょう。」

「それは違うわ、クレインが薬草茶を処方して、変色に気付いたからよ。」


「妃殿下が先に……。」

「クレインが見つけたから……。」


私達はいつも良いことは、相手のせいにしたがる節がある。

そんな時、大抵どちらも引かない。

そう気付いて、お互い見合ったまま、クスリと笑ってしまった。


「長居してしまいましたね。殿下にも報告しなくては。では、明日また来ます。くれぐれも、無理して動いてはいけませんよ。分かりましたね。」


「分かったわ。有り難う。」

クレインに信用されていないのか、念を押されてしまった。


「クレイン殿、ご安心くださいませ。私が決して、妃殿下に無理をさせませんから。」


マイから今までに無い、強い意思を感じた。


何か嫌な予感がするのは、気のせいだと思いたい。


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