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獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ


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57 王魔討専部隊の派閥(エイガー視点)

騎士達がリーリスを受け入れるまでの話です。

私は王魔討専部隊、部隊長補佐のエイガー。


現在、王魔討専部隊には、リーリス妃殿下派と、反リーリス妃殿下派が存在している。


当初、辺境の任務に同行した私達騎士は、漏れなく人間嫌いだった。が、リーリス妃殿下と生活を共にする中で、考えは変わっていった。


そして、妃殿下からリボンを貰った騎士全員が、自ら望んで忠誠を誓った。


しかし、任務に参加しなかった者は当然だが、人間に忠誠を誓う自体、信じられない行為だった。


妃殿下には、何か洗脳する力があるのではないか?

反妃殿下派の騎士達は、そう疑っていた。


士官学校時代の同級生でもあり、同僚のベクターも反妃殿下派だった。


「エイガー、正気か?」

「至って正気だよ。きっと会えば分かる。」

「別に分かりたくも無いし、関わりたくもない。」


しかし、そう言う訳にはいかなかった。

任務が終わった慰労会で王魔討専部隊は、全員、妃殿下を目の当たりにする事となる。


なんせ妃殿下も獣人の為に、リロイ国王陛下から任務を命じられていたのだから。

騎士からすれば其だけで驚く。


慰労会に招待される。それは国の為、つまり獣人の為に尽くした者だけが参加を許されるのだから。


反妃殿下派は遠目から妃殿下を観察していた。

なるべく関わらないようにしていた、とも言える。


しかし、妃殿下派はかなり攻めていた。

各々が妃殿下の皿に、お勧めの料理を遠慮なく乗せ、食事する妃殿下の元へ絶える事なく乾杯に訪れている。


妃殿下は全てを受け入れ、楽しそうにしている。

王族にそこまでグイグイ行く妃殿下派に、反妃殿下派は、ヒヤヒヤした表情をながらも、妃殿下の様子に驚いていた。


何故なら、本当の友人のように騎士に接していたから。

そして、グレーシスの妃殿下への執着にも驚いたようだった。


辺境に同行した騎士達が妃殿下に貰ったリボンを、あの、騎士が恐怖すると有名な、不機嫌を隠そうとして隠しきれていない笑顔で、回収するグレーシス。


妃殿下に忠誠を誓った騎士達が、自分で返したい。と言うのに、ちっとも譲る気が無い。


「やはりあのリボンには、特殊な洗脳効果が……。」

グレーシスに関しては、あまりの変わりように反妃殿下派は、現実を受け止め切れなかったようだ。


まあ、今回の任務が特殊だっただけで、そもそも妃殿下は王魔討専部隊には縁の無い存在だ。

きっと、もう会う事も無いだろう。

ほぼ全員が、そう思っていた。


が、妃殿下は王魔討専部隊の騎士棟に、自らやって来た。しかも、差し入れを持って。


獣人の女性は、男性に贈り物をしない。決して。ねだる一方だ。

仮に女性から何か贈られれば、男性は、倍以上の品を返す必要がある。


しかし、妃殿下はその常識の外に存在していた。


リボンはホイホイ作って騎士に渡すし、グレーシスには超高級レアとされる、モチーフ入りイニシャル刺繍ハンカチを、自ら刺繍してプレゼントするのだ。


その動機が「ご無事で」とか、「お守りに」とか言うのだから羨ましい。


夜営続きの、げっそりしている時に聞かされたグレーシスの惚気話には、殺意を覚える程だった。

そして、今回も当然のように言い放った。


「お疲れでしょうから、皆様に甘い物でもと思いまして。」

何の打算も無い厚意。それがどんなに嬉しい事か。


たまたま休憩時間にグレーシスが執務室に居なかったので、騎士達の休憩室に誘った。

反妃殿下派にも、この感動を味わってみるがいい、と思ったのだ。


突然、妃殿下が休憩室に現れて、流石に騎士達は姿勢を正した。

辺境騎士とは違い、不快でも態度に出さないのは、流石エリートである王国騎士団だ。


「妃殿下が差し入れを持ってきて下さった。早速頂こう。」

「妃殿下、直ぐに紅茶をお入れします。」

早速、妃殿下派のカールセンが声をかけた。


「いえ、お休みの邪魔になりますから。」

「妃殿下、どうか付き合ってやってください。もてなしたいのです。」


椅子を引いて着席を促す。

妃殿下は優しいので、好意を無下に出来ない。

純粋で扱いやすく、非常に心配になる。


「では、お言葉に甘えて。」

そう言って座ると、持ってきた箱を開けた。中には大量のクッキーが入っていた。


「味は邸の者や殿下にお墨付きを頂いたので、大丈夫だと思います。」

「妃殿下が作ったのですか?」


「ええ、セーラン王国にいる時、料理人に教わったの。」

私を含め全員が信じられない、と言いたげだった。


「では、頂きます。」

先に手を付けないと、他が行き辛い。と思い、一つ食べた。

「旨っ。」

驚いて、思わず声が出た。


取りあえず、お世辞でも言うつもりではあったが、必要なかった。

妃殿下派は、躊躇いなく順番に箱を回してクッキーを口にし、旨さに悶えていた。


「エイガー。」

一番遠い場所にいたベクターが、口を開けて寄越せのポーズを取っている。


口でのキャッチはベクターの得意技だが、行儀はすこぶる悪く、女性に漏れなく嫌われる行いだ。

それを敢えて妃殿下の前でやるつもりとは、どんな意図があるのか。


反妃殿下派もベクターに注目している。

妃殿下派は、妃殿下の心象を損ねるのでは。と若干ヒヤヒヤしているようだ。


妃殿下は、何故ベクターに注目が集まっているのか、何が始まるのか、理解出来ていないらしい。


箱のクッキーを一枚、ベクターに向かって投げた。

弧を描いて飛んだクッキーは、スポッとベクターの口に吸い込まれ、ベクターは無言でクッキーをモグモグと食べた。


「まあ、凄い。上手。」

パチパチと妃殿下が手を叩いてベクターを称賛する姿に、全員、いや、ベクター本人が一番驚いていた。


「あの、お口に合いましたか?」

不安そうに窺う妃殿下に頷いて、再び口を開けるベクター。


「エイガー、もう十枚くれ。」

「そんなにやるか。俺が食う。」


余程旨かったのだろう。気持ちは分かるが、つい自分も地が出てしまった。


そもそも休憩時間に甘い物を食べられるなんて、先ず無い。

反妃殿下派もやはり甘い物には負けて、クッキーを食べ、旨さに魅了されてしまったのだった。


「また、お持ちしても良いかしら?」

「「「「是非。」」」」


騎士達はすっかり餌付けされて、全員妃殿下派になってしまったのだった。


それを知ったグレーシスが、嫌な顔をしたのは、言うまでもない。


次回から本編です。

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