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獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ
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5 別邸到着

謁見の間を後にして、グレーシス殿下に王宮を案内されながら、王族居住区域にある別邸に向かった。


「お帰りなさいませ、グレーシス殿下、リーリス殿下。」

一人の執事らしき男性を中心に、侍従達が玄関ホールで出迎えてくれた。


「彼はヒョウの獣人で、執事のドルフだ。不明な点は彼に何でも聞いてくれ。」


グレーシス殿下は邸に着いてから気が抜けたのか、急に言葉遣いが変わった。

今迄の丁寧な話し方は余所行きだったらしい。


「よろしくドルフ。」

「こちらこそよろしくお願いいたします。」


ドルフは、優しい笑顔を返してくれた。

年齢は三十代後半くらいに見える。

背が高く、茶色い髪とオレンジ色の瞳が特徴的な、品のある男性だった。


「さあ、お食事の用意が出来ております。お二人とも食堂へお願いいたします。」


グレーシス殿下にエスコートされて食堂へ向かった。

食堂のテーブルに案内され、グレーシス殿下の向かいに座った時、気が付いた。


テナール王国へ入国してから朝と夜は部屋食で、昼食は馬車の中だったから、グレーシス殿下と共に食事をするのは、この夕食が初めてだ、と。


しかも家族以外の男性と二人で食事なんて、これもまた初めての体験だわ。


内心ドキドキしながらグレーシス殿下と向かい合って食事を取る。


今迄の食事は気遣いからか、セーラン王国を真似た料理が提供されていた。


でも、今夜の夕食はテナール王国独自のコース料理がテーブルに並んでいる。


よく見ると、中には見たことが無い食材もあり、どれも品良く美しく盛られて、ちょうど食べきれるように食事量の配慮がされていた。


これからはこの国の様々な文化に慣れなければいけない。


平民の食事に比べて、王族の食事は高級で贅を尽くされている。だから好き嫌いなんて絶対にしてはいけません。

教育係からそう教わったのを思い出した。


「頂きます」

どれも、とても美味しい。


「美味しいですね」

「そうだな。」


「このサラダに入っている食材は初めて見ます。何と言う野菜ですか?」

白い野菜はくし型にカットされている。


「カウブと言うこの地でよく栽培される白くて丸い根菜だ。」

「とても瑞々しいですね。」


「そうだな。」

グレーシス殿下は質問には答えてくれる。

でも、話かけては来ない。


もしかしたら、食事中は、お話しないで静かに食べるのが、テナール王国のマナーなのかも知れない。


教育係はテナール王国の食事マナーについて特に言っていなかったけれど、障気で体調が変化する話も習わなかったから、他にも習っていない事があるかもしれない。


グレーシス殿下に倣って大人しく食事に専念する。


うん、やっぱりどれも美味しい。

テナール王国の食事は私の舌にも合う味で嬉しい。

食文化は楽しめそうで安心した。


「食事に魔物の肉が使われていたが、食べたみたいだな。」

食事を完食したくらいに、グレーシス殿下が話しかけて来て、ピンと来た。


「もしかして、あのメインのお肉ですか?初めて食べる感じがしましたけれど、柔らかいのに程好い弾力があって、大変美味しく頂きました。料理人の腕が素晴らしいのね。」


初めての魔物食体験が思ったより美味だったので、思わず感嘆してしまった。

グレーシス殿下が一瞬目を見開いて、すぐに元の表情に戻った。


「そんな事を言えばまた料理人が魔物肉を出すぞ。」

「それは是非、楽しみにしております。こんなに美味しいお肉なら、セーラン王国に輸出しても受け入れて貰えそうですね。」


「いや、それはあり得ない。」

グレーシス殿下にキッパリ否定されてしまった。当然と言えば当然の反応だった。


祖国に帰って魔物を食べたなんて言えば、私も野蛮人の仲間入りなんて言われるのかもしれない。


でも肉は貴重だし、セーラン王国で魔物食が受け入れられれば畜産に打撃が出ても国民は肉を食べられて、ひもじい思いをしなくて済む。


もしかしたら、魔物肉を食べる獣人は野蛮だ、と言う祖国の考え方も変わるかもしれない。


そうだわ、お兄様にお手紙で報告致しましょう。

魔物のお肉は美味でした、と。


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