40 治療計画
王国騎士団第二部隊のサンセとシュナイザーは、私がテナール王国へ来たその日から、専属護衛として付いてくれている。
護衛中のサンセは伝染病に罹り、邸でライオンに獣化した姿も見た。
シュナイザーはジャガーの獣人で、グレーシス殿下の元婚約者だったシャルルの兄だ。
王国騎士団第二部隊の任務は主に、王族や要人の護衛だ。とシュナイザーが教えてくれた。
案内された部屋の前には別の騎士が二人立っていて、私達の姿を見ると扉を開けてくれた。
入室は私と王宮医師のクレインだけで、サンセとシュナイザーは部屋の前で待機する。
部屋には第一王子であり、王太子のティミラー殿下と、第二王子であり、宰相補佐のフレイル殿下が待っていた。
ティミラー殿下は金髪の髪を襟足まで伸ばしている。茶色い瞳をした優しげな甘い顔立ちの美丈夫だった。
フレイル殿下も金髪で長い髪を後ろで結んでいる。オレンジの瞳をして、目つきは鋭いが、こちらも端正な顔立ちの美丈夫だった。
次期国王と次期宰相の二人は現在、リロイ国王陛下の補佐として、国内で発生する問題解決に尽力している。
「二人とも辺境からの帰還後で、疲れているとは思うが、王都の現状を説明しよう。」
フレイル殿下が早速本題に入った。
「伝染病で獣化した民は、広場に設けられた仮設の建物に収容されているが、患者が増え続け、建物の収容人数の限界を越えつつある。薬草も対症療法でしかなく、死者も多く出ている。」
「大変な状況だとは聞いていましたが、これ程とは。」
クレインが溜め息をついた。
かなり悪い状況だと分かる。
「治療に必要な事は話して欲しい。遠慮はいらないよ。」
ティミラー殿下の穏やかな口調に促されて、希望を伝えた。
「先ず治療可能なのは、一日三十人が限度です。重症度の高い方を選別して、事前に眠らせた上で、別室に運び、治療したいです。治療を受けた者には、日付を書いたタグを付けておくと、分かりやすいでしょう。早い方だと四日でヒト型に戻りますので、タグがあると目安になります。」
フレイル殿下がメモを取る。
「分かった。別室と睡眠効果の薬草、タグは何とかしよう。明日の午後までには動けるよう、現地の医師と連絡を取り、手筈を整えるつもりだ。其までゆっくりと休んでおけ。」
「お気遣いありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
席を立ち、お暇しようとした。
「ああ言い忘れていた。この任務が終わったら、私達とグレーシスでお茶会でもしよう。その時は兄と呼んで。ね、リーリス。」
ティミラー殿下に甘い顔でニッコリと微笑まれた。
「ティミラーの言う通りだ。我々はリーリスの家族だからな。」
フレイル殿下のハキハキした口調には、優しさが含まれている。
こんな素敵なお兄様が二人も出来るなんて嬉しくてつい顔が緩んでしまった。
「はい、楽しみにしています。ティミラーお義兄様、フレイルお義兄様。」
「「!!」」
二人とも言葉を失って目を見開いている。
あれ?駄目だった?そうだ。
「すみません。お茶会の時に、ですよね、急に失礼な呼び方をしてしまい、申し訳ございません。嬉しくて、つい。」
「イヤ、良い。良いんだ。是非そう呼んでくれ。」
「気にしないで。妹って良いなって思っただけだから。」
フレイル殿下は手をヒラヒラと振りながら、ティミラー殿下は満面の笑みで言ってくれた。
不快でないのなら、良かった。
ホッとしつつ部屋を退室して、医師のクレインと別れた。
護衛のシュナイザーは、騎士棟へ戻るついでにクレインを送り、私はサンセと共に邸へ戻る。
グレーシス殿下の邸は王宮内なので、歩いて帰れる距離にある。
邸の庭園も素晴らしいけれど、王宮の庭園は広大で花の種類が多く、邸とは違った素晴らしさがあるので、一度寄りたいと思っていた。
「王宮の庭園を通って帰りたいのだけれど、いいかしら?」
「護衛に了解等要りません。妃殿下のお心のままに。」
「ありがとう。サンセ。」
夕日に染まる庭園の自然を感じながら散歩して、自然エネルギーを蓄えた。
明日から、いつ終わるか分からない治療が始まる。
不安はあるけれど、グレーシス殿下の魔物討伐任務に比べたら、安全で楽な任務なのは間違いない。
よし、私も頑張ろう。皆の幸せが私の幸せに繋がるのだから。
体調だけは崩さないように、思いっきり深呼吸して気合いを入れた。




