38 エイガーとリボン (エイガー視点)
部隊長補佐、エイガー視点です。
出立式の最後に、妃殿下が辺境の騎士団に手作りリボンを渡している。
その光景を我々王魔討専部隊は整列して見ていた。
「いいな~。自分も妃殿下のリボン欲しい。エイガー部隊長もそう思いませんか?」
私の前に並んでいたカールセンがぼやいた。
「そうだな。」
正直羨ましい。
獣人の女性は貰う一択で、男性にプレゼントなんてまずしない。
女性からプレゼントを貰えば倍以上の価値ある物を男性は返さなければならない。
そんな価値観の中、ただ、無事を願って渡される手作りのリボン。
見返りの無い気持ちがどれだけ嬉しいか。
我々王魔討専部隊も妃殿下の慈愛に、すっかり心を掴まれてしまった。
辺境騎士団が忠誠を捧げるように、我々も全員漏れなく忠誠を誓うだろう。いや、誓いたくてウズウズしていると言って良い。
ジト目で辺境騎士団を眺める我々王魔討専部隊。
「妃殿下は最初、皆さんの為に作っていたそうですよ。辺境に来てからも作っていたそうなので、皆さんの分もあるかもしれませんね。」
王宮医師クレイン殿の意外な話に、カールセンが反応した。
「そうなの?エイガー部隊長、自分達も並びましょう。」
「私達が並んではいけない。とは言われていないし、並ぶか。」
リボンが無くなったらそれまでだが、まあ良い。
部下達を行かせて、私は最後に並ぶとしよう。
「クレイン殿は並ばないのですか?」
「ええ、私、妃殿下からは色々頂いていますし、ここだけの話、妃殿下との時間を一番過ごしているのは私なのです。ですから、殿下に嫉妬されないように気を付けなくてはなりません。」
「成る程、それはそうか。」
グレーシスの妃殿下への執着を見れば分かる気がする。
我々も無事リボンを貰い、忠誠を誓う。
本人は平静を装っているつもりだろうが、手に口付けされる度に、ほんのり赤くなっている姿が愛らしい。
グレーシスが凄まじく黒いオーラを放っているのは分かっている。が、この際無視しておこう。
そう全員が思ったようだ。
徐々に列の人数が少なり、私は最後尾だった。
その後ろにグレーシスが並んだ。
「グレーシスも並ぶのか?」
「当たり前だ。最後が最も印象が残るからな。」
グレーシスが何をしたいのか分かってしまった。
リボンを受け取り忠誠を誓った後、退いた私はグレーシスを見た。
妃殿下の手を取り、私達が口付けした所を素早く親指でぬぐった。
そして、忠誠とは思えない、くっそ長い口付けをしている。
妃殿下が動揺して明らかに赤くなっている。
グレーシスの狙い通り、今、妃殿下はグレーシスの事で頭がいっぱいだろう。
唇を離したグレーシスが満足そうに微笑んだ。
その後、何を言ったかも、しっかりと聞こえてしまった。が、勿論、知らないふりをする。




