34 悪戯
朝七時、カーテンの隙間から光が差しているのに気付いて目が覚めた。
昨日はピクニックの筈が、思わぬ魔物討伐になってしまった。
きっと疲れが溜まっているのだろう。
グレーシス殿下はこちらに顔を向け、熟睡しているのか、起きる気配が無い。
じっと寝顔を見つめる。
寝ていても整った顔は美しい。口も半開きではないし、ヨダレも垂れていない。
そっと艶のある黒髪を手で梳くと、サラサラとした感触が指に伝わってくる。
ドキドキしながら胸元に近寄って、頬をくっ付けてみる。
トクトクと心臓の音がよく聞こえる。
温かくて心地好いので、思わずスリスリと胸に顔をすり付けて、じっと様子を伺う。
まだ起きない。
そろそろ布団から出ようかな、と思ってモゾモゾ動くと、腰の辺りに、ぐるりと腕が回された。
向かい合わせに身体が、ピッタリくっついた。
「……っ!」
ギリギリで声を押さえた。が、これはさすがに起きた。
視線を上に向けると、スヤスヤと寝息が聞こえる。
まだぐっすりと眠っているみたい。
腕の力が少し緩んだので、ゆっくり上に上がって、また顔を眺める。
「実は起きてます?」
声をかけても無反応。
寝息だけ聞こえる。本当に眠っている。
なんて愛しいのかしら。
ゆっくり顔に近づいて、いつだったか、グレーシス殿下がしてくれたみたいに、おでこに、ほんの少しだけ、触れるくらいのキスをした。
眠っているヒトに、こんな事をするなんて……。
自分でやっておいて、罪悪感と恥ずかしさから素早く布団を被った。
起きていたらどうしよう。
チラリと確認する。
眠っている。
ホッとして、また少しずつ近づいて、グレーシス殿下の胸に顔を埋める。
このまま起きるのを待つことにした。
けれど、グレーシス殿下の体温が心地好かったのか、いつの間にか二度寝してしまった。
「ハァ……。何、可愛い事しているんだ?」
グレーシス殿下が、初めから起きていたなんて、知るよしもなかった。




