33 兄への荷物
森の散策から城塞に戻って来たのは、三時頃だった。
「辺境から荷物をセーラン王国に送るには、叔父上、ギルバート団長の許可が必要だ。私が許可を貰っておくから、魔物肉以外に送る物があれば、準備しておくと良い。私は用を済ませて来る。」
「ありがとうございます。」
グレーシス殿下は、一旦私を部屋に送り届けると、直ぐに退室して行った。
「妃殿下、魔物の匂いが致します。先ずは湯浴みを。」
侍女のマイに言われてお風呂に入った。
いつもより念入りに洗われ、湯船には、フェルメスが持たせてくれた薔薇の花弁も浮かべられた。
「そんなに匂っていた?」
「ええ、グレーシス殿下ほどではございませんが。妃殿下はいつも仄かに良い香りがしますので、余計に違 和感を感じてしまいました。」
自覚はなかったけれど、かなり不快だったのは理解出来た。
湯浴みを終えて、早速荷物の準備に取り掛かる。
「先ずは、お兄様にお手紙を書いて、ベインのレシピと、そうだわ、フェルメスから貰った薔薇の花弁も……。」
侍女のマイは、私の荷物を全て準備してくれたので、何が何処にあるのか、直ぐに分かるらしい。
私の独り言を聞くと、事前に用意していた便箋をテーブルに置いて、その横にレシピと薔薇の花弁を並べてくれた。
お兄様に手紙を書き終えた頃、グレーシス殿下が木の箱を持って戻って来た。
大浴場へも行ったらしく、石鹸の香りがする。
箱の中には厳重に包装された塊が入っていた。
あの魔物の肉なのだろう。
「しっかり血抜きもされて臭みも無い。セーラン王国でも美味しく食べれるだろう。食べる気があれば、の話だが。」
「大丈夫です。お兄様は絶対に食べてくれます。」
グレーシス殿下に断言しながら、木箱の中に手紙と、ベインのくれたレシピ、そして、乾燥させた薔薇の花弁が入っている小袋を入れた。
どうかお兄様に想いが伝わりますように。
そう願った。




