29 五日目屋上にて
五日目。残るは最後のグループだけとなった。
今日で癒し手は終わり、後はヒト型になるまで、体力の回復を待つだけとなる。
昼休みの空いた時間に、城塞の屋上で自然エネルギーを吸収するのが、すっかり日課となっていた。
夜と違って、眼下には町や森が見え、景色も楽しめる。
深呼吸をしていると、一人の騎士が近付いて来た。
「妃殿下は此方に頻繁に来られているようですが、何かご用でしょうか。」
冷たい視線が向けられている。
獣人は感情に敏感だ、とグレーシス殿下が言っていたのを思い出した。
「この場所がとても気に入りましたので、つい足が向いてしまったの。」
自然エネルギーを補給しに来た、とは言える筈もない。
けれど、この場所が気に入っているのは確かなので、嘘はついていない。
ニッコリと微笑む。
「……討伐でお疲れの部隊長に、夜まで毎日付き合わせるのは、如何なものかと。それにここは見張り台であって、遊びに来る所ではありません。他所へ行くか、お部屋でお過ごしになっては居かがでしょうか。」
「尤もなご意見です。」
笑顔を張り付けたまま、考える。
グレーシス殿下は辺境でも慕われているのね。
グレーシス殿下が優しくしてくれるから、つい甘えてしまっていた。
彼に言われたように、確かにグレーシス殿下の負担になっていたかもしれない。
でも、ここに来れないのは困る。
どうしたものかしら……。
「下級騎士が随分な口を利くものだな。」
この声はグレーシス殿下!?今日の討伐は早く終わったのかしら。
「グレーシス部隊長!申し訳ございません。決してその様なつもりでは……。」
「謝るなら私にではなく、リーリスに謝るべきではないか?ここの出入りは自由だったと認識していたが、違うならギルバート団長に確認し、正式に許可を取るとしよう。」
「その必要はございません。部隊長の認識で間違いありません。差し出がましい私をお許し下さい。失礼致します。」
騎士は畏まって礼をすると、素早く見張り任務に戻って行った。
「リーリス天候も崩れそうだ。仕方ない、部屋で過ごすとしよう。」
部屋に戻ると、早速マイが紅茶を淹れてくれた。
ソファーにグレーシス殿下と、横並びに座って、寛ぎながらも、騎士に言われた事が気になっていた。
「心配するな。言質は取った。誰にも文句は言わせない。リーリスにも癒しは必要だ。」
「ありがとうございます。でも、魔物討伐でお疲れなのに、毎晩私に付き合わせて、殿下の負担になっているのは、尤もだと思いました。」
「負担に思った事は一度も無い。だから、気にしなくて良い。」
「ありがとうございます。」
そうやっていつも、グレーシス殿下は気遣ってくれるから、余計に心配になってしまう。
でも、今日を終えれば、毎日屋上に行く必要は無くなる。
先程は騎士が来てしまったけれど、自然エネルギーの吸収は出来たと思う。
それに、これから天気が崩れるのなら、無理に屋上へ行かなくても大丈夫よね。
そう判断してしまった。
しかし、それがいけなかった。




