24 初食事介助
辺境に到着して、時刻は午後四時を回っていた。
患者を収容しているホールでは、早速、クレインが治療を優先すべき患者の選別を行い始めた。
クレインの選別を受けて、グレーシス率いる王魔討専部隊は、最初に治療する三十名を、一のグループ、明日に治療する三十名を、二のグループ、明後日の三十名は三のグループ……とグループ分けした患者を、移動する作業に取り掛かっていた。
その間、五時の夕食に間に合わせるため、私は手押しワゴンに乗せられたお粥を、食堂からホールに運ぶ手伝いをしに行った。
なんせ百名程もあるので、何台ものワゴンで運ぶ必要があった。しかもワゴンは重いので、最低でも二人でワゴンを押さなければならない。
「妃殿下と一緒なんて畏れ多いです。」
一緒にワゴンを押そうとすると、介助当番の者は、ワゴンを残して、別のワゴンを押す手伝いに行ってしまった。
残されたワゴンを一人で押すのは不可能だった。
周りに騎士は沢山いるけれど、声を掛けられないよう距離を取られ、見て見ぬふりをされてしまう。
専属護衛が何か言いかけるが、無言で制止する。
ワゴンが足りなければ、食事も足りなくなる。
介助当番の者も困って、ワゴンを取りに戻らざるを得ない筈。
そう考えて、暫くその場で待ってみる事にした。
「妃殿下、大丈夫ですか?一人でそれは無理ですよね。」
クレインが丁度良いタイミングで現れて、率先して手伝ってくれた。
「ありがとう。助かったわ。」
「当然の事をしたまでですよ。全く、誰の為の食事だと思っているんですかね。」
クレインは周りを見渡して、ため息をついた。
「それにしても妃殿下、殿下から伺ったのですが、本当に、護衛に頼らないつもりなのですか?」
「そんな事はないわ。命の危機があれば、頼るつもりよ。」
「そんな事あったら一大事ですよ。」
ワゴンを一緒に押すクレインに苦笑されてしまった。
ホールにワゴンを運び終えると、既に食事介助は始まっていた。
食事の介助は、クレインと、討伐が休みで伝染病から回復した騎士。そして、現地の治療者数名が、手分けして行う。
「毒でも入っているんじゃないか。」
何処からか、声が聞こえてきた。
周りを見渡すと、敵視する視線しかない。
お粥のお皿を持ったものの、誰も食べてくれない気がする。
他の者が食べさせている姿を眺めながら、それでも誰かが食べてくれる事を願って、ホールを歩き続けた。
「ほら、無理矢理口に放り込めば良いんですよ。王女自ら食べさせてあげるんだから、食べろ、って。」
心が折れそうになった時、近くにいたユキヒョウが口を開けてくれた。
「ありがとう。」
安堵して思わず微笑む。その場に座って目線を合わせた。
「人間とは言え王族の、しかも女性に食べさせて貰うなんて、先ず無いですからね。拒絶しながらも内心羨ましく思っている筈ですよ。」
「だと良いけれど。」
ユキヒョウの口は達者だけれど、体はだるそうで、辛そうに見える。
手を添えて、零れないよう気を付けながら、お粥を口へ運んだ。
食欲はあるようで、しっかり完食してくれた。
「元気になるまで、お願いしますね。」
「それはこっちの台詞ですよ妃殿下。私はキャリオン。辺境騎士団の団長補佐をしています。グレーシスとは従兄弟になります。」
ユキヒョウは怠そうにしながらも、ニッと笑い掛けてくれた。
「宜しくね、キャリオン。」
キャリオンが私の手から食べた事がきっかけで、お粥の入った皿を運んでいると、口を開けてアピールしてくる獣が、少しずつ増えた。
「待たずに食える、それだけだ。」
皆、しかめっ面で何かしら小言を言うものの、お腹は空いているらしく、素直にお粥を食べてくれた。
少しは受け入れて貰えた?のかもしれない。




