表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/128

19 呼び出し

ある晴れた日の午後、庭園を散歩するつもりだったけれど、ドルフの一言で突如中止になった。


「リーリス妃殿下、至急リロイ国王陛下の執務室に来るように、との事です。」


迎えに来た使者に案内されて、護衛のサンセと共に執務室へたどり着いた。


「リーリス妃殿下、お待ちしておりました。お入り下さいませ。」


執務室の中から、宰相のイーサンが扉を開けた。

入室を許されたのは、私だけだった。


執務室の中央にはテーブルセットがあり、入り口を見るようにリロイ国王陛下が座っている。

その向かいに、扉を背にする形で、既にグレーシス殿下が着席していた。


私はグレーシス殿下の右隣に案内され着席すると、宰相のイーサンは、リロイ国王陛下の斜め後ろに控えた。


人払いされた執務室には、リロイ国王陛下と宰相のイーサン。そして、グレーシス殿下と私の四名だけだった。


何か、ただ事ではない雰囲気を感じて緊張していると、それを解すかのように、リロイ国王陛下が優しく声をかけてくれた。


「リーリス、先日は世話になった。癒し手の事はデニスから聞いた。改めて感謝する。」

「お元気になって何よりです。」


リロイ国王陛下は穏やかに頷いた後、一呼吸置いてから、真面目な顔つきになった。


「では、緊急事態なので本題に入る。単刀直入に言おう。リーリス、グレーシス率いる王国騎士団魔物討伐専門部隊、略して王魔討専部隊と共に、セーラン王国との国境に接する辺境へ向かい、伝染病で苦しむ辺境騎士団の為に、癒し手の力を使って欲しい。」


国王陛下の勅命は絶対だ。それに、苦しんでいる者の為ならば、断るなんてあり得ない。


「はい。お役に立てるのならば、行かせて頂きます。」

「そう言ってくれると信じていた。これはリーリスの祖国にも関係のある重要な任務だ。」


「祖国と関係がある、とはどういう事でしょうか?」

リロイ国王陛下の言葉が理解出来ないでいると、グレーシス殿下が説明してくれた。


「辺境の騎士団は、国境の守護と、森の魔物を討伐するのが任務だ。魔物を討伐する事で、国民が魔物の犠牲になるのを防いでいる。それは国境に近いセーラン王国の安全にも繋がっている。」

「え?」


セーラン王国は障気が無いから、魔物は殆ど発生しない、と習う。

まさか事実が違うなんて、考えもしなかった。


「テナール王国が魔物を討伐していたから、セーラン王国に魔物が流れずに済んでいたのですね。知りませんでした。」

「自国の為にした行いが、結果的に隣国を守る事に繋がっただけだ。本意ではない。」


私がグレーシス殿下と結婚しなければ、この事実を知らないまま過ごしていただろう。

その事実をひけらかさない獣人は、とても謙虚な人種なのかもしれない。


「教えて下さって、ありがとうございます。辺境の皆様の為に、力を尽くせそうです。」


グレーシス殿下からリロイ国王陛下に向き直り、改まって申し出た。


「リロイ国王陛下、お願いがございます。」

「申してみよ。」


「癒し手は異質な力です。民を救いもしますが、疑念や混乱を招きます。ですから祖国でも秘密とされてきました。どうか一般には知られないよう、医師の助手という形を取らせて頂きたく思います。」


リロイ国王陛下は何を思ったのか、少し間があった。

却下されるかしら?


「良いだろう。リーリスの望み通り、癒し手は秘密にすると約束する。では、リーリスが、辺境の為に王宮医師の派遣を強く望み、自分は伝染病に罹らないから。と助手を願い出たので、同行を許可した。と辺境伯には伝えよう。」


「願いを聞いてくださり、感謝致します。」


リロイ国王陛下は優しい眼差しで頷き、グレーシス殿下に目を向けた。


「辺境の討伐支援とリーリスの護衛を、グレーシス率いる王国騎士団魔物討伐専門部隊、略して王魔討専部隊に任命する。部隊員の選定と道中の世話役、派遣する王宮医師はグレーシスに一任する。」


「畏まりました。」


「では、明日迄に準備を整え、明日の朝には辺境へ向かってくれ。」

「「はい。」」


話が終了して、グレーシス殿下と執務室を退室した。

グレーシス殿下がいる間、専属護衛のサンセは離れて控えていた。


「辺境の騎士は特に人間嫌いだ。嫌な思いをするかもしれないが、必ず守ると約束する。」

グレーシス殿下がハッキリと宣言してくれた。


「はい、ありがとうございます。とても心強いです。」

「同行の医師は、リーリスもよく知るクレインに頼むつもりだ。あの事を話すが良いか?」


「はい、クレインならば構いません。よろしくお願いします。」

「では、私は一旦騎士団の詰所に戻る。リーリスも準備があるだろう。」


そう言われてハッとした。


「ええ、大切な事を思い出しました。魔物肉を祖国に送るには、辺境からが良い。と料理長のベインから教わったのです。だからレシピを教えて貰わないと。」


これでお兄様に魔物肉を送れる。

思いがけないチャンスが来たと喜んだ。が、グレーシス殿下には寝耳に水だったらしい。


「ちょっと待て!あの話、本気で実行する気だったのか?その前に、いつから料理長のベインと……って今は急ぐから、また帰って話そう。」


グレーシス殿下はポンポンと私の頭を優しく撫でて、足早に去って行った。


「お帰りお待ちしています。」

随分と距離が離れてしまったけれど、去って行く背中に声を掛けた。


突如、グレーシス殿下は振り向いて、私に返事をするようにサッと片手を上げた。

そして、再び背中を向けて去って行った。


「え?もしかして聞こえた?」

結構小さな声だった筈。


「あれくらいなら余裕で聞こえます。集中すれば騎士団の詰所から吹いた笛の音も聞き取れます。」


私の独り言に反応した護衛のサンセが、しれっと言ったので驚いた。


ドルフが五分前にグレーシス殿下のお帰りが分かるのは、その為だったのね……。


まだまだ獣人には驚かされてばかりだわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ