表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/128

15 グレーシス回復

グレーシス殿下は食事を食べると、大抵ベッドでそっぽを向いて横になる。

その間に自分の食事をして、食事が終わったら自室へ戻っていた。


しかし、グレーシス殿下が獣になってから三日目の夕食は、少し違っていた。


私が食事をしている時、食事を終えたグレーシス殿下は、珍しくこちらを向いて横になっていた。

「今日も薬草園に行ったのか?」


そろそろ食事を食べ終わる頃、グレーシス殿下から初めて話しかけてきた。

元気なのにベッドで休まなければならないので、暇だったのかも知れない。


「ええ、皆さんとても親切にして下さるので、楽しいです。見てください、本日出来立てほやほやの薬草茶です。昨日、皆で葉を摘んで、これは私が袋詰めしたものですよ。」


話かけられたのが嬉しくて、薬草の小袋を見せようとベッドに腰掛けた。

すると、黒い尻尾が膝の上に乗って来た。


これはどういう意味があるのでしょう。

グレーシス殿下の雰囲気から、怒っている感じではなさそうだった。


「あの……どうされたのですか?」

「どう、とは?」

「その……こんなに近いと触りたくなってしまうのですが。」

尻尾に目を向けると、一瞬、間があった。


「……触りたいなら構わない。」

予想外にお許しが出た。


「では、お言葉に甘えて。」

そっと撫でてみた。


「なんて素敵な手触り。もう少し触ってもいいですか?」

獣耳がピクッと動いた。

これは駄目かな?


「好きにしろ。撫でられるのは案外心地良い。それより、ちょっと休んだ方がいい。働き過ぎだ。」

グレーシス殿下はどうやら心配してくれていたらしい。

やっぱり優しい方。


突然、ヌッと黒豹の大きな前足が乗っかって来て、ベッドへゴロンと仰向けに引き倒された。

前足は体に乗ったまま、黒豹に寄り添われ、左半身が黒い毛並みに包まれる。


「こんなに心地好いと眠ってしまいます。」

「少し位良いんじゃないか。」

「そんな……少しで済まなくなります。部屋に戻って休みますから。」


起き上がろうとするも、グレーシス殿下の、それなりに重量のある前足が、お腹の上に乗っているので動けない。

それが心地良い重さなので、余計に困ってしまう。


ああ、なんてもふもふで、ほかほかして、心地好いのかしら。

不快ならば逃れる努力も出来たのに、早々に諦めてしまった。



カーテンから漏れる光に気付いて、目を開ける。

結局睡魔に負けて、朝を迎えてしまったらしい。


「!?」

もふもふが、無い!


ヒト型に戻ったグレーシス殿下に添い寝されていた。しかも裸!

片腕がお腹に乗って、しっかりと抱き抱えられている。


獣とヒト型では、同じ状況でも感じ方が全く違った。

獣では癒されてもヒト型の場合は、恥ずかしさで混乱するばかりだった。


ああ、どうしよう。動けない。もし無理に動いて起こしてしまったら、きっとお互い暫く気まずい思いをする筈。


どうかグレーシス殿下がまだ起きませんように。そして、今だけ黒豹に戻ってください。

そう神様に祈りたい気分だった。


息を殺すように固まっていると、幸いにも腕が緩んで解放された。

今だわ!


素早くベッドから降りて、そーっと足音を立てないように続き扉へ向かった。


細心の注意を払って右手でドアノブを回し、扉を通れるギリギリの隙間だけ開けて、自室のノブに左手をのばした。


ノブが動かないよう左手で押さえたまま入室して、扉を閉める。

最後にゆっくり、ゆっくり、ドアノブを戻した。


ああ、ビックリした。

その場にヘナヘナと座り込んだ。


「リーリス妃殿下、おはようございます。身支度の準備に参りました。」

少し落ち着いた頃、侍女のマイがやって来た。


マイに身なりを整えて貰った頃、続き扉をノックする音がした。

思わず驚いて肩がビクッとなった。


「は、はい。」

「食事はいつものように私の部屋に用意をさせた。準備出来たら来てくれ。」

「分かりました。」


当たり前だけれど、もう介助は必要ないし、黒豹でもない。だから、何時も一人で食べていたテーブルに二人、向かい合って食事をする。


久しぶりに見た、ヒト型のグレーシス殿下は美丈夫で、所作も美しく、本当に素敵で目のやり場に困った。

勿論、ちゃんと服は身に付けている。


挙動不審になっていないかしら。

チラリとグレーシス殿下を伺うと目が合った。


「どうした?食欲がないのか?」

「ああ、いえ、ただ見慣れなくて。黒豹の方が良かったと言いますか……あ、でも、元気になったのは嬉しいですよ。」

「黒豹が良いなんて初めて言われたな。」


グレーシス殿下がフッと初めて笑った。

その時、胸の辺りがピョンと跳ねる感覚がして、どんどん顔が紅潮していく。


益々視線を合わせるのが恥ずかしくなってきて、思わず俯いてしまった。


「どうした?」

「あの……しっぽを触りたいな……なんて……。」


思い付きで思わず答えてしまった。言った事に嘘はないけれど、本心とは違う。


「好きにしろ。」

ポフッと私の膝にグレーシス殿下の尻尾が乗せられた。

唯一残っているもふもふを撫でていると、何だか気持ちも落ち着いてくる気がした。


「楽しそうな所悪いが、そろそろ食べたらどうだ?」

「あ、はい、そうでした。」


すっかり食事の事も忘れて、撫で続けてしまった。

頬杖をついて、こちらを見ているグレーシス殿下の皿には既に何も無い。いつの間にか食事を食べ終えていたらしい。


早く食べてお暇しなければ。

急いでカトラリーに手を伸ばした。


「慌てなくても、ゆっくりで良い。」

「はい…。」

心を読まれてしまった。


せっかくもふもふで落ち着いたのに、結局グレーシス殿下に見られながら食事する羽目になってしまった。


ううっ……余計に恥ずかしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ