125 レミリオお兄様からの手紙
誕生日の翌日、グレーシス様はお休みで、私達は私室でまったりと過ごしていた。
「妃殿下、セーラン王国の王太子殿下から、荷物が届いております。」
執事のドルフが小さな箱を持って来てくれた。
「私が開けよう。」
グレーシス様が箱を開けてくれて、一緒に中を確認すると、手紙とポプリが入っていた。
「お兄様ったら。」
毎年誕生日になると、レミリオお兄様はポプリをくれる。
そのポプリに使われている花は、セーラン王国の王宮限定でしか育てるのを許されていない、女神が愛用していたとされている、花弁が大きく、香り高い品種の花だった。
また、食用なので、紅茶としても楽しめる。
「王宮でしか過ごせない私が、なるべく楽しめるようにと、お兄様がお父様の許可を得て、私の誕生日迄に間に合うよう、折角美しく咲いた貴重な花の大半を摘んで、侍従達にポプリを作らせていたのです。」
「義兄上らしいな。」
グレーシス様が遠い目をした。
庭園の見栄えが悪くなるのに、お父様とお母様は私の為に、レミリオお兄様の願いを聞いてくれていたのだった。
今年も私の為に、多くの花が犠牲になってしまったのね。
大量に贈られたポプリを眺めながらも、私を思ってくれるお父様やお母様、レミリオお兄様の優しさが嬉しい。
手紙には、私が送った、祈りを施した花に関する手紙について、お父様に報告した事や、祈りの花で作ったシロップは効果も高く、使い勝手も良い。と大絶賛の言葉が並んでいた。
最後に、最近セーラン王国で話題になった出来事について綴られていた。
「あ!」
「どうした?」
グレーシス様が、私の持っている手紙を覗き込んだ。
『王都にある小さな教会に寄進された幸福の花が、一輪だけ、未だに枯れず、瑞々しさを保ち続けている。
女神様の加護に違いない。と話題になり、花を見たさに、教会を訪れる者が後を絶たず、今では小さな教会が、王都一の観光スポットになっている。
お陰で教会が併設する孤児院の寄付も増えて、子ども達の衣食住もかなり改善され、教育にも力を入れられるまでになった。
祈りの花に関する報告から、私はリーリスのせいではないかと思っている。
随分と前から奔放に過ごしていたようだが、幸せそうで何よりだよ。
また会おう。愛しい我が妹よ。』
そう最後に締め括られていた。
「我が国で、聖獣祭の時に流している花が、セーラン王国では幸福花と呼ばれているのだったな。では、あの祭りの夜に流した花が……。」
グレーシス様が思い出したように私を見た。
「みたいですね。驚きました。」
皆に倣って祈りを捧げていたので、自覚もなかったし、聖獣祭の花は全て光っていたので、祈りで光っているかの区別がつかなかった。
違う光り方をしても、きっとその時は、そんなものかな。位にしか思わなかったに違いない。
「流石リーリスの流した花だな。」
グレーシス様がクスリと笑った。
「花を流すのを教えてくれたのはグレーシス様です。私一人ではきっと、こんなに素敵な結果にはなりませんでした。」
誰かの幸せに繋がって欲しい。と願って流した花が、祖国の国民に愛されて、目に見える形で良い効果に繋がるなんて思いもしなかった。
セーラン王国の小さな教会に寄進されたその幸福の花は、何年経っても瑞々しいままを保ち続け、枯れる気配が無い事から、『不死の花』と呼ばれ、健康と美の象徴として、崇められるようになったとか。
聖獣祭の話は目次92です。




