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獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ


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124/128

124 ガーデンパーティー

「リーリス妃殿下、誕生日おめでとうございます。」

「え!?」


忘れていたけれど、言われてみれば確かに、今日は四月二十日で、私の誕生日だった。

でも、聞いていた話と違う。


「え?あの……誕生日?お世話になった方々を労う為のガーデンパーティーなのでは?」


事態が飲み込めなくて、エスコートしてくれたグレーシス様の顔を見上げた。


「ガーデンパーティーは本当だが、リーリスの誕生日を祝うガーデンパーティーだ。」

「妃殿下、サプライズですよ。」


エイガーがにっこりと笑った。

王魔討専部隊の騎士達が居る。


「我が国では、妻の誕生日は夫が主催するんだよ。そして、家族や友人を呼ぶんだ。」


ティミラーお義兄様が教えてくれた。

リロイ国王陛下、デニス王妃殿下、フレイルお義兄様、の隣は名前だけしか聞いていないけれど、きっとビアンカお義姉様ね。シェリーお義姉様も居る。


「私の友人は限られているがな。」


グレーシス様が周りに目をやったので、私も周囲を見回した。

クレインも居る。サンセやシュナイザー、シャルルも!


「私の為に?ありがとうございます。とても嬉しいです。」


テーブルには沢山の美味しそうな料理が並んでいる。

ベインが頑張って作ってくれたのだわ。

テーブルの飾りつけには、美しい花が飾られている。

庭師のフェルメスが、選りすぐってくれたのね。


「さあ、妃殿下、乾杯しましょう。」


ドルフが食前酒のグラスを配ってくれる。

いつだったか、グレーシス様と飲んだ、ドルフお勧めのお酒の香りがした。


お酒では何かと失敗しているから、今日は口を付ける程度にしよう。


「リーリス、誕生日おめでとう。」

「「「おめでとう。」」」


グレーシス様が言うと、続いて皆が祝ってくれた。

今まで家族に祝って貰った事はあったけれど、友人なんて一人も居なかった。それがこんなにも沢山。


「グレーシス様と結婚して、私は幸せばかり頂いています。ありがとうございます。」

「それは私の方だ。」


グレーシス様が私の腰を引き寄せようとした時、ティミラーお義兄様に手を引かれた。


「さて、主役は皆に祝って貰うんだよ。おいで、リーリス。」


リロイ国王陛下やデニス王妃殿下の元に連れて行かれると、二人からハグされた。


「おめでとう、リーリス。家族になってくれてありがとう。」

「お義父様、お義母様ありがとうございます。」


「リーリス妃殿下、やっとお会い出来ました。ゆっくりお話するのは初めてですね。フレイルの妻、ビアンカです。お誕生日おめでとうございます。」


ビアンカ妃殿下は、フレイル殿下の右腕として、政務の仕事をしていると聞いていた。

建国祭で姿は見かけていたものの、ご挨拶は出来ていなかったので、会えて嬉しい。


「有り難うございます。私の事はリーリスと。ビアンカお義姉様、とお呼びしてもよろしいですか?」

「勿論です。私だけお会い出来ないのを残念に思っていたのです。ハグしても?」


「はい、嬉しいです。」

手を広げると、ギュッとハグされた。


「ビアンカ、力の加減を間違えてリーリスを潰すなよ。」

「フレイル殿下、ビアンカ妃はそんなに怪力ではなくてよ。ちょっと不器用なだけですわ。」

「シェリー、何気に失礼だよ。」


私を心配するフレイルお義兄様に、シェリーお義姉様が突っ込みを入れている。

ティミラーお義兄様がシェリーお義姉様の肩に手を乗せて笑っている。

皆、仲良しで会話を聞いているだけでも楽しい。


「リーリス、誕生日おめでとう。」

ティミラーお義兄様、フレイルお義兄様、シェリーお義姉様、皆がハグしてくれる。


どうやら獣人はハグ文化らしい。

祖国には無い文化なので、少し恥ずかしいけれど、嬉しい。


「さあ、リーリス、友人の所へも行ってあげて。」

シェリーお義姉様に見送られて、シャルルの元へ行った。


「来てくれてありがとう。」

文化に倣ってハグした。


「ひゃっ!お、おめでとうございます。ちょっと妃殿下、ハグは、家族だけですのよ。」

真っ赤になったシャルルが教えてくれた。


「そうなの?」

「そうですわっ、だから、他の男性にしてはいけませんよ。男性陣がグレーシス殿下に殺されますわ。」


どうして皆、グレーシス様をそんなに誤解しているのかしら。


「シャルルったら、また冗談を。」

「そう言うのは妃殿下くらいでしてよ。私、結婚しますの。だから、グレーシス殿下にお願いして、お別れを言いに来たのですわ。」


グレーシス様と連絡を取れるようになったなんて、わだかまりが和らいだようで嬉しい。


「ご結婚、おめでとうございます。嫁ぎ先は遠いのですか?」

「ええ、辺境伯のご子息と結婚するの。」


つまり、ギルバート団長のご子息よね。


「もしかして、キャリオン?」

「いえ、その弟よ。私と浮気して、今は辺境で下級騎士として見張り任務をしているの。」

「ああ!」


城塞の屋上で声をかけてきた騎士を思い出した。


「ご存知なの?」

「辺境へ行ったから、見当はつくわ。そう、彼……。」


心当たりはある。

グレーシス様にやたらと忠誠心があった、あの騎士。


王族の婚約者と浮気なんて、普通なら不敬罪で、処罰も厳しい筈。

きっとグレーシス様が処罰を望まなかったから、彼は王国騎士から下級騎士に降格された位で済んでいる。


きっと、彼はグレーシス様に負い目を感じていたのね。

辺境に飛ばされても、シャルルを思い続けていたのは好感が持てる。


「辺境へは討伐支援でグレーシス様も行くかもしれないから、その時は、私も行くつもりよ。だから、また会えるかも知れないわね。」


「討伐支援に付いて行く気?妃殿下が?」

シャルルが信じられないと肩を上げた。


「足手まといよね。分かってはいるのだけど。」

「そうだけど、そういうことでは無いのよ。誰が好き好んで、辺境に行きたがるかと言っているのよ。」


「私とシャルル?」

首を傾げると、呆れた顔をされた。


「……もう。楽しみにお待ちしておりますから、絶対、会いに来て下さいませ。」

家族だけと言ったのに、シャルル嬢からハグしてくれた。


「ええ、必ず。」

私もハグを返した。


「シャルル、いつまで妃殿下を独り占めしている。そろそろ解放しろ。」

シャルルの兄、シュナイザーだった。


「もう、ケチね。」

「妃殿下、おめでとうございます。妹が失礼をしました。」

シュナイザーが声を掛けてくれた。


「ありがとう。ここに来て、初めて出来た友人だと思っているわ。」

「良かったなシャルル、一人も友人居なかったもんな。」

「うるさいわね、サンセ。」


サンセはシャルルに言うだけ言って、私に向き直った。


「妃殿下、お誕生日おめでとうございます。」

態度の豹変が凄い。しかもわざとだと分かる。


「ありがとう。サンセの意外な一面を発見してしまったわ。」

「私はからかい甲斐のあるオモチャには目が無いのです。さあ、お次の方々がお待ちですよ。」


今度はサンセに案内されてクレインの元へ行く。


「妃殿下、おめでとうございます。」

クレインの後はエイガー、カールセン、ベクターと王魔討専部隊の騎士達にお祝いして貰った。


皆でベイン自慢の料理も頂いて、楽しいガーデンパーティーを過ごした。


「リーリスをなかなか戻して貰えないのは、予想していなかったな。」


夜、寝る前、何時ものように私の私室に来たグレーシス様が、少し拗ねたように、私の座っているソファーの隣に腰掛けた。


「今日の為にドレスも準備してくださっていたのですね。ありがとうございます。」


「喜んで貰えたなら贈った甲斐があった。今日は特別な日だ。私にして欲しい事は無いのか?抱っこでも、あーんでも、何でも、全て叶えよう。」


グレーシス様が私の腰に手を回して、耳元で囁いた。

グレーシス様なら、誕生日関係なく全て叶えてくれそうな気がする。


「えっと……グレーシス様のもふもふ部分を感じたいです。」

ピタリとグレーシス様が止まって、ふーっと息を吐かれた。


「……仕方ない。リーリスが望むなら叶えなければな。」

グレーシス様の尻尾が顔に、こしょこしょと触れて来る。


「グレーシス様くすぐったいです。」

尻尾を優しく掴んでから抱き締めて、頬擦りした。


「もっと本体を求めて欲しいのだがな。」

そう言いながらも私の膝に頭を乗せて、獣耳も触らせてくれる。


「今日、幸せな誕生日を過ごせたのは、グレーシス様のお陰です。有り難うございます。」

「どういたしまして。」


獣耳と一緒に頭を撫でると、気持ち良さそうに目を閉じている姿が、可愛らしい。


「大好きです。」

グレーシス様の耳元で囁いて、獣耳に口づけした。


シャルルって誰?と思われた場合は目次13、14へ。

シャルルの婚約者は名前が出ていませんが、目次29、30に。

フレイルの妻ビアンカは初登場ですが、存在はしていました。

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