表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/128

118 囚われのリーリス(グレーシス視点)

グレーシス視点です。

新人の討伐研修の為、森へ行き、王宮に戻って来たのは昼の三時頃だった。


騎士棟の入り口にサンセの姿が見えた。

確か、今日はサンセがリーリスの専属護衛当番だったな。ということは、リーリスが会いに来ているのか。

私は内心ご機嫌で、部下と新人を連れて騎士棟へ向かった。


「グレーシス殿下、妃殿下が!」

サンセの報告に耳を疑った。


リーリスが父上や兄上達に毒花を贈り、殺そうとした?

それを言いに邸に来たのが、父上の近衛騎士だと?で、騎士棟に連行?


「そして、少し前、地下部屋に勾留されたようです。」

「何だって!?」


地下部屋は高位貴族等で犯罪を犯した者や、犯罪容疑のある者を、一時的に捕らえておく部屋だ。

そこへリーリスが入れられただと?一体、父上はどういうつもりだ。


取り敢えず、新人をエイガーに任せる為、一旦執務室へ向かうと、エイガーが慌てた様子でやって来た。


「グレーシス、妃殿下が地下部屋に―――」

「サンセから聞いた。新人は任せる。国王陛下の所へ行ってくる。」


急いで父上の執務室へ向かった。


「緊急の用とは何事だ。」


私が緊急なんて言う時は、悪い報せが多いので、父上、そして、その場に居た兄上達も警戒した表情になった。


「リーリスを地下部屋に捕らえた理由を伺いたい。」

「リーリスが何だって?」


父上は全く身に覚えが無いらしい。


「父上の近衛騎士がリーリスを騎士棟に連行し、尋問した挙げ句、今は地下部屋に勾留。その理由が、父上と兄上達に毒花を贈って殺そうとしたから。だそうです。」


サンセから聞いた話を報告した。


「シュテルムが、花についてパウロから報告を受けたから、念の為、リーリス本人に話を聞きたい。と言って来たので許可したが、尋問するとは聞いていないぞ。」


父上の尻尾が激しく床を打っているのを見ると、父上の指示ではなかったようだ。


リーリスは我が国の為に尽くし、父上からも認められた証として、勲章を授かっている。


我が部隊は任務でリーリスと関わり、信頼関係を築いた。

しかし、父上や兄上直属の近衛騎士達はリーリスとの関わりが薄い。


父上から認められたリーリスに対して、仕事上、表向きは紳士的態度を取っていても、人間であるリーリスを心から信用できないのは仕方がない。


近衛騎士とは、国王や王太子を最優先に守る立場にあるし、何か少しでも不審な動きがあれば、父上や兄上を守ろうと動く。


問題は、リーリスが贈った花が毒花だ、と言える確かな証拠も揃えないまま、憶測だけで疑い、尋問の形を取って、地下部屋に勾留した事だ。


おそらく同じ容疑でも、リーリスが人間でなければ、邸で話を聞き、邸から出ないよう見張りをつける位に留めた筈だ。


リーリスの無実は明らかで、直ぐにでも解放してやりたい。

だが、いくら王族でも私は別部署の騎士団所属なので、父上や兄上直属の近衛騎士がする決定には口を出せず、父上に直談判するしかない。


「父上、直ちにリーリスを解放する許可をお願いします。」

「勿論だ。それとイーサン、直ちにシュテルムを呼べ。」

「畏まりました。」


父上が許可証を書いている間に、シュテルムはやって来た。


「誠に申し訳ございません!」

執務室に入室するなり、シュテルムは頭を深く下げた。


「何についての謝りだ。」

父上の口調は冷静だが、尻尾は相変わらず激しく床を打っている。


「リーリス妃殿下が無実にも関わらず犯罪者と思い込み、勾留してしまった事です。」

「無実だと何故分かった。」


「毒花と思われた花には、葉の裏に特徴があるそうで、妃殿下から贈られた花には、その特徴が無い。とクレイン殿に花を(じか)に見せられ、指摘されました。」


「花について疑っていたのは、パウロだったな。」


「はい、しかし、私が全て鵜呑みにしてしまった事がいけなかったのです。申し訳ございません。どんな罰でも受け入れます。」


父上はシュテルムを一瞥すると、威厳のある声を出した。


「では、近衛騎士を初め、全ての王国騎士団に命じる。毎日一人ずつ、一週間交代でリーリスの専属護衛をしろ。専属護衛の意味は理解しているな、シュテルム。リーリスは解放するから、お前が今から就け。」


「畏まりました。」

シュテルムが敬礼した。


王国騎士団全員とは、父上は随分思いきった決断をしたようだ。

近衛騎士には、父上だけではなく、ティミラーの近衛騎士も含まれている。


専属護衛、それは護衛対象を一番に考える事。

期限つきだが、父上や兄上ではなく、リーリスを優先する事を意味する。


騎士団の中でも近衛騎士は最も地位が高いとされ、騎士のプライドも高い。

人間のリーリスを受け入れられない彼らからすれば、かなりの罰になるだろう。


それに、父上の右腕とも言える近衛騎士を纏める団長からリーリスに就けるとは。

相当父上は怒っているな。


「シュテルム一人で尋問した訳ではないよね。シュテルムが専属護衛を終了したら、次は、追従した騎士にしようか。」

口調はいつも通りだが、ティミラーも怒っている。


「それは当然として、どうせなら、上にいる立場の者からやらせよう。」

フレイルも絶対怒っている。


私も相当頭にきていたが、父上や兄上達の怒りもかなりのものだった。

ピリリとした空気の中で、各々の尻尾が激しく床を打つ音だけが響いている。


今までそんなに怒っている姿を見た記憶が無い。

リーリスが国の為に、どれだけ尽くしているかを知っているだけに、扱いの酷さに怒りを隠せないのは当然だ。


最初、第二騎士団からリーリスの護衛を決める時、騎士全員が嫌がっていた。


妹のシャルルが浮気して、騎士団内で肩身の狭い思いをしていたシュナイザーが立候補し、その友人のサンセが続いた形で、リーリスの専属護衛は決まった。


人間の護衛なんてハズレだ。と騎士団から言われていたが、リーリスに関わった騎士は軒並み楽しそうにしている。


リーリスに接すれば、その心根の優しさに、騎士達は驚く事だろう。

今回のような事態は二度と起こらない筈だ。


護衛の無駄遣いだ。とリーリスは嘆きそうだが、癒し手を持つリーリスなら、専属護衛を就けるに値する価値があるだろう。

ただ、信者が増えそうで心配だ。


私は父上の許可証を持って、シュテルムと騎士棟へ急いだ。

騎士棟の入り口にいたエイガーが、我々を目にして、駆け寄って来た。


「グレーシス、妃殿下を解放できそうか?急いだ方が良い。」

「リーリスがどうした。」


何か不測の事態かと、耳を澄ませた。


地下部屋は本音が出やすい事もあって、壁が薄く作られており、不測の事態が起きた時、誰もが対応出来るよう、騎士棟の何処にいても、声を聞けるようになっている。


「……た―――い、グレーシス様会いた―――い、グレーシス様会いた―――――い。」


リーリスが可愛い事を口走っている。


「さっきから、グレーシスの名前を連呼している。寂しさからか、おそらく妃殿下本人はグレーシスにだけ訴えているのかも知れないが、分かるだろう?」


「ああ、私への愛が騎士棟に広まってしまったわけだな。」

フッと思わず笑ってしまった。


「喜んでいる場合か。妃殿下はそれほど消耗していると言う事だろう。」


私への愛を消耗故と言うか。失礼な。だが、消耗しているのは確かだろう。


急いでシュテルムを連れて地下部屋へ行き、父上の許可証を見張りに見せ、鍵を開けさせた。


ベッドで横になっているリーリスを見て、思わず駆け寄る。

私の気配に気づいたリーリスが起き上がって、振り向いた所を抱き締めた。


「済まない。私が居ればこんな事にはならなかった。」


邸にシュテルムが来ても、証拠不十分だ。と言ってやれた。花は既に口にしたとも。

リーリスは嬉しそうに、私に抱きついて来た。


私はリーリスに無実が証明された事を説明し、ついでに、地下部屋の壁が薄い事を話した。


リーリスは私の名前を連呼していた事を、騎士棟にいた全ての騎士に聞かれたのだ。と気付き、恥ずかしさから、ベッドで悶え始めた。


それさえも筒抜けなのだが、可愛いから言わないでおこう。


扉前で待機していたシュテルムと、その他騎士二名を放置していたせいで、彼らは、私とリーリスがやり取りしている間、暫く待機する羽目になったが、リーリスへの見方は、かなり変わったようだった。


人間のリーリスが、私を好きな訳がない。そう思っていた騎士達は、この日を切っ掛けに、考えを改めたらしい。


リーリスが私にベタ惚れしている、と。


私の方が惚れていると思うが、まあまあ正しく認識してくれたようで何よりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ