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獣人王子と癒し手王女の政略婚  作者: アシコシツヨシ


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100 結婚祝いの品

午前十時。

今日は初めてティミラーお義兄(にい)様の執務室に呼び出された。


グレーシス様は通常勤務なので、呼び出されたのは私だけ。

執務室にはフレイルお義兄様もいる。

フレイルお義兄様は次期宰相なので、大体ティミラーお義兄様と仕事をしている事が多いそうだ。


「今日、リーリスに来て貰ったのは、レミリオ王太子殿下の結婚祝いについて相談したくてね。まあ、先ずは紅茶でも飲もうか。」


ティミラーお義兄様が、侍女に用意させた紅茶を勧めてくれた。


「凄く美味しいです。香り高くて苦味が少ないですね。」


「この紅茶は、我が王家でよく飲まれる紅茶の一つだ。が、グレーシスは別の種類が好きらしく、この茶葉はあまり使わないから、初めて飲むのではないか?」


フレイルお義兄様が解説してくれる。


「確かに。初めてです。」

勿論、いつも飲む紅茶も美味しい。


「では、ゆったりした所で本題に入ろうかな。リーリス、このリストを見て欲しいんだ。祝いの品の候補、と言えば分かりやすいかな。」


ティミラーお義兄様から、品物のリストを見せて貰った。

テナール王国内にある、各領地の特産品が並んでいる。


「この中から候補を絞るのですね。結婚祝いの品は、次の貿易にも繋がりますものね。」


「話が早くて助かる。他と比べて見劣りしたり、質が悪ければ扱って貰えない。逆に気に入られれば、宣伝効果があり、販路が広がる。」


フレイルお義兄様の言う通り、結婚祝いは単なる献上品ではなく、領地や国家間の威信をかけた見本市のようなもの。

だから、より良い品を送り、気に入って貰う事で、後の利益に繋がる効果が大きい。


「そうですね、原石は良いですね。テナール王国の原石は大きくて品質も良いですし、レミリオお兄様の瞳と、お義姉(ねえ)様の瞳の赤と青をイメージした原石なら、好きなように加工出来て、尚、お祝い向きだと思います。」


「成る程、他は?」

フレイルお義兄様が、リストにチェックを付ける。


「石鹸や香水は王家御用達が決まっていますので、あまり期待出来ません。でも、辺境の薔薇を使った製品ならば、貴重なので期待出来ます。紅茶は、今頂いた物でしたら良いと思います。」


「あれは一般的な紅茶なんだよ?こっちの高級茶葉はどうかと思ったんだけどね。」


ティミラーお義兄様が、納得出来ない表情でリストを指指した。


「高級の理由は作るのが難しくて、量が取れないからです。この茶葉は他の地では大量に栽培されています。逆に今頂いた紅茶は、標高の高いテナール王国では一般的でも、セーラン王国では貴重なのです。」


「我々の普通と隣国の普通は違うのだな。それにしても、リーリスはよく知っているな。」


フレイルお義兄様が、不思議そうにしている。


「私は、王宮からあまり出られませんでしたから、お父様やお兄様の生誕祭等で、送られる品物とリストを見せてもらって、領地や国の事を想像していました。勿論、セーラン王国の事も。ですから、様々な領地の特産品について、去年迄でしたら覚えているのです。」


「それは頼もしいね。リーリスに来て貰って良かった。」

リストから品物を選び終わった頃、思い出した。


「そうでした!ハイヤー王国から送って貰った羽根布団も、一緒に送って下さいませ。私のとっておきなのです。」


「それね、どうしてハイヤー王国からリーリスに、羽根布団が送られて来たのか、ずっと疑問だったんだよね。」

「確かに。」


ティミラーお義兄様とフレイルお義兄様が、理由を知りたがっている。


「それはですね……。」

謁見の間でのやり取りを話した。


「え?褒美を聞かれて、ふわふわに包まれたいって?本当に言ったの?あの厳つい国王陛下に?で、王妃に包んで貰った?謁見の間で?」


ティミラーお義兄様が驚いている。


「私もまさかその場で包んで貰えるとは思っていなかったのです。それで、そんなに良いならって。国王陛下が。」

「それで兄の分も要求したのか?国王に。」


「始めは私の分をお兄様に。と言ったのですが、お兄様の分も送ってくださると言ってくださったのです。もしかして、お義兄様方も欲しかったですか?もう頂いているのかと思っていたので、お願いしませんでした。」


「いや、貰ってはいない。トリがタダで物をくれるなんてあり得ない。奴らはケチだから、金を払わねば何もしない。欲しいと言えば、お願いしてくれたのか?」


フレイルお義兄様が、リストを片付けながら聞いてきた。


「ええ、勿論です。あのふわふわは最高ですもの。」


フレイルお義兄様が目を見開いて、フイッと顔を反らした。

少し震えている?

ティミラーお義兄様が下を向いてしまった。

二人とも、よほど羽根布団が欲しかったのかしら?


「ごめんなさい、そんなにお布団が欲しかったなんて。」

「ブハッ!アハハハハ……違っ、アハハハハ……」


ティミラーお義兄様が吹き出して笑い始めた。


「クックックックッ……」


フレイルお義兄様も笑っている。

何がそんなに可笑しいのか、全然分からない。


「ああ、もう、リーリスはあの厳つい国王に何をお願いしてるの。信じられない。今迄トリに包まれたいなんて、思った事もなかったよ。それにアレ。自分の抜け毛を袋に詰めた物だよ。」


「我々ネコには無い発想だな。私がいたなら、もっと他に色々要求したのに。」

「え?勿体ない!グレーシス様も寝かしつけてしまう心地好さなのに。」

「「グレーシスも包まれたのか!?」」


お義兄様方の声が揃った。


「グレーシス様の場合は、騎士ですけれど。」

「いや、気になったのはソコじゃないよ。騎士に包まれた経緯が気になる。」

「私はソコが気になったぞ。誰に包まれたかは、重要だろう。」


ティミラーお義兄と、フレイルお義兄の気になった所は、違うらしい。


私はティミラーお義兄様に、ハイヤー王国で、グレーシス様と騎士に暖めて貰った経緯を話した。


「成る程、でも、グレーシスが騎士の腹毛で……傑作だな。」


ティミラーお義兄様も、腹毛って言った。

同じ獣人だと羽毛は、ただの抜け毛くらいの感覚で、その抜け毛を集めて活用する事に、抵抗感があるみたい。


「あの心地好さが分からないなんて、勿体ないです。私のお布団を順番にお貸ししますから、是非体験してくださいませ。」


「別に貸してくれなくても良いよ。ねぇ、フレイル。」

「だな。腹毛の袋詰めなんて、たかが知れている。」


後日、渋る二人に半ば強制的に羽毛布団を貸し出した。


「不本意、全く不本意だけど、リーリスの言う通りだったよ。シェリーも大絶賛してた。」

「奴らの腹毛をなめていた。あんなに安眠できるとは。」

「そうでしょう、そうなのです。」


二人のお義兄様に、ふわふわの素晴らしさが伝わって、大満足した。


その後、ふわふわの素晴らしさを知ったお義兄様達が、ハイヤー王国に羽毛布団を発注して、かなり高額で売り付けられていたなんて、私は知らなかった。


100話まで続くとは我ながら奇跡です。お付き合い下さった皆様、有り難うございます。

グレーシス、騎士と添い寝は目次95、国王陛下のご褒美は目次97です。

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