制服
そして俺たちの一分一秒を無駄にできない日々が始まる。
「じゃあ、私は今日制服のことについて聞いてくるよ」
春ちゃんが行きたがっていた高校の制服、藤高校の制服を売っている店に行ってこようと思う。
「俺は先生と話してくる。」
先生の力も借りたい、どうしても3人じゃ限界があると思うから。
「僕は何をすればいいんですか?」
「安藤はもっといろんな人に声かけてきてくれ、仲間をもっと増やすんだ」
「何で僕が一番苦手なことを、僕にやらせるんですか!」
「いや、お前にしかできない事なんだよ。これは」
「またそんなこと言って…分かりましたよ。最善はつくします」
「時間が無い、時間を無駄にしないよう頑張ろう」
私は制服を売っているお店まで来た。
「うわ~、いろんな制服がある。あ、これが藤高校の制服だ、可愛い!それにしてもなんか少ないような…」
いつもならズラッと並んでいるはずの制服の棚が寂しい状態になっていた。
「あの~、すみません。藤高校の制服が欲しいんですけど…」
「あ~、ごめんね。今、うちに制服全然ないんよ。」
「え?どうしてですか?」
おかしい、もうあと一ヶ月もしたら入学式が始まるというのに、この時期に制服が無いなんて、どうしたんだろう。
「いやぁね、こういう状況やろ、制服が全く入ってこん。そやから、予約注文ばかりになっとるんや、それも日にち通りに付くかもわからんしな。本当に申し訳ない。」
「予約したらいつ届くんですか?」
「4月の中旬くらいやと思うんですけど…」
4月の中旬…それじゃあ間に合わないかもしれない…
「一着だけでいいんです。何とかなりませんか、すぐに着させてあげたい人がいるんです!」
「そう言われてもね…ほんとに一着も無いんだよ…上のカッターシャツならまだしもスカートがね…」
「そうですか…もし、藤高校の制服が入るようでしたら、この番号に電話してください」
私は自分の携帯番号を書いた紙を渡す。
「分かりました、理由は分かりませんが、もし制服が届いたらお電話させていただきます」
「よろしくお願いします」
私は店を後にする
「良し、切り換えていこう。次の店だ!」
私はその日、街中の制服を売っているお店を回ったが…何処も同じ状態だった。
最近流行している病気のせいでどこのお店も商品が無いらしい、そこにさらに大きな国が荒れているせいで世界中の物流が混乱しているのだという…制服一着手に入れるだけでこれほど苦労するとは思っても見なかった。
「どうしよう…制服一着も手に入らなかった…時間が無いのに…」
スマートフォンが鳴り、すぐさま電話に出る。
「西野さん、どう?制服見つかりそう」
「それが…一着も手に入らなかった。どこのお店にも売ってなくて…」
「そうだったんだ…ありがとう。今日はもう疲れただろうし、家に帰って休んでもらってもいいから、制服のことはまた明日考えよう」
「ありがとう、柊君…でも私もうちょっと頑張ってみる」
「無理しないでね…西野さん」