作戦会議
「柊君!お待たせ、ちょっと時間掛かっちゃった。ごめん」
西野さんが慌てた様子で駆け寄ってきた。
「大丈夫、俺たちも今来たところだから、な!安藤!」
「え、そ、そうですね。今来たところです。」
「それじゃぁ作戦会議を始めようと思います。これが、さっき書いてもらったアンケートになる。」
そう言って、さっき春に書いてもらったアンケート用紙を出す。
「どれどれ、ちょっと見させてもらうね」
そう言って西野さんは食い入るようにアンケート用紙を読み込んだ。
「春ちゃん…」
「どうかした。西野さん」
「うんん、別に、何でもないよ。ちょっと読みにくい部分があっただけ」
「でほ、次は僕が…」
そう言って、西野さんからアンケート用紙を受け取り、安藤も食い入るように読み込んだ。
「今更だけど、ありがとう。こんな時期に手伝ってもらえるなんて。2人とも受験は大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫。私、スポーツ推薦だから。先生と面接するだけでOKなんだ」
西野さんはそう言いながら指でOKマークを作る。
「僕はもともと、頭がいいですから、勉強に根を詰めすぎるのもよくないと思いますし。少しくらいは手伝いますよ。それより、柊君の方が大変なのではないですか?僕が知る限り、君は頭が馬鹿だったと記憶してますが。」
すました顔で言われると、余計に腹立つ。
「俺のことは良いんだよ!今は、春のことだけを考えたいんだ。」
「そうでしたね、すみません。余計なこと聞いてしまいましたね。それにしても、読んでて違和感があるというか、春さんってこんな方でしたっけ?」
「あ!それ私も思った!何かいつもより明るいというか、頑張ってるというか、なんかそういう感じがするんだよね。私が知っている春ちゃんは、お淑やかで静かな感じだったんだけど」
「そうですか?私の知っている川原さんは元気いっぱい100%みたいな方でしたけど…」
「そうなのか!俺の知ってる春はウザイ妹みたいな感じだったんだけど…」
3人は顔を見合わせ、どういうことか悩んだ。
「それよりも、アンケートだよ。ここ最後の部分!」
そう言って西野さんは指をさす。
貴方の夢は何ですか?
「私は高校生になって制服を着たいです」
「この夢、何とか叶えてあげられそうじゃない」
「いや、西野さん。これは難しいかもしれないですよ」
「どうして?」
俺は西野さんに話した。
「え…もう時間がない…どういうこと…」
「春にはもう…」
「そんな、どうして。」
「ですから、この夢は難しいと言う分けです。他の部分から僕たちに…」
「これにしよう。」
西野さんがそう言った。
「私たちで、春ちゃんの夢をかなえてあげよう!私は叶えてあげたい!何としてでも」
「いや、さっきの話聞いてました!時間が無いんですよ…奇跡でも起こらない限り」
「安藤…やってみよう。春に夢を叶えさせてやろうよ。間に合わないかもしれないけど、俺たちにできることを精一杯尽くそう。」
「もう、柊君まで、どうなっても知らないですからね」