アンケート
「…」
俺の方を何も言わずに睨みつけてくる奴がいた。
「東山、何か俺に言いたいことでもあるのか?」
「いや、君が何かにとりつかれたように必死になっているのが可笑しくて」
「東山!俺は別にお前にだけ頼んだわけじゃない、別にお前の力がなくても大丈夫だ」
「そうか…それならいいんだ、僕は勉強に集中しないといけないから」
東山史郎、春がいる病院の院長の息子。
学年トップの学力を持ち、誰にでも優しく、先生からの信頼も厚い男だ。
だが、どうしても俺とは馬が合わない。
東山のことは昔からよく知っているが、昔から俺にはあんな感じだ。
「東山君がやらないなら私もやらない」
「私もそうしようかな」
「ちょ、ちょっと皆、さっきと言ってたことが違うじゃないか!」
「だって~、東山君がやらないってことはどうでもいい事なんでしょ」
「どうでもいい事じゃない…」
「君はそうやって、いつも、無駄なことをしているから、中途半端なんだ」
場の空気が悪くなる。
「お~い、そろそろ時間だ、全員1限の準備をするように」
先生はそれを察したのか、無理やり終わらせてくれた。
俺は、さっき言われたことに否定できなかった自分が悔しかった。
自分の椅子に座りうなだれていた時。
「ねえ、柊君。私にも手伝わせてもらえないかな?」
「西野さん…どうして」
「私、春ちゃんと友達なの、だから何かしてあげたくて」
僕はうれしかった、さっきはもうダメなかもしれないと思っていたから。
「ぼ、僕もいるんだけど」
「安藤、お前は最初から俺のチームに入ってるんだよ!」
「ちょ、僕の意見は関係ないの!」
「お前なら、100%助けてくれるだろ!」
「ひゃ、100%は買いかぶりすぎだよ」
「それで、柊君。いったい何をする気なの?」
「それは、今日、春にちょっとしたアンケートに答えてもらおうと思って」
「アンケート?」
「そう!あいつ、アンケートがあると、何故かやっちゃう所があるんだよ。スーパーとか喫茶店にあるやつ」
「あ~あるね、アンケート」
「そこでこれだ」
俺は家で作った自作アンケートを取り出した。
「これ、柊君が作ったの?」
「そうだよ、昨日、俺に何ができるか考えてたらこの方法を思いついたんだ」
「何が書いてあるんですか?」
書いてあること
1.今楽しいこと
2.今辛いこと
3.今やりたいこと
4.これからしたいこと
5.あなたの夢は何ですか
「こんなふうに書いたんだけど、どうかな?」
「う~ん、何か物足りないような気もする」
「そうだね、もうちょっといろいろ書き足してもいいんじゃないかな」
「なるほど、例えばどんなことを書き足せばいいんだ?」