余命(2)
そして今に至る。
春の病室に戻ってきた。
「なあ、春、体調はどうだ?」
「体調?もう体はぴんぴんしてるよ!今にでも動き出したいくらい。でも先生が動いてはいけませんっていうから」
「少し歩くくらいならいいって言っただろ、君は目を離すとすぐ走ったり、ジャンプしたりするんだから」
「だって、こんなところにいたら体がなまっちゃう、それに寝たままでいたら太っちゃうかもしれないし」
春の体は昔と比べると一段と細くなってしまった。
きっとあまり食事を食べられていないのだろう。
「誰もお前の体なんか見てねえよ」
「ひ、ひどい、よよよ…」
「おい、そんな昔の人みたいなことしてんじゃねえよ」
「一真は私の体に興味がないってこと?」
「ああ、ねえよ、俺の求めるのは、弥生さんみたいな、ボン、キュ、ボンなお姉さんタイプなんだは、春みたいな、キュ、キュ、キュ、ボディには興味はないの」
「こら!」「バシ!」
「痛!や、弥生さん、何するんですか」
「女の子の前でそんなこと言わないの!」
「す、すみません」
「ほら、春ちゃんに謝りなさい」
「ご、ごめん春、ちょっと言い過ぎた」
「私、私だって…」
「どうした?」
「私だって、最近Bになったんだから」
「B?Bって何のこと?」
「BっていったらBでしょ。ちょっと前までAだったんだから、私も成長してるの、弥生さんみたいになるのはまだまだ先だろうけど、私だっていつか」
くっ!いつかはないんだ、そう言ってやりたい、今の君には時間がもう残されていないって、でもそれを口にしてはいけないのを知っている。
「AからBってランク落ちてるじゃねえか」
「ら、ランク?」
「だってお前、前までずっとAAランクだったのにAランクに落ちて、さらにBランクにまで落ちちまったのかよ」
「あ、あんた何言ってるのよ」
「ま、まあこの話はなしだ、別に俺は今のランクでも十分だと思うぞ、それ以上ランクを落としちまったらせっかくの高ランクが台無しだもんな」
自分でも何言ってるのかよく分からない、でも春には現状を維持してほしい、それ以上のことを望まないでほしい、そんなことを思っていた。
「一真ってたまにわけ分からないことを言うよね」
「ああ、そうだな」
今目の前にいる春はあと少しで死ぬ、こんなにも笑っているのに、俺と同じ時間を生きているのに、途中から春の時間は止まる。
そう思ったら、涙があふれそうになってしまった。
「もうこんな時間だ、俺もう帰るは、学校の宿題とか受験の過去問とかしなきゃいけないし」
「そう、頑張ってね」