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カレンダーをめくりたい  作者: コヨコヨ
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不登校の私

「藤高校の制服…春の夢…どういうこと」

ベッドの上に寝転がり、手紙の中身を何度も読み返す。

「何で…柊君が女子の制服、それになんで私…春って…あの春ちゃんの事だよね…何かあったのかな」

私の名前は田島咲…中学3年生の普通の女子中学生だ。

私は今、引きこもっている。

多分5ヶ月くらい学校に行ってない…学校の授業がほぼ高校の試験問題に置き換わるころ…私は学校に行けなくなった。

理由は分からない、ただ…ずっと大好きだった部活を卒業したのが原因の一つなのかもしれない。

私は裁縫部だった。

子供の頃から可愛い服を見るのが好きだった。

いつも洋服屋さんの前にあるガラス窓におでこをくっ付けながら見続けたものだ。

そしていつからか、私もあんな服を作りたいという創作意欲にかられるようになり、小学校の頃からお祖母ちゃんにミシンの使い方から針の使いから、ましてや編み物の仕方まで教わった。

私の中学校には裁縫部があった、凄くラッキーだとその時思った。

勉強が終わればすぐ部室に行って、先輩に話を聞いたり、作品を見せ合ったりした。

私の作品第一号は小さなハンカチに自分の名前を縫い付けただけのシンプルなハンカチ。

これを小学2年生の時に作った。

初めて見せたのは、お婆ちゃん、スッゴク褒めてくれた、次に見せたのはその時となりだった男の子。

何が凄いのかよく分からないといった様子で「マイネームで書いたほうが早くね」とマジレスされた。

ちょっと悲しくなったが、私の斜め後ろの女の子が「すごい!どうやってやったの!」何とも嬉しい言葉だった。

その女の事はよく遊ぶ友達になり、段々と親友になって行った。

私はその子に作品を見てもらって、褒められるのが1つの楽しみであり、その子の期待を超えることが目標になっていた。

小さな人形…人気のキャラクターの刺繡、ブレスレット、マフラー、その当時の有り余る時間を使っていろんなものを作ってはその子に見てもらった。

その子の反応はいつも同じ。

満面の笑みで微笑み、心から私の作品を褒めてくれた。

だから私もその子のことが大好きで、その子のしていることや得意なことは何でも褒めた、ホントに心から褒めたのだ。

しかし…その子とは中学生に上がるころにはあまり話さなくなってしまった。

これも理由は無い、特に何となく…すれ違いが増えていき、気づけば中学3年間…ほとんど話した記憶が無い。

部活が楽しすぎたのか…私が避けていたのか、避けられていたのか…ただ一つ言えることは、その子は私の親友ではなかった…と言う事なのだろう。

私はその子を心のどこかで利用していたのかもしれない。

何でも褒めてくれる、何にでも私の欲しい答え、物をくれる…そんな彼女を…

私は押し入れを漁った。

目的の者があるかは分からなかったが…

私は極端に物を捨てるのが苦手なので探せばあると思った。

「やっぱりあった!連絡網…いや~何年前の連絡網だろ…」

小学4年生…もう5年以上も前の紙が私の部屋にある押し入れの中に眠っていた。

その中から一人の名前を見つけ、電話をかけようと試みる。

「いや…でも…さっき来てもらったのにいきなり家に電話を掛けるのはちょっと…」

明日学校に行けば必ず会えるだろう、しかし…私は学校に行けるのか…いや行けない。断言できる、何かきっかけがあれば学校に戻れると思ったが、そんな切っ掛けが合った所で私のしみったれた心は動き出さない。

スマホからかけようか…家の電話から掛けようか…一つの事でいちいち悩む、私の悪い癖だ。

5分10分1時間と時間は流れていく。

ラインさえ知って居れば、簡単に連絡できるのに…どうしてこうも電話とは難しいのだろうか…

何をそんなに悩んでいるんだと思う人が居るかもしれないが、これは私にとって一大事の事なのだ。

いうなれば、何年も開けられなかった扉がいきなり開けられた時のような…

はたまた、崩れないと思っていたジェンガが一気に崩れ去ってしまったようなそんな感覚…

電話番号の数字1つ押すのに5分…今やっと3つ目の数字に来たところだ。

スマホを持ちながら、汚い部屋を無造作に歩き回る、いったいどれだけ掃除していないのか…ほこりが待っているだろうがそんなことを気にする余裕はない。

そしてようやく最後の数字を押した。

その時にはもう外は真っ暗、時間は7時を過ぎている。

心のどこかで

――どうか繋がらないで下さい!

と何度も復唱するが…

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