交渉前
宇佐美に龍堂辰臣との交渉を任せてもらった俺は今、接触の為に3年C組の龍堂に連絡を付けられる人物を探していた。
交渉を任せてもらう事は決まったが、俺は未だに東凰学園の細かいルールは把握していない。故に、事前に留意すべき点があるかを宇佐美に聞いておいた。
そこでまず、宇佐美に言及されたのが、龍堂辰臣に交渉の席に立ってもらう難しさである。
東凰学園では便宜上は、あらゆる出自に伴わず、生徒全員が公正公平であることをお題目にしている。しかし、短いながらも東凰学園で過ごしてきた俺でも、そのお題目がタダの飾りであることは薄々、勘付いている。
校内には、九大家という名家の集まりしか入れないエリアが存在するし、入るためにも許可が必要である。
そんな九大家専用エリアとでも言うべきものが隠すことなく存在しているのに、東凰学園の教員の誰ひとりとして問題にあげないのはおかしいだろう。
いや、もしかしたら挙げる教員もいたのかも知れないが、今もなお中庭を九大家が我が物としている現状を鑑みれば、その声は掻き消されたと考えるべきだ。
つまり、学校側も自分たちの掲げるお題目が見せ掛けのものであると自覚していると考えた方が合理的だ。建前だけでは、古くから存在する権力構造には抗えないということか。
前回、事前の許可も得ずに九大家の占有する中庭に入れたのは、宇佐美の力があってのものだ。元とは言え、九大家の一員だった宇佐美の力は俺の想像を遥かに超えているものだった。
言葉だけで中庭を見張っていた付き人たちを退かせたのは正直、かなり驚愕した。宇佐美は、力を持つ人が発する独特なオーラというものを身に付けている。それは、千本院帝と接触した時にも感じたものだ。
だからこそ、宇佐美は付き人を退かせられたのだろう。もし、俺がひとりで中庭に行っても門前払いされるのは目に見えている。
俺が宇佐美の真似をして無理矢理、龍堂辰臣に交渉を持ち掛けたとしても辿り着く事すら難しいかもしれない。
だから、俺は宇佐美とは別の方法、龍堂辰臣本人ではなく、龍堂辰臣に近しい人間、もしくは龍堂辰臣に渡をつけられる人物とまず、接触しなければならない。
勝負までは2週間足らず、あまり時間を掛けたくは無いが、焦って交渉が決裂してしまえば、そもそも勝負に勝つ事すら難しくなる。
ここは焦りを抑えて我慢だ。遠回りは一番の近道と思うしかない。
ーーーーーーーーーー
「あの人が龍堂辰臣が中心とする派閥のナンバー2、木戸康生か……」
龍堂辰臣への接触を図るべく、俺は龍堂派閥の人間を探していたが、ついに見つけることができた。
木戸康生。龍堂辰臣とは幼少からの付き合いで、龍堂辰臣が気軽に接する数少ない人物の一人だ。その親交は龍堂派閥という垣根を超えた関係らしい。
もし、木戸康生を説得できれば、龍堂辰臣との交渉はかなりの確率で席を設けてくれる筈だ。
「ここで迷っている時間がもったいないな」
俺は意を決して、木戸康生へと声を掛ける。
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