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二話

ガタゴトと馬車は進む。窓もない、椅子もない、ついでに明かりもない真っ暗な馬車はまるで私の未来を示しているかのよう。城を出る時は綺麗な馬車に乗せられたけど、街に出て直ぐにこの馬車に押し込まれた。聞けば罪人用の馬車だとか?


「それなりに生活出来る様にしておこう。」ってさ、言ってたじゃない?本当にこの世界の人は嘘八百だ。今どれくらいゆられてるんだろう。

この世界に来てからの色々思い出してしまった。

防音も無い馬車は最初は御者の会話も丸聞こえだった。


「いったいこのガキが何の罪を犯したんだかな?」

「辞めておけお貴族様の事情に首突っ込むのは。後で俺たちもこれだぜ?」


「もう少しでかくなってたらこの道中の楽しい気晴らしにも使えたんだがなぁ?まぁ、こんな髪ボサボサの鶏ガラみたいな身体の化物妖怪じゃでかくても欲情も何も無いよな?なぁ?良かったなぁ鶏ガラのガキで化け物でよぉ〜?」


ゲラゲラと下品に笑う御者2人は女性の罪人にそれなりの事をしながら仕事をしていたんだろう。

途中トイレの為外に出たが鶏ガラ化け物と化したこの容姿のおかげで難なく済ます事が出来た。


「こいつスキル無しらしいぜ!普通はわかった途端間引かれるのにここまで良く生きてたよなぁ!」


スキル自分はスキル無しと言われているらしい。この口ぶりからわかった。私の様にスキル無しは分かった途端に殺されたり最下層へ送られるのだと。


要は

スキル自分では属性が無い為魔法が何も使えない。否、職業召喚士だから召喚魔法は出来るのだろうけれど、魔力も少ないので召喚してもすぐに消えてしまう。スキルに合った魔獣(例えば水のスキル持ちなら水を纏った猫とか)を召喚して餌(水の魔力)を対価に働いて貰う召喚士。なのに私はスキル無し。要は使えない人間って事。今までは聖女かも知れないから高待遇だったけど、今はその必要が無いから取り繕うつもりも無いと。


むしろ罪人扱いとか。


勝手にこっちの世界に連れて来ておいてこの掌返しはあんまりじゃ無いだろうか!?人権も何も合ったもんじゃ無い。

こんな国が世界を救う?笑っちゃうね!本当の聖女だったらこんな国に協力しないわ!


そして私はガキ子供じゃない、、23歳のれっきとしたした成人だ。けれどこの国の人達はやっぱりみんな外国人風でみんな身長も高い。城の人達は私の歳を知っていた筈だけれど、事情の知らない一般人から見たら私は子どもぐらいの背丈なんだろう。


ただ随分前から御者達の無駄話がピタリと少ない。というかピリピリしている様に感じる。

そして私も別の意味で焦りはじめている。飲まず食わずは慣れてるから良いとしてそろそろ膀胱内の尿が腹8分目を超えそうだ。ここまで放置されるのは初めてだ。夜どこかの宿で泊まっていた時も一度トイレに出して貰えたのに。


「おい、このままじゃ俺たちがこの森を出る前に日が暮れちまう。」

「だが急かそうにも馬の怯えが尋常じゃない。目的地より手前だが此処で置いていくか?」

「よせ、それがバレたら俺たちの首も飛ぶぞ。」

「どうせこいつは此処までなんだ。なんかいつもと森の様子が違うんだよ。分かるだろ!」

「そうだな、、引き返す方が良さそうだ。」


ーーー!?

私はびっくりして腰を浮かした。

何その不穏な会話!待って待って待って!どこかの開拓村とか炭鉱とかに送られんじゃ無いの!?森に置き去りって魔物?人食い熊?狼?そんなもの達に喰われてしまえって事!?

あんまりだ!

御者達の会話からして相当ヤバい。現在進行系でやけに肌に感じる空気の冷たさは城の時と段違い。

怖い。もう涙も枯れたと思っていたけれど、コレで最後かと思ったらまた涙が出てきた。


話はついた様で馬車が止まった。

扉が開いて腕を掴まれ外に出される。男達は辺りを警戒している様で私の方はちっとも見ずに視線を周囲に送っている。表情は緊張のためか引きつり、落ち着かない馬を宥めながら馬車の向きを変えるのに必死な様子だ。


「待って!ねぇお願い私も連れて行って!」


このままここにいたら確実に死ぬ。ならばと交渉してみようと思ったけど、


「うるさい!!」


と一声私の視界が一瞬暗く染まった。

殴られたのだと打ち付けた身体の痛さとは別に左頬が痛くて手を添えた時に理解する。手には血が付いていて口の中に硬いものがあるので手に出すとそれは歯だった。


御者達は場所の向きを変えるのに成功した様だ。私の事はもう存在すら無いかの様に慌ただしく動いている。


何か嫌な気配がする。それは私にも何となく分かった。何かに見られている。背中に嫌な汗が伝う。身体が震えて心臓がドクドクと凄い速さで動いている。はっはっはっと息が勝手に短くなって


『ーーー!!!』


何かの雄叫びを聞いて身体が跳ねた。


「おい、今の!」

「早くしろ!こんな手前まで来てるなんて聞いてねぇよ!行け!ほら!」

震えて動かない馬に鞭を打って馬車が去って行く。

私を拘束している余裕も無かったらしい。

すぐに森の木々で見えなくなった。

瞬間


「ぎゃぁぁぁ!!」

あの人達の叫び声が聞こえた。

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