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11話

朝ですね!

 今回は早起き出来た筈なのに、今日も彼の方が早かった。昨日の残りのスープをお粥にしたものを外の焚火で作って、また洞窟に鍋ごと持ってきてくれる。


 ここで私の起床。まるで美味しい匂いで目が覚めた食いしん坊キャラみたいではないか。

 

ーーー彼は何時に起きてるのだろう?


 そう思って心の中で首を振った。


ーーー違う違う。彼じゃなくてユゾーラだ。


「ユゾーラ?」

「うん?」

「今度は私も起こして?」


 お願いする。

私は一人で生きていける様にするのが目標なのにこれではユゾーラが居なくては生きていけない。

 目指せ自立!


 生きるために必須の目標を脳内にデカデカと掲げてみせる。

 今年のスローガンは【自立】です。


 ポンと頭に掌が乗って


「そんなに急ぐなって。もう少し肉を付けるのが先だ。まずは沢山食って寝ろ。な?」


 そのまま頭をグリグリされて、お粥を膝抱っこで食べさせられる。



 扱いが解せぬ、、。

味は大層美味しゅうございました。



 その後、ユゾーラは自身の髪の毛をなれた手つきでチョキチョキと切って短くし、近頃生えてきた無精髭も剃って大分若がえった様になった。


 うん、小汚い格好から小綺麗になるだけでどっかの傭兵から王都の騎士団とかに居そうな雰囲気になるからあら不思議。


 更に「髪を染めて来る」と洞窟の外に行ってしまったので、どんなイメチェンになるか妄想が膨らんで楽しい。

 因みに私はお留守番だ。外に出ようにも滝が入り口を塞ぐ中、安全に出られる保証も無いし勇気もない。せっかく靴を作って貰ったのに歩けるのは洞窟の中だけ。残念でならない。


待ってる間に何しようかなー。と辺りを見回し、、、


良いものを見つけた。


**********


ユゾーラが帰ってきた。


おお!!赤い髪の毛もとてつもなく似合ってる。


なんかワイルド感が増して王都の近衛騎士団から辺境の魔物討伐部隊に移動したぐらい華麗なワイルド差が出ている!

 分かるだろうか?


 私がマジマジと見て勝手に品評会を開いてる中、ユゾーラの顔は眉間にシワが寄ってくる。おっといけない、口に出さなきゃ伝わらないよね。


「ユゾーラ、赤い髪の毛もとっても似合ってます!かっこいい!」


心から大絶賛の感想を贈った。


だけど、眉間のシワが薄くなることはなく


「その格好はなに?」


と私の今の格好を指摘される。


「ふふふ。」


 よくぞ聞いてくれました。なるほど私が意味不明だとその眉間のシワが言っているのか。今の私は敷物を頭から被り雪ん子の様な格好をしているのだ。なぜかと言うと、、、


「ジャジャーン!」


敷物を上に投げて取っ払う。実は私も待っている間にイメチェンしたのだ。

 さっきユゾーラが使ったハサミを見つけたので髪の毛をバッサリと切って男の子の変装にチャレンジしてみたのです!久しぶりのショートカット!頭が軽く感じます。


「私も髪の毛を切って変装してみました。イメージはユゾーラの兄弟!男の子でっす!」


 男の子の変装、ここまでしたのには訳がある。絶対にぜっっったいにあの国関係者に見つかりたくない!!という訳でもう性別すら変えてしまったという訳であります!

 フンスフンスと鼻息荒く胸を張る私の前で


「お前、なんて事してくれてんだよ。」


 ゆぞーらは膝から崩れ落ちると泣き出した。

 

「折角の綺麗な髪が、、 」


と切ってまとめておいた髪のところまで四つ這いになってシクシクしながら這っていく。

 予想外な反応に私は胸を張ったまま固まってしまった。


もっと

「凄いな!」とか「イメージがガラリと変わったな!」とか高評価を貰えると思っていたのに実際は赤毛のそばかすマッチョマンがハイハイしながら黒髪の元まで行ってシクシク泣いてる、、、

 

、、、軽くホラーな展開になってしまった。


あ、私の黒髪をポッケに入れ始めた。


     はいアウトー!!


 私はユゾーラの腕にしがみつく。目指すは彼の手に握られた私の黒髪を離させる事!大事そうにポッケに入れるのなんて冗談じゃない。遺髪じゃないんだからそんな縁起の悪いことはよして下さい!!


  そしてなんか気持ち悪い!


 私の抵抗が通じたのか手から遺髪、否、黒髪を離してくれた。がまた横抱きにされてギュウギュウ抱きしめられる。苦しいしここまで悲しむ彼の行動の理由が分からない。混乱する私に


「ファニーごめん。女の子の髪の毛を切らせちまった。そこまでしなくて良かったんだ!」


悲痛な声で謝るユゾーラに私は察した。この世界で女の子が髪の毛を切ることは相当大変な事なのかもしれない。


 髪は女の命!


の様な価値観が根強いのかもしれない。


 ギュッとされて苦しいけれど腕を上げて背中を摩る。


「ユゾーラ。髪の毛を大事にしてあなたと離れてしまうより、少しでも安全にユゾーラと一緒に旅をしたかったんです。」


 あの国での事や私がスキルなしとか色々言えない事も多いけれど、これは本当のこと。


 ぱっと身体が離れてユゾーラと目が合う。息もし難いくらい抱きしめられてたから大きく息を吸えることには安堵したけれど、ユゾーラは相変わらず私をじっと見たままだ。目が合うと言うよりはその後から固まったままと言う方が正しい状態か。


 何がユゾーラをここまで驚かせてしまったのかは分からないけれど、涙は止まったし、悲しそうな顔では無くなったから悪い事ではないと思いたい。


とユゾーラの口角が綺麗に上がった。


「、、、、、っ!?」

 口元は笑みを作っているのに目は固まったままで、一瞬背中に悪寒が走る。ゾクっとして腕に鮫肌が立つのが分かった。


「ユゾーラ?」


静かに声を掛けてみる。

瞬きしたユゾーラは


「、、、うん?」


いつものユゾーラで。


 殺気や怪しい人の気配などからは程遠い世界で生きてきた私にはさっきのが何だったかはっきり断言出来ない。ゾクっとして悪寒かと一瞬思ったけど、洞窟が涼しいから震えただけかもしれない。髪の毛が短くなって首の辺りがスースーするから。


 目の前に居るのはいつものユゾーラだし、気のせいだったと思う事にした。







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