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1-1

逃げている。

俺は逃げている。

何から?あの悪魔どもだ。


「おーい、逃げんなよ」


「てかバイク相手に足で逃げるとか頭悪すぎだろ」


ゲラゲラと、不快な笑い声が響く。

うるさい。うるさい。うるさい。クソ野郎共め。頭が悪いのはどっちだ。俺のほうがお前達より頭はいい。そうに決まってる。


「お、ばててきた?」


「いやー頑張ったよ陰キャのわりに」


「それな、さすがいっつも一人でさっさと帰ってるだけあるわ」


心底虫唾の走る声。軽薄で思慮の足りない、悪意に彩られたクソのような声。

畜生、畜生。

なんで俺が逃げなきゃいけないんだ。悪いのはあいつらだろ。あいつらはいじめグループで、俺はまじめな生徒だぞ。


「はいは~い追いついた。言い逃げっぷりだったぜ」


「よく言うわ、原付以下の速度しか出してねぇくせに」


「じゃあオレらから逃げた罰を受けてもらうね、陰キャ君。名前なんだっけ?」


確かに俺は友達がいないし、成績もよくないし、部活にも所属してないけど、俺はお前たちと違って人に迷惑をかけるようなことはしてない。

俺のほうがよっぽどまともだ。お前たちはクズで、クソだ。


「オイオイ名前忘れるなんて酷いねぇ!あんなにおごってもらったのに!」


「それな、さすがにひでぇ。俺はちゃんと覚えてるぞ。確かクソ山くんだっけ?」


「ギャハハハハ、お前も覚えてねーじゃん!クソ谷君だったよな」


「クソ島?」


「クソ原?」


「ロビンソン・クソーでしょ」


「「「ぎゃははははははははははは!!!!!!」」」


何が面白いんだ。全然センスがない。クソはお前らだろ。

何がクソ山だ。俺の名前はそんな名前じゃない。


俺の名前は……


「と、いうわけで、俺らから逃げた罰ゲーム!」


「そうだなぁ今日は……」


・・・・・・・

・・・・・

・・・



畜生。畜生。畜生。クソが。クソが。クソが。クソが。クソが。

俺がなにしたっていうんだ。なぜ俺がこんな目に合わなきゃいけない?俺は誰にも迷惑はかけてないのに。

俺は悪くない。悪いわけがない。

悪いのはあいつらだ。

あいつらをのうのうと生かしている社会も、クソだ。

学校も先生も同級生も親も全部クソだ。クソクソクソクソクソクソ。

死ね、全部死んじまえ。

こんな人生に未練はない。すべてがクソだ。

消えろ。消えてやる。

『ポータル』を使ってやる。

国の言うことなんて知るか。どうせクソどもを野放しにしておくような国なんだ。

『ポータル』の使うなんて簡単だ。今時、家にある3Dプリンターでも作れる。設計図はちょっと調べればネットで簡単に拾える。

準備は一時間程度で終わる。こうしてる間にも設計図のファイルを落とせた。


(ああ)


幸い家に親はいない。『ポータル』を作っていてもバレやしない。まあ、あんな息子のために何もしないどころか暴言しか吐かない親なんてどうでもいいけど。


(けれど)


最後の晩餐だ。冷凍庫の中のパスタをチンして炒める。去年販売開始された電子レンジ(正式名称は電子レンジとはまた違う画期的な商品らしい。どうでもいい)ならコンビニの冷凍パスタは10秒で適温になる。


(忘れないようにしないと)


コップに牛乳を注ぎ、パスタを食う。3Dプリンターの静音ファンが、けれど他に物音のない我が家には大きく聞こえる。




(遺書には書けるだけ、クソ共のことを書いておかないと)




うん、うまい。死ぬにはもってこいの日だ。




(ネットにも、しっかりばらまいておかないとな)




あばよ、クソ共。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


遺書 2062 6/11


この度、私はポータルを使用して自殺することにします。

自殺する理由は、学校でいじめにあっていたせいです。

学校のいじめていた人たち、そしてそれを知っていながら止めなかった教師や同級生たちの名前を書いておきます。

私が死ぬことになったのは、こいつらのせいです。一緒に私の知る限りの個人情報も書いておくので、どうぞ好きにしてください。

ではさようなら。人生はクソ。


(以下人名や電話番号、住所などが書き連ねてある)



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