プロローグ3
プロローグ3
〈ピーンポーン〉
「はーい」
『すみませーん、八月一日翼さんのお宅はこちらでしょうか?』
「はい、そうですけど」
『お荷物のお届けに上がりました』
〈ガチャリ〉と玄関を開けると、そこに
想像していた宅配業者ではなくなぜか引っ越し業者だった。
ボクが何で引っ越し業者が来てるんだろう、って首をかしげた。
「イヤー、最近流行りのゲーム機らしいんすけどね、物がでかくて家に入れるのが大変っつーことで、引っ越し業者であるうちが届けることになったらしいっすよ。まだ、お嬢ちゃんにはわからないかも知れないっすけどね。あぁ、ここに名前書いて下さい」
引っ越し業者の人は、そう言いながらサインを受け取った。
「それじゃあ、物を運び入れるので、詳しい人を呼んで下さい」
「翼ちゃーん、なんかおっきい荷物が届いて、運ぶから場所教えてだって」
「わかったー、お兄ちゃん、ちょっと待ってて」
「うん」
妹が玄関まで来ると、引っ越し業者さんは、ボクと妹を交互に見て、「えっ…、身長130なさそうなこっちのちっちゃい子がお兄ちゃん?、小学生くらいの少女だと…」なんて呟いていたけど、妹が「あのぉ」って声をかけると「すいません、すぐに運びます」と仕事に戻っていった。
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ゲーム部屋に荷物が運び込まれ、妹がセッティングを終えると、妹が使っていたクレイドルとは別に、もう1台のクレイドルが置かれていた。
妹がβテストに参加して3ヶ月ほど過ぎ、夏休みまで2週間に迫った今日、ボク達の家に最新のFDVR機が届いたのだった。
「βテストのお礼に、お兄ちゃん用にクレイドルのエクステンド版もらえたから、夏休み一緒にゲームシよ?」
エクステンド版と言っても、妹が使っていたクレイドルと違いが分からず、首をかしげるボクに、「β用のクレイドルもエクステンド版だよ」と妹は言った。
「わかったけど、1つだけ条件があるよ」
「なに?」
「黒餡って、エッチなこともできちゃうんでしょ?」
「うん、できちゃうねー」
「だから、ボク、女の子にするから、翼ちゃんも女の子にして。これが最低限の条件だよ」
妹は、「そっかー、百合かー」と呟いてから条件を飲んだ。
その時のボクには、"百合"の意味が分からなかった。