プロローグ
プロローグ
VRMMOと聞いてどんなゲームを思い浮かべるだろうか。
多くの人が、ゲームの世界に入り、自分の手足の如くアバターを操作できるゲームを想像するのではないだろうか。
しかし、現実のVRMMOは、過去作品をVRにリメイクしたものが多く、VRと言っても、自キャラの視点で臨場感を増したFPSの延長線のものだった。
技術の進歩というものは、ある日突然日の目を見る。
それまで無名だった会社が突如として発表したFDVRマシンクレイドル。
その名の通り、ちょっとした酸素カプセルのような外見のVRマシンである。
そのVRマシンは、同社が発表したFDVRMMOをプレイするために産み出された。
XUnlimited Online無限の可能性を持つ第2の人生を、というコンセプトを持つ世界で唯一のFDVRMMO、通称黒餡だ。
このゲームは、今までのVRMMOと一線を画し、アバターを自らの手足のように動かすことができ、痛覚は30%程まで引き下げられているものの、きちんとした五感が存在する。
また黒餡は、アバターの自由度を売りにしていて、プレイヤーの年齢に応じて謎の光や湯気で規制は入るものの、全裸になって温泉に浸かることもできるらしい。
プレイヤー同士の合意があれば、肉体関係すら持てる。
全年齢対応ではあるが18禁規制はされていないゲームだ。
そんな自由度の高いゲームであるため、異性アバターを使用する際は、異性の快感を覚えて、現実に支障をきたしても、ゲーム会社に責任はないという同意書にサインをしなければならない。
そんな黒餡のβテストは、目立たずに行われた。
そもそものネット広告がシンプル過ぎたのだ。
ネット小説のサイトに、白地に黒い文字で、"X Unlimited Online"、"無限の可能性を持つ第2の人生を"、"βテスター募集中"この3つがバナーとして表示されるだけである。
そのため、バナー広告をスルーする人が多く、"廃神"などと呼ばれるゲーマーでも気付く者が少なく、広告に惹かれた者達だけがβに参加した。
そして、ネット掲示板で"臨場感がパネェ"などと騒がれ初めて自分たちが無視していたものの凄さに気付き歯噛みした。
妹は、このバナー広告に惹かれるものがあったらしく、当然のようにβに応募した。
妹の部屋にクレイドルと専用ミニサーバーが運び込まれ、妹の部屋はゲーム部屋になり、ボクの部屋のベッドは一回り大きな物になり、妹と相部屋で同じベッドで寝起きすることになった。
相部屋になった次の日の朝、"気付くと妹と既成事実ができていました"という事件が起きたが、母は妹に「きちんと避妊しな」と注意するだけでスルーした。
そんな妹が、βテストに参加してから、3ヶ月ほど過ぎ、夏休みまで2週間ほどになったある日、元妹の部屋に新たなクレイドルが運び込まれた。
「βテストのお礼に、お兄ちゃん用にクレイドルのエクステンド版もらえたから、夏休み一緒にゲームシよ?」