ミツバチとネズミ
はちみつケーキでできた汽車は、レールの無い山道を草や木をかき分け走ります。
今日はお山の動物たちのピクニックです。
この汽車に乗って、お山の上に行きます。
汽車に初めて乗った小さな動物たちは、嬉しいのでしょう。
はしゃいでばかりです。
「何と素晴らしい眺めだろう。海が見えるよ、僕初めて海を見るよ」
「私もよ、山は木ばかりだものね」
「早いな、早いな、この汽車は」
「美味しそうな、はちみつの甘い香りはするし、素晴らしい汽車だね」
大きな動物たちは小さな動物たちの喜びの声を聞くと、それで心から嬉しくなるのです。
大きな動物たちは、汽車には乗れませんので、走るのです。
広々とした丘に着くと、くたくたに疲れていました。
丘の上にごろり、と転びました。
涼しい風が、疲れをねぎらうかのように、心地よく吹いてきては汗をどこかへ運んで行ってくれます。
そこへウサギが真っ青な顔をして飛んできました。
「ネズミさんがいません」
寝ころんでいた大きな動物たちは、飛び跳ねて起きました。
「ネズミさんがいないの?」
「はい、汽車の中にも丘の上にもいません」
「ひょっとしたら、強い風が吹いたとき風さんが連れて行ったのかもしれません」
「そうですよ、あの強い風のときです。それまでは私の横にいました。そういえば窓ガラスが少し空いていました。ネズミさんは小さいから窓から飛んで行ったのかもしれません」
「それは大変。みんなで探しましょう」
みんなで探しに行こうとすると、ライオンが言いました。
「小さな動物たちは、汽車の中で待っていなさい」
森の中に入って行った大きな動物たちは、サルがキャッキャと騒いでいるのに気付きました。
「サルさん、どうしました」
と、ゾウが聞くと
「そこ、そこ、そこ、、、」
と、指をさします。
その方を見ますと、ネズミがぶら下がっていました。
「木登りの上手なおサルさん。何とかなりませんか?」
「何とかなるなら、とっくの昔に助けていますよ。あんな高いところの細い枝にぶら下がっているのですよ。うっかり私が行くと木が折れてネズミさんも私も落ちて、死んでしまいますよ」
「本当にそうですね」
ゾウが両手を上げ、鼻を伸ばし、一生懸命で背伸びをしますがネズミには届きません。
ライオンが
「キリンさん、僕の背中の上に乗って、背伸びをしてみてください、そしたら、届くかもしれません」
そう言って、ライオンは地面に腹ばいになりました。
キリンがライオンの上に、両手を乗せ、足を乗せようとしたときです。
ライオンが悲鳴をあげました。
「腹が爆発しそうだ」
と、言って、地面を叩きました。
動物の王者であるライオンでも、どうにも出来ませんでした。
「早く助けてくれ、手がちぎれそうだー」
とネズミが鳴き声をあげます。
その時、ミツバチがやって来て
「ネズミさん頑張るのよ。このローヤルゼリーを飲んで、力をつけて頑張ってください」
と言って、飲ませました。
ミツバチが指をさし
「おサルさん、あそこに大きくって長いツルがあるけど、あのツルを使って何とかなりませんか?」
「そうですね、そう言われてみれば何とかなりそうです。一つやってみましょう」
サルはツルを歯で嚙み切り、木にくくりつけました。
長さをネズミのいる枝に合わせて、片手でツルを取り、ビュンと反動をつけターザンのように宙を飛びネズミを抱きかかえました。
「わぁっ、ネズミさんが助かった」
と、みんなで大喜びしました。
ネズミはミツバチの方を見て
「ミツバチさんありがとうございました。ローヤルゼリーのおかげで、助けを待つことが出来ました。ミツバチさんは命の恩人です」
「助かってよかったですね」
と、言ってミツバチはどこかへ飛んで行きました。