《 序章 》 〈 第二十一話 〉 正気の狂気
修正完了! 2018、12、18 シンゾウ
《 キャラクター&キャスト 》
『 天神 七代 』 ( 正神軍 : 東京 神の光玉 / 守護神 )
天御光太陽貴王日大光日大神( 天照主日大神 ) ・・・ 中村 雅〇
東京 : 神の光玉 / 聖者 「 黒須 光明 」 高橋 秀〇
( 皇居上空 3000M に光の十字架となっている )
氏神 スプリングフィールド (三十郎) / ジャン・レ〇
湖神 ナセル (チカチュウ) / キャサリン・ゼータ・ジョーン〇
うさぞう : 信造 : 作者 / 伊藤 敦〇
( 邪神軍団 )
総 帥 サタン ( ルシフェル/クラウド ) アントニオ・バンデラ〇
司令長官 アンドラスタ ・・・ ジョージ・クルー〇ー
中将 バグソー ・・・・・ ジャック・ニコルソ〇
( 悪魔の偵察隊の手下)
高木 京次郎 ( 六十一才 ) 岸部 一〇
志田 正人 ( 四十三才 ) 中村 獅〇
木下 祐二 ( 三十五才 ) 脇 知〇
新井 幸夫 ( 三十才 ) 小栗 〇
小林 由利恵 ( 二十八才 ) 常磐 貴〇
( 自警団 「 暁 」 副団長 / 関口新心流 師範代 )
結城 秀人 ・・・ 渡 哲〇
※ 関口新心流は実在しております。
柔術・居合術・剣術の三つを根幹とした古武術であります。
私の先祖と直接関連があるかは知れません。
オフィシャルサイトは下記参照。
http://www.nihonkobudokyoukai.org/martialarts/015/
駒沢公園の見取り図はこちら ・・・ 駒沢公園
http://www.tef.or.jp/kopgp/map.jsp
さて、このお話は今までにない衝撃的なバイオレンスが吹き荒れます。
とはいっても、正邪の進軍以降の方が強烈ですが ・・・
心臓の弱い方、想像力が豊かな人程、影響を受け易いので、
くれぐれもそこを踏まえて、お読みください。
何しろ、数霊、言霊、音霊、色霊、形霊、
全ての霊力が文面に伝わるように駆使しております。
その力は微々たるものかもしれませんが、
読む人の想いが強く文面に入り込むほど、
心と魂に響いてくるものと思います。
それは、私の意図するところではあります。
この作品は、正邪の奥に存在する、愛と悪、光と影を際立たせ、
ぼやけた神の道と救いの光をはっきり見い出せるように、
願いを込めて執筆しております。
その為、どうしても愛と悪の描写を強調して描かざるを得ません。
そこを御了承頂けますようお願い致します。
( 推奨BGM )ウィアー・ゴナ・グルーヴ
レッド・ツェッペリン
https://www.youtube.com/watch?v=tBBvc-4Lyac
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二〇 X X 年十二月十九日(金) 午前零時三十五分
カウントダウン 七十八時間二十五分
ここは、東京の何処かの通り ・・・
分かっているのは、神の光玉内であること ・・・
どの通りも車の駐車場化しています。
その車の間を、自転車やバイクがすり抜けていますが、
それも疎らです・・・
ただ、恐らく暴走族の類と思われる何台かが、
ズ太いエンジンの爆音を響かせ、
時にクラクションを鳴らし時に喚き叫び合い、のろのろ走らせています。
あの独特の重低音からして、大排気量のハーレーと思われます。
我等は、こいつ等から離れた後方上空から眺めています。
暗いので近付かないと車種の判別は出来ません。
私が分かる範囲は、四台のバイクの先頭は二人乗りをしているので、
五人の暴走野郎ということだけです。
このウサギスーツの霊眼は、霊的なものには敏感ですが、
物質には鈍く人間並み。
暗がりや遠くは良く分かりません。
先程から、こいつ等の後を付けているのは、
スミレ様の指令という事でしょうか?
《 その通り。よいか奴等は刀を背負っている。
鞘の中の刃には、ベットリと血糊 が付いておる。
つまりは、既に何人もの血を吸っているということじゃ。
指令はやつ等の監視じゃよ。》 血ハ、メグラスモノデスワヨ。
「 殺人鬼ですね。
自暴自棄 ・・・ というより、
千載一遇の殺人ゲームを楽しもうということでしょうか?」
《 まあ、そんなところだろう。
だが、もう既に日本中で似たような事件が何十件も起きておる。
中には、レイプに殺人をやらかす連中もいる。
何しろ道路が塞がれ、
少ない警察官や自衛官の中から「神の光玉」に入っている者もいる。
ということになれば、言わば無法地帯と化した状態じゃ。
純日本人だけなら、こう乱れたりはしないが、
在日外国人や混血の者、意志の弱い日本人などは例外じゃ。
当然、外国の状況は最悪となっておる。
そいつらをさて置きバイク野郎を監視する理由とは恐らく、
「 奴 」 が関係しているからじゃろう。》
「 その奴とは、一体何者で御座いますか?」
《 ほれ、バイクの先頭の人間に憑依しておる幾多の邪霊、
その中の一人。奴はアンドラスタ軍の 「バグソー中将」。
こいつはかなりの曲者で知恵も働く。
他の四人の憑依霊も皆バグソーの手下じゃ。
こいつが更に何かを企んでいるということじゃ。》
チュウチュウチュウ♪ コロコロッ、クルクルッ♪
三十郎様は、タブレット らしき物?
を御覧になりながら仰せになりました。
これは、神議り場でミカエル様の議席上にあったものと同じだ。
《 あ、そうそう、その通り。
これには司令部から様々な最新情報が送信されて来る便利な物で、
「 叡 智 晶 」 という物じゃ。
邪神軍の組織形態も世界の分布も然り。
アカシックレコードの情報も閲覧可能じゃ。
それに、ほれっ小さく形を変えて指輪にする事も可能じゃ ・・・
それでな、立体地図モードでは、
奴等は現在、自由通りを北に向かっておる。
おお、止まるようじゃ ・・・ ここは、世田谷区の奥沢二丁目か。
駒沢公園にはかなり近いのう。》
三十郎様は念波で操作されているのか、
ただ立体画面を見つめておられるだけです。
しかし凄い映像で御座います。
奴等がバイクを止めた場所は、三階建てのアパートの前だ。
バイクは街灯に照らされ ・・・
うわぁ、これは相当ドレスアップと、
改造されているローライダーだ。
深紅のタンクにエアーブラシで描かれた、
天使の胸にナイフが刺さって ・・・
・・・ 悪趣味だな。
煌びやかなエンジン周りは、
殆どクロームメッキが施されている。
幾らつぎ込んだのだろう? それとも盗品か?
四台のバイクは皆、個性に溢れている ・・・
今は、心臓の鼓動は止まり、不気味に息を潜めている。
一番前方のバイクにタンデム乗りしていたのは女だ。
夫婦なのか愛人か? 何れもヘルメットは被っていない。
五人の服装はアウトロー的で、
人相は悪い上に目が血走っている。
体全体からは、きな臭い匂いがプンプンして来る。
血生臭い遊びを満喫してきた後なのだから当然だ。
五人は一階の一室に、大声で話ながら入っていった。
私達は裏に周り、窓際の外壁の中から
目立たないように室内を伺った。
《 いいか、あの一番年長の奴は、高木京次郎、六十一才。
一応このグループのリーダー格だ。仕事は出来るし金もある。
柳生新陰流の使い手だが、
こいつの目的は真剣を振り回すこと、それだけじゃ。
刀の魔力に惑わされ、
剣の極意を極めよう等とは露程も思ってはおらん。
何時かは、人間で試し斬りをするのが夢だったが、
その夢が叶いさぞかし満足であろうな。》
ヤバンですわ~~。コロコロッ。
「 狂人もいいところですね。」
《 うむ、そうだな。
え~次は黒い皮の上下の奴だが・・・ 志田正人、四十三才。
こいつも、高木と同じ道場の門下生で、
腕はこいつの方が数段上じゃ。
ただ、負けず嫌いで、汚い手段を使いのし上がるのが趣味じゃ。
剣でも仕事でもな。
当然、この二人は道場の鼻つまみ者じゃ。
高木と行動を共にするのは、単にいい金蔓だからに他ならない。
後の三人は志田のバイク仲間で、剣の心得は無い。
こいつ等の刀は、刀剣収集家の家を襲って奪った物で、
みな業物ばかりじゃ、勿体無いわい。
ふう・・・ 次は太った大柄の男、木下祐二、三十五才。
隣の赤い革ジャンを着た細身の男は、新井幸夫、三十才。
女は、小林由利恵、二十八才。
それと、先程アンドラスタ軍のバグソーの話をしたが、
バグソーが憑依しておるのは、この志田じゃ。
そして、あの女はこいつの遊び相手に過ぎない。
今から、宴会をやって武勇伝を酒の肴に
盛り上がろうという趣向じゃろう。
全く、馬鹿馬鹿しい。》 ヤレヤレデチュウ。コロチュウチュウ。
志田は影のリーダーということだろう。
どうりで他の四人より、胎の中も魂も腐っている。
しかも、底知れぬ恐怖を感じます。
奴の目が鈍く光って、笑う度にその目の奥の、
バグソー らしき ドス黒い霊体から、
指令が部下達に飛んでいます。
鞭のような鋭い波動の光が見えるのです。
五人の守護霊達は、頭の脇でうずくまったままで、
まるで生気が感じられず、
金縛りにでも掛かっているようにしか見えません。
その守護霊をよそに五人共、奥の十畳の和室に入ると、
その服装からは不似合いなリュックと刀を降ろした。
皆、興奮しながらリュックの中を開けて、
酒の類と何かの料理が入ったタッパや、
ハム丸ごとに果物その他をテーブルの上に無造作に並べた。
どうせ金持ちの家に押し入り、住人を殺して冷蔵庫の中身を中心に、
目に付いた食い物をリュックに詰めたという事だろう。
志田が自分の手下に、
グラスや皿等の食器を持って来るように指示を出している。
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( 推奨BGM ) 貴方を愛しつづけて レッド・ツェッペリン
https://www.youtube.com/watch?v=MfxL8K6wR2I
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直に宴会の準備が出来た。
先ずはビールで乾杯をし、貪るように食べて飲み始めた。
志田は無作法な姿勢で、
動物のようにローストビーフに食らい付き、ワインを流し込む。
同じ獣でも、死肉を食べる禿鷹やジャッカルやハイエナの方が、
神の掟の範疇での殺しであり食事である。
故に立派と言える。
例えライオンその他の獲物の横取りでも、卑怯では無い。
ある意味天晴れである。
が、こいつ等は見た目も心も魂も獣以下の腐った肉の塊である。
口に物が入ったまま、醜い言葉でしゃべりまくっている。
もはや、理性も知性も見受けられない。
良心や人間性は捨て去ったようだ。
おふざけで、獣人高木は大脇差を居合いで抜刀し、
テーブルの上のボンレスハムを一刀両断した。
ただ下の皿まで割った上によろけて転び、
その弾みで血刀を放り投げた切っ先が、
壁に貼られた金髪美女の胸のど真ん中に突き刺さり、
血糊が僅かに滴り落ちた。
バグソーの演出だろうか?
拍手喝采を浴びた高木は上機嫌である。そして ・・・
「 俺は今度、兜割りに挑戦するぜェ。俺ならやれる。」 と豪語した。
馬鹿騒ぎは一時間以上続き、皆出来上がっていた。
だが一人だけ青褪めた顔の奴がいる ・・・ 新井だ。
こいつは酒が弱いという訳ではなさそうだ。
ただ、ボーッ と 回想している ・・・ 噛み締める様に ・・・
脳裏を ・・・ 覗いてみよう。
・・・ 必死で命乞いをする女性の顔が見える。
年は三十位だろう ・・・
次はうつ伏せに抑えられたその女性の首に、
刃先が食い込み血しぶきが飛んだ ・・・
クズめ。
次のシーンは、志田がこの女性の父親と思しき男と剣を交えている。
顔面蒼白の母親の首には、
高木のバタフライナイフの刃先が食い込んでいる。
高木の高笑いと母親の悲鳴が重なった瞬間、
父親の左腕と刀は ボトリと畳に落ちた。
勝負でもないのに志田は、
「 弱っちい師範だぜぇ!」 と言い放った。
師範とは ・・・ だから卑怯な手を使ったのだ。
まだ次がある。
その師範を、血が滲んだ畳に正座をさせ、
志田と木下が両腕を押さえている。
新井は、師範の頭を掴んで下を向かせて固定している。
母親を抑える役は小林に代わっている。
刀の棟で肩をトントン叩きながら、高木が醜い口を開いた。
「 おい、俺様が介錯してやるんだから感謝しろよな。
それに、何かと説教垂れたことは水に流してやる。
これも感謝しな。
最期に、家族仲良く天国とやらに行かせてやるんだから、
それも感謝しないとな。
ええ、有り難いだろう クソじじぃ!
首の皮一枚で斬ってやるぜぇ!! 」
と言って振り下ろした刀は、頚椎の骨で ゴッ と止まった。
頭に来た高木は右手を棟に添えて グッ と力を込め、首を切り落とした。
頭を押さえていた新井は勢い余って後ろに尻餅を着いた。
そこに、転がった師範の首が開いた足の間で止まり、新井の顔を睨んだ。
そして血が滴る唇を動かし、何かを言っているようだ。
・・・ 殺 してやる ・・・ 殺 して ・ ・ や る ・・ ・ ぐう
この時、新井の血は恐怖で凍りついたようだ。
その感覚が伝わる。
そして心臓の鼓動が異常に早くなった。
この男に、師範の搾り出す声は聞こえたのだろうか?
実際、微かに発音したようだ。
それに、凄まじい怨念の念波が伝わる。
憐れ、師範の妻は志田に殺され、家には火を放たれた ・・・
言葉が出ない、獣以下の狂人である。
その後も豪邸の何件かに押し入り、
レイプしては殺し、略奪の後に火を放った。
その火を眺めながら皆奇声を上げている。
近所の者が逃げて行くが、それすら楽しげに見ている。
「 お~い、ねえちゃん、こっち来いよ。
寒いから焚き火に当たってけよ。
ババアは来んじゃねえぞ~!」
こいつは木下だ。
いずれにしても殺された人達は、
祈りの輪に加わるつもりだったのかは定かではありませんが、
迷わずに想いを一つにして早く聖域に行けば良かったのです。
チ~カ。なるほどそういう事だったか。
無表情なこの男の感情、結局どうなのか? ・・・
余りの強烈な体験で、単に放心状態になっているだけのようだ。
ただ、後悔の念も快楽も感じてはいない。
全て惰性であり、極度の不感症なのだろう。
・・・ 俺は言われた事をしただけで、自分に責任はない。
こいつ等が悪い。心中する気はないが、まあ成る様に成れ ・・・
という思念が伝わって来る。
つまり自分の意志が弱いが故に、
狂人にも邪霊にも操られ易いということだ。
「 相応の理 」 「 因果応報 」 「 類は友を呼ぶ 」 「 同じ穴のムジナ」、
魂の曇りが同じだとこうなる。
性格や善徳、そして能力が違うだけである。
何故、こんなことが起きたのか?・・・
前世で、全く逆の立場で似たような事件が起こったと、
考えて差し支えないでしょう。
前世で無残に殺された霊が、
恨んで憑依し復讐の機会を狙っていたのだ。
更には邪霊の幹部クラスに目を付けられ手下となり、
果て無く扱き使われ現在に至ったということです。
人間は過去世の事は否定し考慮しない。
根本の原因はそこにあるのですが ・・・
故に裁判では様々な矛盾、冤罪が生まれ、
そこから更に恨みと悪想念が膨らみ、
社会全体が混迷混沌の度を増す事になる。
「 裁きの権限 」 ・・・ それは神の特権なのです。
その正確、公平、平等な裁きを支えているのは、
アカシック・レコードなのです。
人の死後、走馬灯のように映し出される当人の過去の記録映像は、
グウの音も出ない罪状を突きつけられます。
その個人の過去世からの正確な記録は、
個人のアカシックレコードへ ・・・
個人個人の集約した記録と、
世界の歴史のあらゆる記録は、地球のアカシックレコードへ ・・・
その地球のアカシックレコードは、
地球内部世界、アガルタの中心に位置する、シャンバラにあります。
地球のアカシックレコードは、超巨大クリスタルなのです。
地球のアカシックレコードの管理者は、大天使ガブリエルです。
この辺の情報は、御自分で検証してください。
全ては自己責任ですから、何でも鵜呑みにしたり、
依頼と依存が強い方は、人からも神々からも信用されません。
そこを踏まえて、何事にもあらゆる角度から、
検証する習慣を付けて頂きたいと思います。
さて、馬鹿どもの狂気染みた宴会は何時まで続くのだろう?
志田の奴が何やら静かだ。これは気になる。
きっと良からぬ指令をバグソーが出しているに違いない。
ボソボソと独り言を言っていて不気味だ。
ははあ、そういうことか ・・・ 少々お待ち下さい。
直に、こいつの口が語るでしょう。
ほら、奴の目が鈍く光り、不気味な笑みを浮かべてこう言った。
「 あのさぁ、高木さんに、みんな ・・・
もうそろそろお開きにしようぜ。
面白い事考え付いたんだよなあ。
ただ、これはかなりリスクを伴うんだが、
歯応えの無い連中ばかり襲っても面白くねぇし ・・
ヒヒ、高木さん ・・・」
志田は高木の顔をニヤニヤ見つめた。
「 おいおい勿体ぶるなよ。
どうせろくでもないが~、
快楽を極めるアイデアが閃いたんだろ、え~。」
「 こりゃあ適いませんねえ高木さん。
いや~何ね、ちょっと肝試し的な、
スズメバチの巣を突付く様な、ヒヒヒ・・・
つまり俺達のような、ならず者には、
危険な夜遊びをしようかと思いましてねェ。イヒヒ。」
まだ言わないとは・・・嫌な奴だ。
「 もう、まさと ったら~、言っちゃいなよぉ。
これ以上危険な遊びでも何でもこの際いいんじゃな~い。
ねえ、みんなぁ。ふえ~~。」
生意気に、スコッチのバランタインのボトルを持ちながら言った。
少しは味わえ ・・・
この女は、かなり出来上がっている。
小林のはしたない服装。
何だそのミニスカは膝上何十センチだ。
パンツはどうした ・・・?
それでバカ丸出しの女の股間に手を這わせ、
ニヤニヤと奴の目が鈍く光った。
「 ・・・ 祈りの聖域を襲うんだ。
ヒヒ、ここから近いのは駒沢公園だ。
ククッ、何人殺せるか?
というゲームをおっぱじめようという訳で~す!
ほ~う! ウッヒヒッ。」
ということです。 馬鹿め ・・・
剣三郎や拳三達がいる限り ・・・ んん?
いや、拳三達は出払っているかもしれない。
しかも、元気な人ほど誰かを救いに走り回っている筈だ。
その虚を突こうというバグソーの作戦か? これは不味いな。
「 そうか、それは確かに面白いゲームだが ・・・
奴等、金縛りの術が使えるんだろ。
つまりは、綿密な作戦が必要ってことになるな。」
「 流石は高木さんだ。グヒッ、ウィ~ップ ・・・
その作戦をこれから考えようじゃないですか。
万が一も考慮に入れて、
いくつも用意しなきゃいけないでしょうねェ ・・・
それに、おりゃあ思うんだが、
あいつ等は聖者面して地球を乗っ取ろうとしている悪党だぜ。
これは人間側から見れば真面目に正論だと思う。
それに俺達みたいな本物の悪党からして見れば、
侵略者で最大の敵だぜ。
この醜い人間が作った狂気の世界で、
俺達は他人から見れば狂人だが、
狂った世界で狂人なのは、むしろ普通で正気と言える ・・・
そおだろ~、だから人間の代表として、
侵略者から地球を守ってやろうぜ。
そうすりゃあ、狂人で~も英雄だ~、
殺人の罪も~無罪勝~お訴ぉ~っ♪
大統領の恩赦も夢じゃな~い♪
取引だぜェ~え、ジャ~ック~♪ クッククックゥ。
そうだ、ほら、アルマゲドンて映画もそうだったろ。
狂人集団が地球を救い英雄となる。
おりゃあ感動したねェ。
だから、俺達も英雄になってやろうぜ、ヒヒッ。
狂気の世界を守る為に立ち上がるのだ、我が同志達よ!」
右手を挙げて、
立ち上がって言うほどの事か、くだらん!
馬鹿共が拍手をするな。
タコデチュウ! 戯けめ!
「 さっすが志田さんだぜェ。
俺も重い尻をフリフリ立ち上がるのだ ~~ ビヨ~ン!」
木下がその場で飛び上がり、
着地に失敗して後ろの壁に激突した。
その衝撃で壁に突き刺さっていた例の刀が、
紙切れ製の金髪美女の胸から離れて切先が畳にドスッ!
見事に木下の指と指の間に ・・・
「 動 く な っ!」 志田が叫んだ。
バグソー中将は絶好調のようである。
顔面蒼白の木下。
大きく見開いた目線を、
右手に見える刀の上から下になぞって行く ・・・
息を止め刃先に触れないよう指を ・・・ 静かに抜いた。
その指を眺め回し一言、
「 あっぶねぇ~~っ!」
と言った木下を尻目に、皆は腹を抱えて笑った。
何でも引き攣った顔が最高だとか ・・・
二〇 X X 年十二月十九日(金) 午前一時四十五分
カウントダウン 七十七時間十五分
それからというもの、邪神軍アンドラスタ司令直属小隊、
バグソー隊長による侵略会議は一時間に亘って執り行われ、
その作戦遂行の為の準備と演習は、更に一時間を要するに至った。
あ、いや、そんな大袈裟なものでは御座いません。
ただ実際、志田は高木に気を使いながらである事は言うまでも無い。
ついでに、志田は高木に対して尊敬の念の欠片も無いことは言うまでも無い。
とことん利用して、価値が無くなれば捨てようという腹である。
当然、高木も同じ腹積もりである。
さて悪党五人臭 ・・・ 変換ミス?
いや、こっちの衆だけど別にいいか、お似合いだから。
狂人のヒーロー気取っているので、何か名前付けてやろうかな。
( 狂人変隊 ゴニンジャー!) なんて ・・・五人とも誤認とか、プッ。
「 どんなもので御座いましょう、三十郎様にチカチュウ様。」
《 くだらん、非っ常にくだらん! おまけで誤十点じゃ。》
へ、誤って?
コロコロチュウチュウ♪ コロチュウチュウ♪
《 さっきから何がコロコロなのだ、チュウベエ殿。》
オシエテアゲナイ。
・・・ あのお、私のお腹に何かあるのでは?・・・フフ。
《 まあ良いわ、放っておけ。》 フフ~ンダ。
「 ・・・はは。」
十二月十九日(金) 現在、午前四時四十九分
ここは、「神の光玉」 内、「祈りの聖域」 十八箇所の内の一つ、
駒沢公園内、陸上競技場。
この祈りの聖域は既に人で埋め尽くされていた。
他の駒沢公園、二箇所も同様である。
いずれもグランドの中だけで、二階のスタンドには入れてはいないようだ。
同じ神の光玉の中心、皇居上空の聖者の方角に跪いて祈る訳ですし、
同じ座面であることが重要なのだろう。
人数は現時点で、他の二箇所を含め 十一万二千八百五十二名。
「 憑 依 霊 」 五十八万五千百二十七名。
「 その他の邪霊 」 七百二十六万四千二百九十九名。
とにかくウジャウジャいます。
その人数は、世界中から正神軍司令部に随時報告がなされております。
その報告内容を、三十郎様は叡智晶で閲覧し確認しているのであります。
ところで、このウサギの霊眼で見渡せば、
恐らく七、八割の人は、
七時の開戦を過ぎても祈り続ける事が出来るだろう。
残りは嫌々感丸出しの人達である。
悪霊バグソーの手下は、非常に分かり難いのですが、
聖域の神気の影響でもがき苦しんでいるようです。
その憑依した人間の体内で、呻き声を上げながらアガク、
微かな言霊と動きで存在を確認出来ます。
他の邪霊、大きさはまちまちですが、小さく縮こまっています。
それで、魂が醜い人間の周りが落ち着くらしく、
皆で大勢集まりびっしりへばり付いています。
ここで明暗ハッキリ分かれました。
つまり、暗く醜い魂目掛けて 「流星火矢」 を放って下さい、
と示しているようなものです。
* 「流星火矢」 = 「神の光玉」 内に、
相応しくない汚れた魂を持つ者達を、光玉外に追放する為の措置。
裁きの天使が上空から放たれる火矢のこと ・・・
ところで奴等、ゴニンジャーはどうしたのか?
もう居ます。
すぐそこに ・・・ 新井幸夫が一人で、南西側の端に座っている。
こいつはさしあたり ・・・ 青ニンジャーでしょうかネェ。
何故って聖域の神気が相当きついのと、
極度の緊張で顔が青褪め苦しそうだからです。
そこから凡そ12、3 メーター離れた場所に志田がいるが、
やはり苦しくてうつむいている。
こいつは癖が強く捻くれているので、黄ニンジャーです。
たぶんカレーも好きでしょう。
こちらの小隊は黄色が隊長になります。
北西側には高木と木下がいます。
二人の距離は10メーター以上あるでしょう。
高木は血を好むので赤ニンジャー。
垢でも構いませんが、お好きな方でお呼び下さい。
木下は順番からいってミドニンジャーです。
ウシガエルみたいに動きも鈍いので丁度いいです。
その二箇所は、
東側中央にいる剣三郎からは一番離れた位置になります。
つまり、やましい事をする為、
暗い隅っこに居ないと都合が悪いのです。
面が割れ、犯人が特定される事を恐れてのことです。
それさえ気を付ければ金縛りは掛けられないと踏んだのです。
問題なのは小林です。
この女は桃ニンジャーでいいでしょうが、
こいつは競技場にはおりません。
競技場の東側に面した自由通りの道路脇にいます。
それで、あの恐ろしい作戦を決行しようというのだ。
狂人が考える事、バグソー中将が裏で仕切っているだけあって、
とんでもないテロ作戦なのである。
それはともかく、気になるのは狂人四人の周りの人達である。
殆どの魂は四人ほどではないが、相当醜く汚れている。
恐らく、憑依霊や周りの邪霊が協力し合って、
狂人の側にくっ付けたということだろう。
当然、バグソー中将の指令だ。
魂の美しい人は守護霊の霊力が強いので、
不幸には巻き込まれないのである。
更には、守護神に守護天使からも強力な後押しを頂けるのである。
ただし、「 人間の99%の努力に対し、神は1%報いる!」
この原理は、全ての人間に平等に働きますので、肝に銘じてください。
《 よいか、うさぞう。
バグソーは決死の覚悟でこの作戦に挑んでいる。
奴等にすれば、無謀この上ないことだからじゃ。
この聖域以外であれば、まだ自由は利くが、
ここには魂が綺麗な者が多い為に守護霊の力も強い。
それに全体の団結力も増した為、邪霊が行動しにくい領域になった。
ただ、邪神軍にしてみれば開戦前に、一兵でも兵力を削いでおきたい。
その命令を断固遂行する。
でなければ自分の存在意義が無くなる。
失敗の後は激痛を伴う罰が待っているだけじゃしな。
夢も希望も無いのが邪霊界ということじゃ。ああ、空しいのお。》
アア、ヤダヤダ。 ころころ、くるくる、くるりんりん♪
「 どんな激痛を味わっても、死ねないし逃げ道も無いとすれば、
邪の道を極めようということしか考えなくなるのでしょうか?」
《 まあ、そういうことじゃ・・・
おお、こちらの作戦も始動するようじゃ。
よく見ておきなさい、新井の隣の男性をな・・・》
「 はい、畏まりました。」
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( 推奨BGM ) アキレス最期の戦い LED ZEPPELIN
https://www.youtube.com/watch?time_continue=6&v=p6S9oqJRclo
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新井の隣・・・この男性、魂は結構綺麗です。
年は六十位でしょうか?
角刈りに精悍な顔つき、風格すら漂っています。
只者でないことは一目瞭然。
そうか正神軍も下らん邪神軍の抵抗を迎え撃つ準備は
万端ということなのだ。
その偽善を見抜く鋭い眼が光った。
「 あの失礼ですが、どこか具合が悪いのですか?
先程から、苦しそうに見えますが。」
「 ・・・あ、いや、何でもないですよ。気にしないで下さい。」
そう言いながら、しきりに携帯の時計を気にしている。
暗がりでは、デジタル表示が丁度いいようです。
隣の男は続けた。
「 それから、もう一つ気になるのが、酒の臭いなんですよ。
あれほど聖者様が禁じられた事を、何故破ったりしたんです。
追放されかねないですよ。」
「 ああいや、俺は酒好きだから。
最後ぐらい、いいじゃないかよ。 勘弁してくれよ。」
イライラして毒付く新井だが、
周りでは酒を飲んだ奴がいると騒ぎ始めた。
後ろから中年女性の声がする。
「 あなた、掟を破るような人はここにはいられないんだよ。
まず酒を飲んだ事をお詫びしなくちゃ駄目よ。
私達もお詫びしてあげるから。 いいでしょう、みなさん。」
すると、顔を顰めている者が多い。
嫌そうな愚痴も聞こえる。
新井は冷や汗を拭いえがら、時を急かしていた。何故なら、
( 由利恵の奴、もたつきやがって早くしねえか バカヤロウ。
もう10分経ってるだろうが、クソッタレ ・・・ )
10分後、それは 変態ニンジャー下劣作戦 決行の時間なのだ。
小林が合図を出さないと始まらないのである。何しろ連絡が取れないのだ。
ただ、もう見え始めている。
邪神軍反撃開始の狼煙が ・・・
場内でも気付いて騒ぎ始めた。
間も無く、連続して爆発音が響いた。
テロニンジャーは、予め自由通りの20メートル程の区間に、
灯油を車に振り掛けた後、
それぞれの配置に着いたのだ。
10分あれば充分配置に着けるとの判断からだ。
着火役が小林という訳である。
奴等の思惑通り、集まった群衆は場外の爆発に気を取られている。
剣三郎は、皆に落ち着くよう指示を出した。
この時 ・・・ 愚かな作戦は決行されたのである。
爆発寸前の新井の心臓 は、
震える体を何とかリュックを持って壁際に走らせると、
急いで地面に置いたリュックの中から、
ペットボトルとマッチを取り出した。
慌ててペットボトルのキャップを取ったのはいいが、
その右手首をある男に絞り上げられ、
地面にうつ伏せに押し付けられた。
その男 ・・・ 先程、新井の隣にいた男だ。
彼は余裕で新井の背中に腰を下ろした。
「 おい貴様! このペットボトルの中身 ・ ・ ふん、灯油か。
私の名は結城秀人。お前のような悪党の顔と挙動は、
何百人と見てきたから直ぐ分かる。
場内で見掛けた時からお前を付けて隣に座ったということだ。
尻の財布も命を掛ける気など更々無い事の証拠。
もう神様からも見放されているだろう。
暫く、じっとしているんだな!
恐らくは七時までだ。覚悟しろぉ!」
遅ればせながら申し上げます。
この人、自警団の団員です。
だって、あの真っ赤なジャケットを着ているのでぇ・・・
知っておきながら人が悪いですね、ス~ミマセ~ン。
しっかしカッコイイわ~。
しかも、渡哲也さんに姿も声も似ているのであります。
彼は、新井の背中から腰を持ち上げ右手を離すと、
左手のペットボトルを静かに地面に置いて合掌した。
「 バッ、馬鹿な事やってんじゃねえぞ~。クソ野郎がぁ!」
逃げながら捨て台詞を吐いた青色獣人だが、
直ぐに動きが止まった。
とは言え、妙な事に壁際まで、ぎこちなく歩き ・・・・
壁を背にして両足を揃え、両手を真横に広げた ・・
ああっ、こりゃあ十字架だ!
は、磔ってことかぁ! うわっ、
バリバリバリッダダーーーン !!!
せっ、閃光と共に凄まじい爆音が響いた。
く う ぅっ ・・・ 落雷か?
あ、あまりの轟音に、私を含めた群集は、
悲鳴を上げ腰を抜かした。
《 こりゃ、しっかりせい。これは「 神の雷槍」じゃ。
ここの守護神「天照主日大神」様が、
祈りを聞き届けて落とされたのじゃ。
聖域の者に対して殺意を抱けばこうなる。
金縛りなどは生温いからな・・・
あの新井自身の魂も含め、何体もの憑依したバグソーの手下は、
無数の「 雷 撃 針 」を全身の霊・幽細胞に打ち込まれ、
三日間激痛にのたうつことになり、
邪神に使われることも無くなるのじゃ。》
オキノドクサマ~。コロコロ、コロコロ ・・・
こここ、こわ~~。
磔状態の新井の体は微動だにしない。
勿論、体から煙が上がっている、
なんだ、何処からか悲鳴が ゲッ 、
バリバリバリダッガーーーン ! ! !
また落ちたー!
反対側ぁーー! あっちは火の手も上がっている。
犠牲者が出たのか?
《 ちぃっ、三人やられたぞ。気の毒なことじゃ。》
まあまあ酷いですわ!
剣三郎が皆に上着を用いて消火するよう指示している。
それにしても、祈りを捧げるのが間に合わなかったのか。
我等は直ぐ北西側に向かった。
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(推奨BGM)
フレデリック・ショパン作曲 『 ノクターン 』(夜想曲集)
Nocturne Nr.13 C-moll Op.48 Nr.1 - Lento
マウリツィオ・ポリーニ (ピアノ)
https://www.youtube.com/watch?v=BPU_76vHDYs
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被害状況は、皆落ち着いて消火作業に当たった結果、
二人の火傷は致命傷には至らなかったが、一人は全身に火傷を負った。
運悪く灯油を浴びた量が多過ぎたようだ。
その上、火の手にも阻まれ助けようとする者が暫く近付けなかったのだ。
裏では邪霊同士で協力し合い、この状況を作り上げたということだ。
辺りには、奴等の笑い声が木霊している。
その笑う者を詰る守護霊達の言霊も聞こえる。
さぞかし悔しいだろう。
倒れた女性には、十才位の女の子が泣いて縋っている。
どうやら母子家庭のようだ。もう、母親の肉体の火は消えかかっている。
最期の力を振り絞り、火傷を免れた左目を娘に向けた。
「 ・・・ ゆ、由美、ごめんね ・・・・
り ・・ 離婚 して 苦しめて しまって ・・
全部 ・・ 私の 我がままを ・・・ 通した から なの ・・
それに、もう ・ ・ い、一緒に居てあげられ ・・ ない ・・
けれど、死んでも ここで ・・ 祈るから ・・・」
「 お母さん、私はお母さん一人が居てくれるだけでいいの。
私を一人にしないで、死なないで ・・
うう、お、お母さん、お母さん ・・・」
母親は焼け爛れた右手を、側に居た老婆に差し出した。
「 こ、この子を お願い します。
うう ・ ・ みなさん、どうか お願 い ・・ ・ グ ・ ・」
母親の悲痛なる叫びに皆応えた。
「 大丈夫、私達に任せなさい。何も心配はいらないんだよ。
私があばあちゃんになってあげるからね。」
「 俺が父親になってやるから心配するな。」 彼は、火傷を負った一人だ。
「 うえ、うう ・・・ あ、あたしは姉になるぅ。」
泣きながら、セーラー服を着た少女が叫んだ。
「 私は母親になるわよ。」
彼女は火傷したもう一人だ。側に夫と子供が二人いる。
「 ぼく、おとうとになるよ。」 かわいい幼子が名乗り出た。良い子だ。
「 ・・ ・ あ あ 、ありが とう ・ ・ あ り が ・ ・ と ・ 」
激痛の体内の心は安らぎに満ち、
静かに魂と幽体は浮かび上がっていった。
まだその 「肉体」 と 「霊・幽体」 を繋いでいる
霊波線 という光線は、微かに見えている。
人は死後二十四時間、霊幽体と肉体は繋がっているということです。
「 お母さん、お母さん ・・・・」
叫び続ける少女の想いも、絶望感までには至っていない。
そのことが本人も不思議そうだ。
自分の周りが暖かい光で包まれる感覚がして、
流す涙の感情は悲しみから、
今まで味わったことのない幸福感に変わっていた。
( わたしは不幸じゃないんだ。
お母さんは幽霊になったけど、生きているんだ。
それに人類は皆家族だって聖者様が言ってた。
まだ信じられないけど、ここにいる人達は信じられる。
わたしは生きてゆける。
みんなと一緒に ・ ・ お母さん、わたしは大丈夫。
きっと三日間がんばるから、心配しないで一緒に祈ってね。 )
そんな少女の心に、暖かで柔らかな手の温もりと愛の言霊が、
幾つも幾つも触れては沁みてゆく ・・・
全ては神の愛、人類愛に目覚めたからこそ、
二人の母子が救われたのである。
暫く辺りは悲しみに包まれていましたが、
次第にその感情が怒りと使命感に変わり轟々と燃えて来た。
負けてなるものかと、目付きがまるで違っている。
あまりの気迫と神気に、
周りにウジャウジャ居た浮遊霊は居たたまれず離れて行った。
憑依霊にしても、神に開眼した魂に憑いているのが苦しいのだろう。
苦悶の表情の霊が、
あちこちで体から抜け出ようと必死でもがいている。
まるで、光の泉に溺れまいとしているかのようだ。
ところで、気になっておられるでしょうから申し上げますが、
こちらで放火テロを行った者は誰か ・・・
それは木下です。
奴なら、ほら、壁際の邪魔にならない所で磔処刑され、
さっきまでカエルの串焼きのように炎が上がっておりましたが、
今ようやく消えました。
もう一つ、私も気になることがございます。
志田と高木の行方です。
うっかりしていまして、二人の姿を見失ってしまったのです。
この二人も、予定では同時に放火テロを行う手筈でした。
ところが、示し合わせた訳でもないのにやる気は無かった。
それは何故か?
とにかく怖いので、
まずは二人にやらせて様子を見るという腹だったのです。
何しろ得体の知れない恐ろしい敵が相手なのですから ・・・
それで、とんでもなく不利なことが分かり、恐れをなし、
人知れず外に逃げたということでしょうが、
「 あ~、申し訳ございません、三十郎様。
奴等は恐らく、外で女と合流しているのではないかと思われますので、
お連れ頂きたいのですが ・・・」
《 あのなぁ、うさぞうよ。
たかだか四、五箇所の状況を常に把握出来んでどうする。
視力は人並みとしてもじゃ。
場所は確認済みなのだから、
意識と霊眼を集中しておれば分からぬ筈はない。
わしはこの場に居ながらにして、外の事も把握できる。
壁などの物質は霊視の障害にはならんのだからな。
ほれ、見るが良い。
こそこそと、志田の奴が場外に出て、
街路樹に引っ掛けて隠していた刀を身に付けている。
高木は志田の後を追っている。》
フフ、チュ~イリョク。 フンフンコロコロ♪ フンコロコロ♪
「 これは意識が足りず、面目次第も御座いません。
・・・ 集中すれば微かに見えます。」
《 だろう。まあ良いわ、では行くとしよう。》
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( 推奨BGM ) 幻 惑 されて レッド・ツェッペリン
Dazed and Confused
https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=t1HaKfkMBmk
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クズ共に気付かれぬよう競技場の壁の中から辺りを見渡すと、
奴の姿を視認出来ました。
志田は街路樹に背をもたれ掛けて、
路上の先の何かを冷たく見つめている。
そこから少し離れた場所 ・・・
炎上する車群を背に、小林の姿が見えた。
ああ ・・・ 憐れなことに下半身に火傷を負ったようだ。
爆発時の飛火でも浴びたのだろう。
火は消えているが、自慢の素足は無残に焼け爛れていた。
激痛に身悶え涙するのは痛みからだけではなく、
勿論二度と戻らぬ美しい肌に対する絶望感からである。
彼女の濃い化粧が、涙でぐちゃぐちゃになり、
脳裏には女友達や志田に笑われている姿が見える。
その思念に割って入って来たのは、
地面から伝うブーツの靴音である。
その憎々しい音霊から感じ取れるのは、
醜く嘲笑うかのような邪念だ。
その雑音は直に止まった。
・・ ガツッ、ザザッ ・・・
「 ざま~ねえな。ケッ、きったなくなっちまってよう。」
女は醜い言霊に耐えながら、涙で汚れた顔をゆっくり上げた。
見えたのは腕組みをし、薄ら笑いで冷ややかに見下し、
炎に揺らめき鈍く光る志田の細い目だ ・・・
彼女はある事を瞬時に悟った。
「 ・・ ・・・ あ、あたしを殺すのね。」
「 へっ、物分りのいいメス豚ちゃん だねえ。
ケッ、俺が足フェチなの知ってるだろ。
それがこの様だ!
触りたくも見たくもねえよ、もう ・・・
お前より具合のいい女体は、いくらでもあるんだぜェ~。
ヘヘッ、どう斬って欲しい? その願いだけは聞いてやる。」
・・・ クズ め。
「 首を ・・・ 一瞬でお願い。」
絶望 ・・ 果てのない地獄に行くんだという思念。
底知れぬ恐怖 ・・・ 震えは止まらない。
「 もう遅い、もう遅い、もう遅い ・・・・・」 何度も呟いた。
そう言いながら上体を起こすと、
頭を下げ長い髪をどけて ・・・
奴に首を差し出した。
知らぬ間に抜刀された妖刀に、
狂乱の炎と獣人の冷たい目が写し出された。
その刃文が笑っているかのように見えるのが、
・・ あまりに不気味だ。
刀の棟で肩をトントン 叩きながら、志田が醜い口を開いた。
「 さ~て、あのおっさんが失敗した首の皮一枚で斬るってェ見本を、
見せてやろうじゃあねえかぁ!」
志田は刃先を、揺らめく炎に映し出された頚椎の影の谷間に当て、
振り上げて一閃、
「 お~りゃあ~っ!」 と、斬り込み様、直ぐに刀を持ち上げた。
彼女の首は ・・皮一枚で繋がりながら、
ゴッと、鈍い音を立てて地面にうつ伏した。
憐れな小林の意識は、まだ頭部にはある。
激痛の中、恨めしそうに志田を睨んだが奴は気付かない。
どういうつもりか、周りのバグソー配下の雑魚共が、
スタンディングオベーションで喝采を浴びせている。
・・・ 馬鹿共め。
「 やったぞ~っ! ・・・ やっぱりすげえや俺。
あ~でも、公儀介錯人の口 はねえか?
ヘッ、子連れ でもねえしな。」
すると、後ろから パチパチパチ と、拍手が聞こえる。
「 いや~、御見事だよ志田君、動 く な ・・ アゥ? 」
言い終わらぬうち、
志田は後ろ向きのまま迷わず己の左後方に走り出し、
振り向きながら両手を大きく開いて飛び上がった直後、
体を瞬時に丸めた。
面食らった高木は、
急いで左脇に挟んだ 拳銃 を右手に持ち変え、
慌てて一発発射したが、凡そ見当違いの空を切った。
もうその間に魔獣の体と邪刀は、
地を這う風のように高木の足元に迫り、
二発目を放とうとする高木の 邪脳 からの 電令 を、
右腕ごと断ち切った。
「 つ え あ ー ー っ!!!」 「 あ ぐぅ ・・ ・」
二人の対照的な言霊が響いている間に、
ガッ、ドッ と いう音が冷たい地面に落ち、
直に高木の両膝と左手が続いた。
ボトボト という音霊は 血の滝壺 に注がれている。
「 あがっ、ああ ・・・ ぐう ・・」
激痛が全身を貫き、脳神経は破裂しそうである。
辛うじて意識を保つ高木の背中に、
奴は ニヤニヤ しながら邪刀に纏わり付いた
ドス黒い血 を擦 り拭っている。
「 何だよ、汚い血がなかなか取れねえじゃねえか。
いい加減にしてくれよなぁ。ケッ、無っ様だねえ。」
「 ・・ ・ あ ぐっ 、う う ・・ なあ、志田よぉ ・ ・」
「 ああ、言いたい事は分かるぜェ。
知っての通り、俺の後ろに目は付いてはいねえ。
ただ、あんたの行動は始めから読んでいたって事だ ・・・・
ほら、以前 トカレフ を暴力団から手に入れたって時に、
試し撃ちに皆と夜中、山に行ったっけ。
あん時は嬉しそうだったねェ。
そんな大事な物は、
俺達に内緒で持ち歩いていても可笑しくはねェ、そうだろ。
こんな時は特にだ。内緒で持って何をするのか?
それは、いざとなれば邪魔者を消すのに使う。
俺はあんたの弱みを少なからず持っているしな。
だから、俺に銃口を向けて近付いたのはいいが俺の背後を取り、
余裕が出来たので拍手なんぞをしてしまった。ギヒッ。」
「 ・・・・・。」
「 なんだ、グウ の音も出ねえか?
ヘッ ・・・ そんでな、都合の良い事に拍手の音が、
あんたとのある程度の位置と距離を教えてくれた。
意表をつかせて一秒、飛び上がっては体を丸め、
狙いを付けずらくして二秒ってとこか。
おまけに抜刀する必要も無かった。
それにしても、あんた焦り過ぎだぜ ・・・
つまりは、邪神の女神が俺に微笑んだってことだよ。
俺って今日は特に冴えてるぜ。
ただ、如何せん刺激って奴は、直ぐ無くなるのが欠点だよなぁ。
楽しいが幸せって感じでもねえし ・ ・
なあ、その腕いてえだろ。」
「 ・・ う、聞いてどうする?・・・
所詮、俺達の行く道は邪道だが、
先に地獄があるのは分かっている。
そこでは、槍や針で突付かれるか、
聖者が言うような火炙りにされるのか?・・・
お、お前も見たろ。 新井や木下は公開処刑されたよ。
鼻からやる気は無かったが、やらなくて良かった。
金縛りなんて嘘じゃねえかよ!
はは、いずれにしても永遠の苦痛が待っている ・・
この腕の激痛もまだ増しかもしれんぞぉ ・・・
怖いねえホント。 死より怖い事があるとは、ぐぐぅ ・・」
そう言いながら、地べたで横になった。
「 なあ、おっさんよお。
こんな時しか本音で話せないっていうのは、
悲しい事だよなあ。
はは、こうなったら激痛を快感に変える他ねえな。
マゾの訓練やってけば良かったけど、おせえかなあ。」
「 ははは、お前らしい発想だが、
サディストのお前には無理だろう。
もういいから ・・ うう、さっぱりやってくれ。」
高木は起き上がり、首の上に トントン と手刀を当てた。
「 ええ? 面倒だなそんなもの。
また血で汚れちまうじゃねえか。
これでも俺はこの刀、大事にしてるんだぜ。
幸いまだ刃こぼれは無いからいいけどよ。
それに出血多量で直に死ねるだろ、世話を焼かせんなよ・・・
そうだ、あんたの刀とトカちゃん貰ってくぜ。それと財布よこしな。
こんな時は現金だ。ATMは荒らされて使い物になんねえし ・・・」
「 ・・ ・ なんだよ勝手に持ってけ。
フン、地獄の閻魔様に賄賂でもやるつもりか?」
「 そんな勿体無い事するかよ ・・・
全く、いやんなるほど同じこと考えていやがったとはな。」
志田は高木の財布から現金だけ抜き取り、
刀は自分の刀と揃えて背負って胸で紐を縛り、
トカレフはジャケットの内ポケットに入れ、
溜息をつきながら歩き出した。
「 お~い、俺は先に ・・はあ、金髪ねえちゃんをはべらせて ・・・
地獄の五右衛門風呂に浸かって、待ってるぜェ!」
「 飛びっきりグラマーな姉ちゃんを用意しとけよ~!」
志田は振り向きもせず、
止めて置いたバイクのタンクに描かれたエンジェルを愛撫した ・・・
・・・ 今日のおまえは痺れるほどイケテルぜ ・・・
などと脳裏で呟いている。
ニヤリ と笑いシートに跨ると、
妖気を纏った鋼鉄の美獣の心臓に火を入れた。
ドブルッ、ドブルン、ドブルッドッドッドッドッ ・・・
奴は内ポケットから、細巻の葉巻を取り出すと、
ジッポで火を付け一服した。
「 はあ~あ、取りあえずは神の光玉とやらから出るしかねえな。
しっかし、おっかねえ正神軍に勝てんのかねえ。
ほんと小便ちびるかと思ったぜ ・・・
今は六時前か、俺、邪神軍に入隊でもしてえよ。
お~い、悪魔か邪神さんよ~お、聞いてるか~い♪
俺が加勢してやるっから~あ、いつで~も言って~えくれよなぁ♪
俺が入れば百人力~い、いや~あ千人力だぜ~え♪
ラ~ララァーーイ♪ ララッ、ラッ ・・・ は っ は は ・・」
カツ、ダルン、ズドドドドロロロロローーー
あいつ、邪神軍入隊済みで、バグソー隊長宿してるんだし、
既に最前線に送り込まれているんだけど、
そんなこと知る由もありません。
そういや小隊は崩壊か?
これから、バグソーがどう動くのか?
アンドラスタから罰を受けるのではないかと思います。
何れにしても、志田は邪道を貫くようです。
「 放って置いて宜しいですか?」
《・・・ん? 構わん、もう用は無い・・・ヤレヤレじゃな。》
アア~ア・・・マダカナ、マナカナ~フンフン♪
「 結局は、バグソーの作戦は失敗ということでしょうか?」
《 大失敗じゃな。こちらは広い意味で誰も失ってはいない。
逆に奴等の兵は、あのテロリスト四名の本人と、
その憑依霊を拘束することが出来た。
そればかりか、この聖域全体の炎の闘志に油を注いだようなものじゃ。
既に体力的な問題で数十人亡くなってはおるが、魂は健在じゃ。
ふふ、開戦前に気合も闘志も轟々と燃えて来て、
理想的になっておるわい。
他の光玉も多少の邪神軍の襲撃はあったが、
何とか被害は最小限に抑えられておる・・・
え~とだな、「 叡智晶 」を見てみようかな。
おっ、今入った情報によると、
日本全体の「神の光玉」内の総数は、
現時点に於いて四千二百五十二万千百十六人。
世界全体では、二十五億八千二百十万三千飛んで十五人じゃ。
これは勿論、人だけの数じゃ。》
「 そそ、それは凄い人数で御座いますね。
しかし、七時には大分減ってしまうということでしょうが・・」
《 ただな、もう六時になるじゃろ。
みんなで餅を食べれば元気百倍で信仰心も向上するじゃろうて・・
ああ、神も苦労するわい。ところで今何時じゃ。》
「 はっ、五時五十九分を回っております。」
《 あ、う、産まれる産まれるぅ。》 コツコツ、コツッ、コツコツ・・・
《 何を言っておるのじゃあ。チカ殿わぁ。》
「 ああ何か、お、お腹が、うう、産まれるって、
ま、まさか私が何かを産むので御座いますか?
男なのに、チカチュウ様ぁ!」
・・・ ピヨピヨ、ピヨピヨ ・・・ ぶうぅぅ~~~っ !!!
《 キャッキャ、産まれた~~! わたくしの雛ですわ。》
・・・ んなななななあぁぁ~~
気が遠くなってきたぁ ・・・ 気絶したい。
《・・・あ、あのねェ・・・わしも気絶したい。》
ちなみに、介錯とは何ぞや?
こちらを参照してください。
介錯 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/介錯
ついでに、刀の部分名称はこちらから ・・・
日本刀
https://www.bing.com/images/search?q=%E5%88%80+%E9%83%A8%E5%88%86%E5%90%8D%E7%A7%B0&qpvt=%E5%88%80+%E9%83%A8%E5%88%86%E5%90%8D%E7%A7%B0&FORM=IGRE
えええ~~~、ちょっとした修羅場をお送りしました。
いや~~、わたくしのお腹から、
何かの雛が産まれるなど思ってもみませんでした。
次回、その雛が大活躍というか大暴れ致します。
それから、皆さんお待ちかね、木に生る餅の御登場であります。
乞う御期待!
このお話は、全宇宙全次元とそれ以外の時空を描いていますので、
何でもありなのです。
あたくし作者=この小説の創造主たる特権によります。ほほほほ~~!
やりたいほ~~だい!楽しい~~!
ただ、最善なるスピリチュアルガイドと御相談しながらなのです。
そりゃ、ルールを無視してはならんでしょう!
では最高の晩秋に敬意を表し、この曲を ・・・
I Need To Be In Love (青春の輝き) / CARPENTERS
https://www.youtube.com/watch?time_continue=8&v=a5NE1BzPq2g
旅に出たくなりました? 例の旅番組の挿入歌ですよね!
秋から冬への移り変わり ・・・
蜂や蝶達、それに花とも暫しの分かれです。さみしい~~!
でも高地の野鳥は餌を求めて低地に飛来してくるので、
それは楽しみの一つです。
自然観察、特にバードウォッチングが趣味の私にとって、
冬の落葉樹の枝に野鳥が止まっている姿は、双眼鏡や肉眼でも視認しやすく、
絶好の季節なのです。
あの高音の野鳥のさえずりに魅了されている方は
大勢いらっしゃるでしょう!
それに冬の星座達には待ち焦がれていました。
私の故郷、シリウスも深夜には拝むことができます。
プレアデス星団もオリオン座も美しく輝いています。
あ、下のイラストにある 「 すばる 」が、
プレアデス星団ということです。念の為。
その星達を見る度、望郷の念に駆られるのです。
あなたは如何でしょう?




