《 序章 》 〈 第十四話 〉 湖上の鬼雲
修正完了! 2018、12、16 シンゾウ
(作者時間) 二〇〇九年 三月十七日 午後十一時
この年月日と時間は、この小説作者本来の時間軸です。
つまり執筆当初の時間なのです。
小説完成までは、一日約8時間以上を掛け、1年半掛かりました。
試行錯誤の日々だったのです。
その当時、私は心臓手術の地獄から生還しましたが、仕事もできず、
生活保護を受けながら悶々とした日々を送っていました。
この小説の構想は既に20年を経過しておりましたが、
ある日、ふとそのことを思い出し、
一念発起して執筆活動を始めたのでした。
私は文才など全く無く、というより長い文章を書くなど大の苦手でした。
更に努力自体が嫌いだったので、
想像の世界で構想を楽しんでいた当初とは大違いで苦難の連続でした。
ただ私は、神様に命を救って頂いた感謝報恩の一心だったのです。
ですから、あらゆる努力を致しました。
しかし、その苦労して完成させた小説を一度封印致しました。
何故かと言えば、その後のネットでの情報、
特に K さん からのスピリチュアルな情報と、小説内に詰め込んだ
私の知識とが、あまりに違った為、封印したのでした。
そんな経緯がありましたが、現在私の宇宙観と信仰観が
揺るぎないものとなり、内容も書き換えましたので、
ネットで公表しようと決意した次第です。
そんなこんなで、今後もよろしくお願い致します。
《キャラクター&キャスト》
山神 大山津見神・・・・・・・・・・・ 境 正〇
(日本全山を統括する偉大なる神、
現在は十和田湖 「神の光玉」 の守護神)
十和田湖の聖者 / 木戸 十三 ・・・ 安〇 寛
一等空曹 / 北村 昭久 ・・・ 西〇 徳〇
一等空士 / 坂本真樹夫 ・・・ 佐藤 隆〇
( 推奨BGM )フェリクス・メンデルスゾーン作曲
序曲 (フィンガルの洞窟) 作品二十六
カラヤン&ベルリン・フィル
https://www.youtube.com/watch?v=WoJGuDjoGtc
==================================
二〇XX 年十二月十八日(木) 15:30
カウントダウン ( 87:30 )
ここは十和田湖上空三千メートル。
快晴の空に聖者木戸は両手を広げ、光の十字架、灯台となりました。
体の正面は南を向いている。
霊峰富士上空に「神の光輪」が出現する
ということが関係しているからでしょう。
その木戸に対し、ミカエル様は龍体のお姿のままで、
こうおっしゃいました。
《 木戸よ、私は次の任務に向かう。
これからは思念波のみの交信となるが、案ずるな。
この領域には既に、大山津見神様がお出ましである。
御挨拶を忘れるでないぞ ・・・
ふん、蚊トンボが来たようだが心配はない。
「神の光輪」 が熟成されるまでは、かなりの時間を要する筈である。
汝は、一瞬の油断も許さず神の光玉の同志達に愛の波動を送り続けるのだ。
よいか、これから邪神軍の攻勢は激しくなるが、恐れるな。
それに伴い、汝の見える範囲で数百万の人間が裁かれていくが、
目を背けるでないぞ。
これは汝に与えられた、神に昇華する為の試練なのだ。
他人の痛み苦しみを自分の事のように感じることが出来れば、
神の嘆き悲しみや怒りも分かろうというものだ。
我等神は、常に人間の哀れな死に様を見てきた。
そして何より神を侮辱し利用しては唾を吐き掛ける行為を見せ付けられ、
我慢と怒りは既に現界に達しているのだが、
主神様は ・・・ もう暫く待て、かわいそうだ。
様子を見よ ・・・ と仰せられ、今日まで裁きの日を延ばして来られたのだ。
この大いなる主神様の愛を、
この三日間で思い知り、魂に刻み付けるのだ。
しかと、しかと申し渡したぞぉぉ ・・・ 》
ミカエル様の龍体の御目からは、滝のように涙が滴り落ちていた。
その涙は霧雨となり、太陽の光に反射して美しい虹を映し出した。
木戸は、遠ざかるミカエル様に向かって叫んだ。
「 ミカエル様ぁーー、私は、主神様の大愛をこの魂に刻み付け、
必ずや、必ずや使命を遂行致しまするぅぅ ーー
・・・ ちっ、蚊トンボとはあれの事か ・・・」
ドルココロロロォォ ーー・・ ドコココルルルルゥゥ ーー・・・
空には乾いた音が響いて来た。
どうやら邪神の刺客が現れたようだ。
あの方角からだと三沢基地からの物だろう。
哀れな馬鹿共だ。
案の定、自衛隊のヘリは突然発生した
濃い鈍色の巨大な入道雲に行く手を阻まれた。
その雲は縦長で、引いて見るとまるで身長数千メートルの鬼の姿だ。
さて、自衛隊の迷彩塗装のヘリ。
機種は、ん~、どうでしょう?
何しに来たのか? 偵察の類か? 乗員二名。
とりあえず、お二人の会話に耳を傾けてみるとしますかねェ ・・・
一等空曹 「・・・あ~あ、クリスマス間近だってのに、
この調子じゃあ正月まで仕事だぜ。
ふざけてるねぇ、俺もう神社にお参りなんかしてやんねえよ。
それと幕僚長から極秘指令があったって誰か噂してたけど、
あれ気になるなあ・・・」
一等空士 「 何でも、アメリカ軍は既に日本に向けて
海軍を動かしたそうですから、
きっとそれに付随したことでしょうが・・・
私は影のボスが動いたんじゃないかと思っているんですよ。
ほら、御存知でしょう、あの ・・・」
一等空曹 「 ああ分かるぜ。クラウドだろう。
名前しか知らない影のドンだ。
奴は自分の部下を世界の政財界の
中枢に潜り込ませているってことだ。
当然アメリカの大統領も動かせるだろう。
もし奴が動いたのであれば、超緊急事態ってことだ。
しかし、信じられるかぁ、
総理が首相官邸内で雷に打たれて死んだって。
ホント、あの聖者とかいう奴が宣言してから三分丁度でさ。
笑えるのが、自分の時計でカウントダウンしていた矢先に、
閃光と爆音が同時に響いた直後に丸焦げになったそうだ。
周りにいた奴らは笑えんだろうがな。
建物には傷一つ付けず、遺体を中心に、十字の形の焦げ後が
カーペットに残ったなんてさあ、
十字じゃあなくてバッテンじゃないのかな。
まあ、惚けた政権運営するからバチが当たったんだよ。
三ヶ月の短命政権かあ、惨めだねェ。
それに、のらりくらり野党の攻撃をかわす、
のらくろ政権とか言われて、古過ぎるだろって、ばははは・・・」
一等空士 「 全く、神様のバチは分かりますが、何でもその時、
官邸の上空に円盤型の雲があったっていうから、
宇宙人の仕業じゃあないかって、側近どもにしても馬鹿ですよ。
それに世界中で似たような聖者が出たと言って騒いでいるから
人間に化けた宇宙人が侵略しようとしてるんじゃないか?
とかいうのは、 ん~~、ちょっと信じたくなって来ちゃったなぁ。」
一等空曹 「 何でだよ。」
一等空士 「 考えてもみて下さいよ。神の光玉とかいう境界線の光も
衛星から確認できたらしいし、私もその怪しい光を確認しましたし、
さっきも双眼鏡で見えたのは確かに人のような十字の光で
フライングヒューマノイドみたいだし ・・・
彼等はテレパシーを駆使して、神と称して超科学で地球を侵略する。
ついでに人間を操り奴隷にする。
邪魔する人間は皆殺し。だとすると俺達やばくないですか?
さっきから、冬なのに入道雲が出て、
おまけに、ゴロゴロいってるじゃないですか。
きっと、気象をコントロールして・・・」
えェー、ここまで見事にこじ付けられると、呆れてものが言えません。
それじゃあ宇宙戦争だが、質がまるで違うでしょうに・・・
ただ、それが邪神軍の正神軍に対する苦肉の策とすれば、
分からなくもない。
敵対するのが神では、人間の戦意が喪失してしまうが、
神と見せかけた宇宙人とすれば、
狂信的な宗教団体や無信仰者を取り込むことが可能となる。
正神軍の先制パンチが、よほど効いたのだろう。
焦って辻褄合わせの対抗策を即席で作ったということだ。
まあ、神よりは宇宙人のほうがまだ信じ易い。
それに奇跡も超科学に置き換えれば、
なあ~んだ、ということになり聖者も偽善者になる。
そう考えると、あながち馬鹿げた策とは言えない。
こういった猿知恵を働かせるのは、邪神軍の専売特許だが、
レベルが低い事は否めない。甚だ見苦しい。
さっさと降伏しろと言いたい。
さて、ヘリのお二人には危険が迫っていますが、
この巨大な鬼型の雲である事は、
近過ぎて気付いていないようです。
そして、大山津見神様の怒髪天を衝く怒りも・・・
一等空曹 「 まさかとは思うが、
この空域を離脱したほうが良さそうじゃないか?
お前の推理が正しければ、俺達人間は圧倒的に不利だぜ。
ん? なな・・・・?
やばい、テールローターが故障している。
そっ、操縦桿が効かないぞ! おいっ ・・・」
一等空士 「 えっ、そんな。でも上昇してるじゃないですか?
どど、どうなってるんだ~!」
はあ~、それもその筈。
テールローターとか言うヘリコプターの尾っぽの部分を、
巨大な大山様の右手の人差し指と親指で
摘まんで持ち上げているのだから ・・・
いやはや蚊トンボとはねェ、捕まっちゃった訳だ。
雷鳴は轟き強風が吹き荒れても、ヘリは煽られもせず静かに上昇する。
実に不気味だ。
二人は怯えて抱き合っている。
心拍数は急上昇し、血圧も上がっているだろう。
血の気は失せ、恐怖で顔が引き攣っている。
哀れだ。もう助かる術は無いだろう。
彼等には、お詫びするという考えは無いようだ。
その時、ヘリの向きが変化してきた。
彼らが騒いでいる。
何を見たのか?
それは大山様の左手だった。
掌の高さは数百メートルはあろうかと思われる。
その手の指は、親指が真下で上には四本の指が覆い被さるような状態。
まるで、彼等のヘリを掴もうとしているかのようだ。
彼等が恐怖に慄いているのは、
その開いた指先から発せられている稲妻に他ならない。
上四本の指先から下の親指目掛け、
絶え間なく稲妻の閃光が放たれているのだ。
彼等は必死で基地に助けを求めているようだ。
お気の毒ですがお別れです。私はこの空域から離れます。
間も無く大山様の憤怒の言霊が私の魂に響きました。
《 去れぇーい、下郎共ぉ、五指閃雷 ぃぃーー!! 》
そう叫ばれると、死の領域にヘリは飲み込まれ、
一瞬で爆発し砕け散りました。
大山様はその掌を素早く閉じられ、ヘリの残骸は拳の中に納められました。
大山様はその拳を、ゆっくり地上の空き地の上まで運ばれ、
拳を開かれると残骸はボトボトと雪面に落ちました ・・・
その雪面には、ヘリの残骸の中に佇む彼等の幽霊の姿があります。
気の毒に、血だらけで絶叫しています。無理もありません。
爆発時に全身が切り刻まれたのですから。
魂と一体化した霊体、幽体を残し、肉体だけ砕け散ったのです。
肉体により痛みが緩和されていたものが、
肉体を脱ぐとその感覚は数倍に増すとのことです。
本来、肉体という魂の拘束具から開放されれば、
一瞬で霊力が復活し自由に羽ばたけるものを ・・・
何とも哀れなことです ・・・




