~絶品~
~前話あらすじ~
旅支度の前に急遽、腹ごしらえをすることになった2人。
でもやっぱりミカンはピンチに愛されてて?
(ごはん回です。)
「どうしたミカン!」
悲鳴を聞きつけて咄嗟に駆けてきたユズが見たもの。
それは大漁に蠢くネズミの群れに埋もれたミカンだった。
そう。大漁だった。
「ミカン!こっちへ走れ!」ユズが信じられないほどの声量で叫ぶ。
「ハンタウイルス肺症候群(有効的な治療法ナシ!)・・・ワイル病・・・ペスト・・・鼠咬症(いずれも治療には抗生物質が必要不可欠!)・・・。」
「ネズミさんに咬まれるのはだめぇぇぇぇっ!!!」
細菌学で学んだことが頭の中をグルグル駆ける。ミカンも平野をグルグル駆ける。
「よく頑張った!」先程まで何やらブツブツ唱えてたユズがニヤリと口角を上げた。
「フレイム!!」
眼前に展開される業火。後に広がるは焼け野原。
凶暴なネズミがキューキューと声を上げこんがりと焼けてゆく。
「・・・。」絶句である。指から出してたアレはなんだったのだ。この世界の魔法とはここまで強大なのか。
「今夜はご馳走だな、ミカン!でもどうしてそんなにモンスターに好かれるんだ?美味そうな匂いでもするのか?」ユズがこちらを見てニヤニヤしている。心配などカケラほどもしてくれないようだった。
「ご馳走って・・・ネズミさんを食べるの・・・?けど、病気とか細菌が……いやでも熱処理?う~ん。」
「何言ってるかわからないが。この辺じゃみんな食べてるし、スゲー美味いぞ。」
「そこまで言うなら。」ミカンは逡巡を振り払い思い切って食べることにした。実の所、こんがり香ばしい肉の焼けた匂いにお腹が空いて仕方なかった。身体は正直だ。
ユズはハーブのような香辛料をこんがりネズミ肉にふりかけミカンにずいと差し出した。
「粗末なものだが食べてみな。」
「・・・はい。」ミカンは覚悟を決めた。決めたからには揺らがぬ内に食べてしまおう。と、かぶりつく。
「~~~~~~っ!!!」
腰が抜けるほど美味だった。肉感は鶏肉のようで、ひと噛みごとに肉汁が沁みだしてくる。香辛料が上手く臭みを消しているらしく全く癖はなく、脂もたっぷりのっていた。
「美味いだろ?」ミカンの倍以上のスピードでユズの横にはネズミの食べ殻が積み上げられてゆく。
「1匹の食べられる肉の量が少ないから、こんなに大漁に捕れたのは凄いことだぞ!2人では食べきれないから売って旅の資金にしよう!」
確かにミカンが食べた量をはるかに凌駕するこんがりネズミの量だった。
空腹を満たしたミカンたちは残ったネズミを売り捌き、ひと財産を得た。
そうして旅の準備は着々と済んでゆくのだった。
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