~帰郷~
~前話あらすじ~
火ノ国につきました。
「ここが火ノ国だ。まずはウチまで案内するよ。」
ユズの家は中央の城から少し離れた郊外にあった。
「ウチは狩人の家系だから都市には住まないんだ。こうして森の近くに家を建てているけど大きい狩りの時は何ヶ月も家には戻らず森で暮らすんだ。」
「俺は短剣も魔法も使うが、親父たちは短剣しか使わない。効率悪いだろ?魔法を使えば簡単に狩れるのに伝統、伝統ってうるさいんだ。」
「さ、着いたぞ。かーちゃん、とーちゃん帰ったぞー!息子のユズだぞ!」
ユズの声を聞いてどうみても屈強そうな父親と柔和な母親が出てきた。素敵な家族に見えた。
あら?こちらの方は?母親がニコニコしてユズに問う。
「そうだった、こいつはミカン。大癒術師様で俺の命の恩人なんだ。」
「自己紹介が遅れました。ミカンです。癒術・・・とかよくわからないんですけどそれを知るために旅をしています。命の恩人だなんてやめてよ・・・」横目でユズを見やる。
あら、そうなのユズ。素敵な方を見つけてきたのね、フフ。
母親は何かを言い含めたような優しい目で私たちを交互に見る。歳頃の子を持つ母親はどうしてこんなに恋愛に積極的になるのだろうか。探せばきっと論文で発表されているに違いない。
「とりあえず今日はウチに泊まって行きなよ。部屋も余ってるしいいだろ?」
いいのよいいのよ、ゆっくりしていってね。と、さらに口角をあげ笑みがこぼれる母親が答えた。
なぜ父親は腕を組んで頷いているだけなんだろう・・・寡黙な方なのかな・・・。
「占い師の所へは明日行こうミカンも疲れているだろ?」
「うん。私もうへとへとだしお腹もぺこぺこなの。身体がブドウ糖を求めているわ。うぅ、ケーキ、クッキー、チョコ、アイスクリーム…甘い物が食べたいわ・・・。」
「甘い物?そんな高級なもの食べれるわけないだろう!やっぱりミカンはどこかの国の大癒術師だったんだな。」
「えっ。この世界の砂糖って高級品なの・・・。」確かに19世紀末までは砂糖は高級品だったと歴史の先生が話していた気がする。
ごめんねぇ、ウチにはそんな高級なものは置いてないのよ。けど料理には自信があるの。今日はパパが捕ってきたウサギ肉のシチューよ。
「やった!この時期のウサギは丸々肥ってて美味いんだよ!」ユズがガッツポーズをしてみせた。
「「「「いただきまーす!」」」」
「んー!美味しい!」ウサギ肉の入ったクリームシチューは食べたことのない味だったがとても美味しかった。だがそれよりも目を見張るものがあった。それは今でいうウサギ肉の香草焼きみたいなものだった。
「料理水準のレベルが高すぎる・・・。看護師やめて料理人目指そうかな・・・。」
「いやいやミカンさん!?癒術師がどれだけ凄い方か分かっていますか!?」ユズが驚いた顔でいう。
「え、どれくらい凄いの?」確か看護師の総数は130万人程だった気がする。
「この国に癒術師は・・・いない。」
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