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68話 イスラフェル計画

 女王並びに司令長官と、ドラーギ並びにジェロームの両伯爵との盛大な喧嘩に対して、仲介者は現われなかった。

 それはハルトが、両家に(くみ)すれば同じ目に遭わせると脅したからでもあるが、ユーナとハルトに翻意を促せる親族が居なかったからでもある。

 第二次ディーテ星域会戦においてハルトは両親と兄を失い、父方のヒイラギ男爵と母方のメレンデス男爵も戦死している。それはユーナも同様で、両親と祖父のタカミヤ男爵が戦死した。

 そのため元侯爵達が仲介者を立てて翻意を促そうにも、仲介できそうな親族が居なかったのだ。

 カルネウス侯爵家くらい懇意であればハルトと話し合いが出来るが、カルネウス侯爵家は遺伝子提供による優越を侵害された立場であり、今回は元侯爵達が仲介を頼める対象ではなかった。

 タクラーム公爵が名を列挙した2名の王子の祖父であるオルネラス侯爵と、クラウディアの祖父であるコースフェルト公爵は、仲介が可能そうな数少ない貴族だったのである。

 そのうちハルト寄りではないオルネラス侯爵に話を持ち込んだドラーギ、ジェロームの両伯爵は、仲介を素気無く断られた。


「この身は確かに前第一王妃の父で、2人の王子の祖父でもあるが、現女王陛下とは血縁関係が無いことも知っていよう。義理の祖父ですら無い。王家の関係者として仲介を期待しているのであれば、力にはなれぬ」


 オルネラスが危惧したのは、激怒したユーナと両伯爵との間を取り持とうとして、結果的にユーナとオルネラスの孫である王子達の対立を招き、事態が王家の争いに発展してしまうことだった。

 現状であれば、黙っていても王子2人のうち片方が国王となって、もう片方はストラーニ公爵となる。少なくともユーナは、そのように公言している。

 だがオルネラスが両伯爵家を庇えば、「王子の祖父という立場を用いて利敵行為に加担するオルネラス系の両王子は、どちらも家臣の専横を許してしまうために王位継承には相応しくない」と理由付けされて、精霊の加護を外された上で、王位をユーナの子供に移されてしまう危険すらあった。

 精霊結晶を使えなくされた事を証明して損害賠償を求めようにも、ハルトの宣言で付いていた精霊が精霊界に還ったという事象の因果関係を立証できない。

 仮に証明出来たところで、販売価格が50万ロデのC級結晶を使えなくされた損害に対する賠償金は、50万ロデに多少色を付けた程度にしかならない。そのような端金と引き替えに精霊結晶を使えなくされては堪らないのだ。

 虎の尾を踏んで、本気で怒った虎達に噛み殺される危険を冒してまで両伯爵を庇い立てする理由は、オルネラスには特に思い当たらなかった。


「すまぬがオルネラス侯爵家は、この度の争いで中立となるつもりだ。元王太子であったグラシアン殿下と、第三王子であらせられた前王陛下との争いの二の舞は、国体を損なう」


 2人の元侯爵がオルネラス侯爵に拒否されていた頃、ハルトは王宮として使っているアマカワ侯爵邸への両伯爵家の出入りを全面的に禁止した上で、司令長官の仕事を行っていた。

 現在は戦時中で、司令長官のハルトには相応の仕事があるのだ。

 司令長官が仕事に専念していると、元サラマンダー計画部長で、計画の成功により昇進した企画局長のエルマー・シュミット中将から、新たな計画という仕事が持ち込まれた。


「語弊がございました。正しくは、1年10ヵ月前にサラマンダー計画と共に提出いたしまして、政治判断によって見送られた大型戦闘艇の計画です」


 提案したのはシュミット自身で、却下したのは前王ヴァルフレートと前参謀長官オルティスだった。

 現在運用されているサラマンダーは、マクリール星域会戦で電磁パルス砲に蹂躙された反省を元に開発された新戦闘艇だ。

 旧戦闘艇は、全長120メートル、全幅60メートル、全高40メートル、体積28万8000立方メートル。

 新戦闘艇は、全長150メートル、全幅75メートル、全高50メートル、体積56万2500立方メートル。

 戦力が旧型の1.6倍になりながらも、既存の空母に搭載可能だったサラマンダーは、瞬く間に旧型を駆逐して現代の標準仕様となった。

 そのサラマンダー計画と同時に提案されたのが、イスラフェル計画であった。


 イスラフェルとは、「燃えているもの」という意味を持つ天使の名前で、終末の訪れを知らせるラッパを吹いて大火を引き起こし、最後の審判を司る。

 音楽の天使でもあるイスラフェルは、すべての創造物の中でもっとも美しい顔を持つ。また昼と夜に3回ずつ地獄を見回ることも仕事だそうだ。地獄で苦しむ人間を見ると泣き出して、地上を涙の大洪水で洗い流す。

 すなわち大型戦闘艇イスラフェルは、王国民の力で国家を守る美しい姿を象徴しており、サラマンダー以上に強烈な炎を司り、戦場という地獄を飛び回り、膨大な数で敵を洗い流す艦艇だ。

 そのように命名の理由を説明したシュミットに対して、ハルトは名前が軍の士気に影響することは理解しつつも、要点をまとめるように要求した。


「大型戦闘艇の性能と、なぜ却下されたのかと、却下されたものを再び持ち込んだ理由を述べたまえ」

「性能はこちらであります」


 シュミットから送られたデータを眺めたハルトは、イスラフェルが政治判断で却下された理由を察して納得した。

 大型戦闘艇は、全長600メートル、全幅100メートル、全高75メートル、体積450万立方メートル。

 C級結晶は魔力加算が810であり、全長がサラマンダーの4倍で、体積は8倍という大型戦闘艇イスラフェルを動かすことも容易である。

 なお星間航行が可能な補助艦も、イスラフェルと同じ全長600メートルだ。

 すなわち大型戦闘艇イスラフェルの導入は、魔力者の『星間航行に不可欠』という肩書きを外してしまう事を意味している。


 純軍事的に考えれば、非常に優れた機体だ。

 補助艦と同サイズであるため、魔素機関や推進機関、外壁やコーティングは丸ごと流用できる。主砲は砲艦から流用する計画だ。

 つまり大型戦闘艇イスラフェルは、全ての開発が不要な上に、補助艦の運用で実績があって、既存の軍艦造船所をそのまま活用できる。現在運用されている軍艦を使うために、直ぐにでも大量生産が可能なのだ。

 戦力評価はサラマンダーが0.08で、イスラフェルは5倍の0.4。

 乗組員150名の王国軍駆逐艦1隻と、搭乗員1名の大型戦闘艇イスラフェル2.5艇が互角。天華巡洋艦とは、イスラフェル15艇で互角。しかも補助艦は核融合弾対策を施しており、同サイズの大型戦闘艇も同じ対策を施せる。

 これほど優れた兵器を王国軍が導入できなかった理由について、ハルトは王国の貴族制度が危機に陥るためだろうと想像した。

 大型艦を動かせる貴族は無価値にこそならないが、600メートル級の輸送船1万隻で代替可能なため、領地を与える程の価値は無くなる。

 星間航行が出来ない規模のサラマンダーは採用しつつも、イスラフェルを採用して貴族制度にトドメを刺す決定までは下せなかったわけだ。


「性能と却下された理由は分かった。これは貴族を社会的に殺す兵器だな」


 ハルトが評価を下すと、シュミットは一部を肯定した。


「確かに以前までは、その危険がありました。ですが再び持ち込みましたのは、前提条件が変わったからであります」


 シュミットは、イスラフェルが必要となった理由から説明した。

 戦争している天華5国は、核融合弾で味方ごとサラマンダーを破壊する。そのため、核融合弾対策を行える補助艦サイズの大型戦闘艇が必要になった。

 サラマンダーが転移門から移動できるのであれば、イスラフェルも1つの星系防衛に留まらない活躍が期待できる。

 そして貴族制度の存続に関する懸念だが、肝心の星間航行を実現させられる精霊結晶を生み出しているのがハルトであるならば、ハルトが民間に売らなければ、それで貴族制度は維持出来る。

 あとは貴族の反発だけが問題だ。


「閣下は貴族側に配慮すべき立場でもあったでしょうが、今は徒党を組んで喧嘩を仕掛けられたという名分が立ちます。お前達が喧嘩を売ったから、こちらもイスラフェルを導入した。そのように仰られては、如何でしょうか。精霊結晶で逆に脅しを掛けた今の女王陛下と司令長官閣下は、徒党を組む貴族など怖くありますまい」


 シュミットの提案に、ハルトは暫く無言となって思考を巡らせた。

 貴族が喧嘩を売るなら、ハルトも国民が軍艦を動かせるようにする。

 貴族の協力が無くても自前でなんとか出来ると示せば、貴族側が協力を盾に脅しをかける手は封じられる。

 イスラフェルの導入は貴族の立場を弱めるが、ハルトは自身の子孫を好き勝手にしようと考える連中を保護する制度であれば、弱まっても一向に構わないと考えた。むしろ子孫の足枷となる制度であれば、壊すのが祖先の義務だとすら考える。

 貴族制度が壊れたところで、精霊結晶を独占するアマカワ家が潰れる事は無い。

 アマカワ家を潰したら精霊結晶や転移門が使えなくなるのだから、王国民は貴族制度を潰せても、アマカワだけは潰せない。

 ユーナの王権に頼らずとも、今のハルトにとって徒党を組む貴族が怖くないのは、シュミットが指摘した通りだった。


 イスラフェルを投入した場合、戦力評価がサラマンダーの5倍になるため、投入した戦場での戦死者は5分の1になる。

 ケルビエル要塞で入れ替えを行った場合、イスラフェルの体積が8倍であれば、サラマンダー900万艇が入っていた要塞の収容区画には、イスラフェル112万5000艇しか入らなくなる。

 機体数が8分の1になって、戦力評価が5倍になるのであれば、単純計算した要塞の戦力は8分の5になる。

 ただし8人の操縦者で最も技量の高い者を乗せるのであれば、旧連合と戦争時に採用した操縦者だけの戦闘部隊を作れる。

 王国暦441年に採用された彼らは3年以上の経験年数を持っており、旧連合の4星系会戦、天華との3星系会戦の合計7会戦を生き残った猛者達だ。

 技量は1人前どころか2人前で、エースパイロットや、戦果が明らかに異常な操縦者もゴロゴロいる。そんな猛者達を乗せれば、戦果は8分の5に下がるのではなく、8分の10を上回るだろう。

 ケルビエル要塞の駐留戦力は、天華の12万隻相当から、15万隻以上まで上昇する。そして戦死者は8分の1以下に減るはずだ。

 イスラフェルの操縦者に与える最初の階級は、サラマンダーの正規操縦者である少尉と、補助艦の艦長である大尉の中間である中尉が妥当だろう。そして戦果に対する特別手当も創設すべきだ。

 イスラフェルに切り替えることで余る操縦者達は、決して無駄にはならない。

 彼らには魔素機関を搭載した全長40メートルの制圧機を稼働させて、惑星制圧作戦や復興作業、星系内の開発作業に従事させれば良い。

 それでも余る人員は、C級結晶は与えずに引き続きサラマンダーを稼働させて、制圧機の高速移動や、転移門を繋いだ各星系の輸送作業にあたらせれば良い。

 大型戦闘艇イスラフェル導入によって、これから王国で生じる様々な展開に一通りの思考を廻らせたハルトは、企画を持ち込んだシュミット中将に告げた。


「本日中に女王陛下、軍政長官、参謀長官から許可を取って、正式に導入させる。貴官は本日付けで、イスラフェル計画部長を兼任する。造船所の建造ラインを入れ替えて、総力を挙げて生産させろ。陛下には、勅命の命令書を出して頂く」

「了解しました」

「イスラフェルによって大きな戦果が上がれば、卿を大将に推薦する。役職は、不在の副軍政長官辺りが良いだろうな。これからも頼むぞ」

「はっ、王国のために微力を尽くします」


 決断したハルトは直ぐに動いてユーナと2人の長官に許可を取って回り、行動から2時間後には必要な命令書を揃えてシュミットに転送した。

 改装した直後であったケルビエル要塞も、再び複合流体金属層を引き抜かれて、900万艇のサラマンダー用だった空間を、8倍の体積であるイスラフェル112万5000艇用に再改装された。

 無人化されているために作業員が文句を言わない多数の都市建造施設群が動き出して、ケルビエル要塞の内部を作り直していく。

 その間に次の5点が、ユーナとハルトの連名で発表された。


『全長600メートル級の大型戦闘艇イスラフェルを導入する』

『各星系の操縦者は、新型艇に切り替えで4000万人とする』

『必要なC級結晶は、首星の第二工場にてアマカワが生産する』

『余剰人員は、サラマンダーと制圧機の各種任務に振り分ける』

『降爵する貴族家は負担が大きいため、従軍義務と目標を外す』


 特定の伯爵2家ではなく、不特定の降爵した貴族家を対象としたのは、敵対して降爵する家の協力は全て不要だという意思表示だ。

 目標であったサラマンダーの操縦者1億人については、戦力評価が5倍に上がるイスラフェルの4000万人に代われば、戦力的にはサラマンダー1億艇の2倍になる。

 イスラフェル4000万艇は、開戦前の天華5国の総戦力よりも遥かに多い軍艦160万隻分と互角だ。

 大型戦闘艇4000万艇は過剰すぎる戦力で、半分の2000万艇ですら迎撃には事足りる。全貴族が一斉に協力しなくなっても、志願済みの王国民だけで、各星系を守り切れるだろう。

 また恒星間移動が可能な600メートル級の艦艇を動かすC級結晶をアマカワが作れると発表した事で、貴族が徒党を組んでも王国民は星間移動に困らない事まで示された。これによって貴族が居ないと困るという従来の主張は、全く通用しなくなった。

 これらの発表が、第2回諸侯会議でハルトが宣言した『敵対した家への全面戦争』の続きであるのは明らかだった。少なくとも諸侯は、そのように理解した。

 ハルトの追撃によって二度目の致命傷を負った両伯爵は、タクラーム公爵寄りの自分達とは関係が薄かったコースフェルト公爵に、やむを得ず仲立ちを依頼した。


「女王陛下を介した遺伝子提供の要請が、まさかここまで怒りを買うとは思っておりませんでした。要請は全面的に取り下げます。コースフェルト公には仲介をお願いしたく」

「アマカワ侯爵が婚姻外交を引き受ける代わりに、国内での遺伝子提供依頼は中断するようにと沙汰が下された件。深城が制圧されてもソン公爵夫人との婚姻関係は続いており、遅れ馳せながら勅命は生きていたのかと理解した次第です」


 不承不承と言った体で、通信越しに申し込んできた両伯爵に対したコースフェルトは、少しの間を置いてから口を開いた。


『私も魔力者を増やした方が良いのでは無いかと思い、実際に何人かの娘を薦め、アマカワ侯爵家の第二夫人に孫娘を送り込んだ経緯はある』


 両伯爵寄りの前置きが発せられて、仲立ちを申し込んだ両名の顔色がパッと明るくなった。


「おお、では!」

『だが当時の記録映像を見直したが、強要はしていなかった。多少の策は弄したが、選択権は相手に委ね、心情にも配慮して踏み越えてはならないラインも弁えていたようだ。今の女王陛下の心情に慮れば、徒党を組んで貴族の義務を果たしていないと責め立て、ソン公爵の遺伝子を分けろと言い立てるなど倫理的にできまい』


 再び硬い表情となった両名に、コースフェルトは先だって発表されたイスラフェルの話題を口にした。


『星間船と同規模の大型戦闘艇が導入される話は、耳にしているであろう。両家との争いを機に採用されたそうだな』

「……それが導入されれば、貴族制度そのものを損ないます」


 ジェロームが断言すると、コースフェルトも頷いて同意を示した。


『このたびの銃器を用いない内戦によって、王国の貴族制度には綻びが生じた。それでもあちらは、第二回諸侯会議で宣言したとおり、限度を超えた不当な扱いに対しては刺し違えてでも戦う気なのだろう』


 この争いが内戦の一種だと指摘したコースフェルトは、ハルト達の行動を予想してから言葉を切り、内戦の当事者となった両名を細目で眺めた。

 遺伝子提供を実現させると息巻いていた頃は両名に集っていた貴族達も、今では連鎖的な処罰を恐れて接触を断っている。

 そこへ追い打ちを掛けるイスラフェル計画の発表によって、女王ならびに司令長官との争いが身分制度にまで波及してしまい、今では恨みがましい目を向けるようになった。

 ジェローム伯爵令嬢テレーズとの婚約を続けると宣言したアテナ星系のシャレット侯爵令息レオンは、父親によって実家の貴族名簿から除籍され、卒業後の絶縁も発表されている。


『魔力者の保護制度がなくなって魔力者が居なくなれば、未解明の精霊結晶が無くなった時に取り返しが付かない。制度は残すべきだが…………両名とも、謝罪の遺書を残して自裁してみる手はどうだね』


 両伯爵は、コースフェルトに告げられた言葉の意味を一瞬理解しかねた。

 彼らは自裁という言葉が何を指しているかを脳で理解した後、その単語が発せられた意味までは理解しかねて、提案者に疑問の目を向けた。


『両名が謝罪と共に自裁して果てれば、アマカワ家の遺伝子に対する主導権争いは終わり、子孫に科された制約も解かれるかもしれぬであろう。内戦の終結は、両家のみならず、王国と貴族にとっても最良の道では無いかね』

「それが解除の条件なのですか」


 確認したドラーギに、コースフェルトは首を横に振って答えた。


『分からぬよ。だが両名が行った遺伝子要求への苛烈な回答であれば、両名の自裁という結末でまとまる。終わりを用意すれば、あちらも振り上げた拳を降ろし易かろう。その流れであれば、私もリスクは負うが、諸家のために骨を折っても良い』

「…………他の手は」


 押し黙ったドラーギに代わって、ジェロームは他の解決手段を求めた。

 コースフェルトは、再び「分からぬよ」と念を押す。


『先ほどの案は、私が両名の立場であれば採る手だ。各々が考えて結論を出されるがよかろう。ただし時間を置いても、両家は貴族制度にメスを入れるための出汁にされ続けるのでは無いかね。これは一般論だが、謝罪は早い方が良い』


 その後、概ねコースフェルトが示唆したとおりの展開となり、仲立ちをしたコースフェルトの顔を立てたハルトが両家に科した制約を解くと宣言して、王国で勃発した静かな内戦は終結した。

 一度採用されたイスラフェルの建造が止まることは無かったが、C級精霊に関しては、量産品は耐用期間が20年程度と発表されて、貴族制度の存続に配慮が示された。

 精霊の活動にはエネルギーが必要であり、契約者が魔力者であれば魔力で補えるが、非魔力者の場合は精霊結晶だけで補っており、生産時に各結晶へ割り振れるエネルギーには限界があると。

 戦闘艇用として操縦者に配っているC級結晶は無償であり、生産者がエネルギーを割り振れないと言っている以上、事実がどうであれ、タダで受け取る側は条件を受け入れるしかない。

 20年で契約精霊が外れてしまう操縦者達にも配慮が行われて、大量生産型C級結晶と、旧来のD級結晶は同時契約が可能だと発表されて、新たな混乱をもたらした。

 それでも防衛体制に関しては、ディーテとアテナの両星系を合わせて、第二次ディーテ星域会戦に比肩する戦闘艇の操縦者が集まっていった。

 かくして王国が視線の大半を内側に目を向けていた頃、ウンラン率いる天華侵攻軍50万隻がアテナ星系を襲撃したのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] 古い貴族だから自分達の上位者が権勢に執着していないのが理解できなかったんでしょうね。だから最期まで条件闘争にすら持ち込めなかった。 極端な言い方をすれば自己保身に先鋭化した独立愚連隊だから…
[一言] 早速本屋で予約してきました。 二巻以降も絶対出て欲しいです。 これからも応援しています。
[良い点] 奇襲するつもりで準備万端の場所に攻め込んできた天華。そしてイスラフェルの活躍は。続きが気になります。 [一言] Amazonから書籍を予約させていただきました。書籍もシリーズとして是非続い…
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