クリスマス・イブ
サンタなんていない
と耳を貸さない子供たち
サンタさんに手紙を書いて
プレセントを心待ちにする子供たち
そして
サンタすら知らずに
明日には死んでしまう子供たち
明日にはサンタクロースは
実在した存在に
あるいは実在しなかった存在に
なってしまうけれど
その境界線の今日 この瞬間だけは
世界に愛が 溢れていて
誰からも愛されない
と嘆く若者たち
甘すぎる言葉を交わし会って
頬を赤らめる若者たち
そして
誰かに恋をすることすら許されない
名前も知らない国で暮らす若者たち
明日には若者たちは
愛し合った存在に
あるいは愛し合えなかった存在に
なってしまうけれど
その境界線の今日 この瞬間だけは
世界に愛が 溢れていて
クリスマスイブすら忘れてしまった
と惚ける 老人たち
ひっそりと蝋燭を立てて 冬の訪れを
静かに祝う 老人たち
そして
病室で看取られもせずに
息を引き取る老人たち
明日にはクリスマスは祝った日に
あるいは祝えなかった日に
なってしまうけれど
その境界線の今日 この瞬間だけは
世界に愛が 溢れていて
僕は一人
暑いくらい暖房の効いた部屋から
今日も昨日も一昨日も
そして
明日もさして変わらぬ
星空を窓ガラス越しに見上げ
静寂の中 祈りを捧げる
今日生まれた幸せが
あるいは今日生まれなかった幸せが
どうか 不幸と呼ばれませんように