二話 こんな夏なら別に遠ざかってくれてよかった
スローペースになりますがすいません。
「あらあらおやおや、こんなところに、どうして子供がいるのかな?」
突然声をかけられたことよりも、ジュースを寸止めされたことに不快感を感じながら嫌々振り返ってみると、そこには病院服に身を包んだ少女が車椅子に腰掛けていた。
「誰?」
俺は間違ったことを言ったつもりはなかった。知らない人に声をかけられ、誰?ってきかないなんてないだろう。
しかし、当の本人は呆れたような顔をしていたからどうにも納得がいかない。
「やめてくれよ、質問に質問で返すのは。だからもう一度いいかい?なんでここにいるのかな?」
少しイラっとしたのがばれないようになんとか心を落ち着けて、ギプスで固定された左腕を見せつけるようにして語った。
「見てわかんない?骨折して検査入院。だから君のことも」
「ははは、そーかいそーかい。理由を聞いてもいいのかな?」
再びイラっとしたことをなんとかこらえて無表情のまま、事の顛末を語った。
「.....というわけだ。」
思い出したくもない話を覚えている限りの記憶を辿り思い出す。ぐいっと炭酸飲料を仰ぎ、このくだらない話に区切りをつける。彼女に目を向けると、俯いて肩を震わせていた。
「君さ、自分から聞いたんだからちゃんと」
「ははは、これは傑作だね!男のロマンってやつかい!いひひひ、腹がよじれちゃうよ!昨日読んだギャグ漫画なんかよりは十分面白かったよ!」
もう関わりたくない。率直な感想。未だ腹を抱えて病院内であることを気にするでもなく大声で笑う彼女を無視して病室への帰路へ着く。
「ははは...って君!待ちたまえ!いいだろう、次は君の番だ。私のことも教えよう。こんなつまらない美少女のことでよかったらの話だが。」
言ってしまうのか自分で美少女と。絶対に聞きたくなんてないしこれ以上関わりたくもない。実際に自分の失敗を思い出し、今にもベットで布団をかぶって隠したいくらいに赤面しているというのに。
ただ、それでも彼女は御構い無しだ。
「私の名前は瀬見時雨。ウン万人に一人の大病を患っていてね、一週間後に死ぬんだ。よろしく。」
だから聞きたくなんてなかったんだ。