十五話 きっと掴んでみせるから
聖側の朝です。
女の子と手を繋いでいる。俺は笑っていて、彼女は少し泣きそうな顔をしていた。心が彼女の悲しみで満たされていくような気がしてとても辛かった。冷たい。互いの心が繋いだ手を介して伝わり合う。最早言葉なんていらない。
それでも俺は、君の言葉が欲しい。
♢
「...朝か。」
へんな夢を見た。悪夢とは違うけれど、それはひどく苦しいものだった。見たくないものを見たかのような。
「四日目か。今日を入れてあと四日。俺ができることって本当に何かあんのかなぁ。」
時雨と友達になってその人となりを知った。言葉を交わすことで世界の見方を知った。ただ、どれだけ時間をかけようとその心を奥底まで見通すことはできなかった。
それでも諦めない。なんだってするって決めたから。
「聖ぃー!お友達が来てるわよ!」
「今行くよ。」
ちらっと時計を見るとまだ午前八時。約束までにはまだ時間がある。今日は予定も入れていないが、誰かは予想ができた。
「聖、退院おめっとさん。つーわけで遊びに行こうぜ!」
「やっぱりお前らか。」
俺が骨を折った時に助けを呼んでくれたあいつら。一番仲の良い友達たちだ。
「また川行こうぜ!海のがいいか!お前は泳げないけど、ずっと病院で暇してただろ?」
「悪いな、やんなきゃいけないことがあるんだ。」
こいつらのおかげでいいことを思いついた。ただ楽しめばいい。この世界の魅力を時雨に伝えよう。そうすれば、きっとまた行きたいって、生きたいって思ってくれる。
約束の時間まであと二時間。それが聖にとって何よりも長い二時間だった。