第3.5話 前編 次の犠牲者
今話は睦月がゲームに入るのと同じくらい時間の話です
第3.5話 前編 次の犠牲者
夏場の昼間 締め切った部屋の中で PCに向かう青年が一人
彼の名前はゆうと Eternalゲーマーだ
彼は前作で常にランキング15〜20位だった
大した才能はないが ただ運が良かった
ドロップに イベントに そして仲間に恵まれた彼は
ゲームを出来ることが幸せに感じていた
今度は どんな出会いがあるんだろうな
彼は 純粋に楽しみにしていた Eternal-2というゲームを そこで起きる出来事を
そして 先の事を考えているうちに…
キャラメイクを 終えた
ゆうと「っ!」
なぜか 意識が飛んでいたのか 視界がチカチカする 頭痛が激しい
あまりの痛みに一瞬頭を抑える そして 違和感に気づく
髪が 自分の長さじゃない
目を少しずつ慣らし
視界を安定させる…すると
ゆうと「…ここは…」
見慣れない 噴水のある広場と 石レンガが敷き詰めてある道 あまり日本では見かけない形の家が並ぶ街が目の前に広がっていた
ゆうとも どこかの誰かと一緒で 一瞬でその光景の意味を把握し 胸が熱くなった
彼も ゲームを心から楽しむゲーマーだからだ
現状を一通り把握した彼は 前と同じで仲間を探すために 酒場へと来た
酒場には様々な人が集まる カウンターで酒に酔い 冷めた対応のNPCに愚痴を言うごつい男や ギャンブルを嗜む男 女好きそうなバンダナ男 誰を誘うか?
おそらく俺は酒男は苦手だな ギャンブル君も多分あまり話が合わないだろう バンダナは…女に夢中だ
ならばいっそ俺がここで誘われるのを待つ
という発想に至る
ゆうと「すまない 店員さん いちごミルク 一杯くれないか」
店員NPC「かしこまりました」
ふぅ…と椅子に腰掛けて一息つく
一応自分のステータスを見てみるが 予想通りレベル1の貧相なキャラだった
これから仲間を作るにしても まずはレベルを上げるべきか?それとも装備を…と 考えてみる
?「やぁ 隣 いいかい?」
ゆうと「ん? ああ どうぞ」
考え事で気を取られていて 気がつかなかったが 隣には優しい面影の男が立っていた
男は
「失礼」
と言って座った
男「僕は サイスって言うんだ」
注文を済ました彼は 急に名乗り始めた
ゆうと「俺は …フウだ」
思わず本名を名乗りそうになったが ハッとなりキャラネームを答える
サイス「君 仲間を探してるんだろう? そんな雰囲気だ 僕も探しているんだ どうかな 僕と一緒にパーティ組まないか?」
思ってたよりも早いお誘いに 少し驚く
だが なんというか ゆうとはサイスに対して妙な違和感を感じていた
ゆうと「ちょっと 考えさせてくれないか?」
サイス「ん? まあ いいよ またここにいるから 明日は返事してくれると嬉しいよ」
ゆうと「すまない」
サイス「じゃあ 今日は失礼するよ」
サイスは頼んだドリンクを中途半端に残したまま 席を立った
俺も 今日はどこかの宿屋で寝るか… そう思っていた矢先
後ろから
?「おい てめぇ」
と 怒った声が聞こえる
それは あの女好きそうなバンダナ男が サイスに向かって発した声であった
店が一瞬で沈黙に包まれ 音楽だけが虚しく鳴っていた
バンダナ男「てめぇ 今日こそは逃がさねぇぞ」
サイス「な…なんのことだ?」
サイスは急な怒鳴り声にやや焦った様子で答える
バンダナ男「すっとぼけてんじゃねーぞ! 今日こそケリつけてやる!」
そしてバンダナ男は急に何もない空間から光のエフェクトと共に銃を取り出し サイスに銃口を向ける
サイス「ひぃっ!」
客「キャアアアアアア!!!!」
店がパニックに陥る
なんだ このリアルでもありそうなパニックは
というか NPCもこういう場合逃げようとするんだな
などと呑気に考え込んでいたゆうとは 無意識に 席を立った
ゆうと「おい 止めとけバンダナ」
バンダナ男「あ?オメー誰だよ」
ゆうと「サイスさん 逃げていいですよ」
サイス「あ ありがたい!」
そしてサイスは出口に向かって走り バンダナ男は
バンダナ男「逃がすかよ!」
といい素早く銃口を向ける…が
ガキン!
ゆうと「だから止めろって」
俺はすかさず剣を取り出し 射撃を妨害する
バンダナ男「…お前…覚悟は?」
ゆうと「やりあうつもりなんてないけど やるなら外でやろうぜ」
レベル1の癖に一丁前にカッコつけてみる
バンダナ男「そうだな…てめぇが先に出な!」
バキィッ!
バンダナの足が勢いよく俺の体を蹴った
その瞬間 腹部に凄まじい痛みが響いた
そして俺はドアを突き破って外に蹴り飛ばされた
ゆうと「…はっ…いい蹴りしてるじゃないか」
痛みがあることは驚いたが 喧嘩には慣れている 素早く体制を立て直し 入り口から出てくるバンダナを見る
バンダナ「んじゃっ パパッとヤらせて貰うぜ」
バンダナが不敵な笑みを浮かべ 銃を構える
初戦闘がPVPとはな