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『ゆっかとまなみ』

作者: rumina

大学への提出物の最終版です。興味のある方は是非ご覧ください。

 「お姫様ごっこ」とは、お姫様や王子様などの登場人物になりきって演技をするという遊びである。発案者は、後の名女優、松本優花である。今では普通の遊びだが、この時代には優花とその親友の近藤まなみしか知らなかったのである。優花は物心ついた時から母親や周囲の人間に美人ねえといつも言われていた。褒められるのが当たり前になっていた優花は、非常に傲慢な性格に育った。それ故なのか、まなみに対し、いつも上から目線で接していた。優しいまなみはそんな優花を嫌うどころかゆっかという愛称で慕っており、いつも優花の後を付いて行っていた。


「まなみはおうじさまやくね」

「えー、また、ゆっかがおひめさまやくなん?ずるいー!たまにはかわってよ!」

「だって、ゆっかにはこうじくんがいるもん。だから、ずーっとおひめさまなの」

と、優花は自慢げに言った。

「そりゃ、そうだけど……。でも、あたしだっておひめさまやくやりたいよう」

「なら、しょうぶしましょ。いまからあそこのきまではしってかったら、まなみをおひめさまにしてあげてもいいわよ」

 優花は幼稚園一、足が速い女の子だ。それなのに自分の得意なことを競争材料にするとは、最初から優花の勝ちが決まっているようなものだ。だが、まなみはどうしてもお姫様役をやりたかったので、

「わかった!ぜったい、かつもん!」

と、意気込んだ。

「いくわよ!それっ!」

 優花の号令で二人は、傍の桜の木までダッシュで走った。結局、まなみが負けてしまったが、結局いつもと同じようにお姫様は優花がやることになった。それから、話し合いで、お姫様以外の役は、まなみが担当することになった。


「このガラスのくつがあうひめはだれかいるか?」

「このふたりしかいませんわ」

「はいらないわ!」

「おはきなさい!」

「いたいわ」

「じゃあ、もう、ほかにこのいえにはこのくつがはいるおんなのこはいませんね」

「います!ここにいます!ここにかたわれのくつももっています!」

「ああ、プリンセス!さがしていたのはあなただったのだね!」

「おおじさま!ええ、わたしです!」

「こうして、しあわせにふたりはおしろでくらすのでした」


「あー、つかれたー」

「わたしもつかれちゃった。」

 優花とまなみは遊び疲れて木の下で大の字になって寝転がった。澄みきった青い空に白い雲が浮かんでいる。

「そら、きれいだね」

と、優花が笑顔で言った。ふと、まなみが優花に

「そうだね。あのくも、なんかゆっかみたい!あはは!」

と言い出した。すると、優花は、

「しつれいね!あたし、あんなにふとってないわよ!」

と、むっとして言った。そんな優花を宥めるように、優花の髪型に似ているだけだとまなみがいうと、優花は納得した様子で、今度はまなみの雲を見つけたと言った。

「え、どこどこ?」

と、まなみは雲を探し始めた。

「あの、わたしのくものとなりのくも」

と優花は言った。しかし、まなみはどれかわからなかったので、わからないと返答すると優花は

「あれよ。あれ。みえないならいいわ」

というとまたむっとした。優花の機嫌を戻したくて、まなみは夢中で自分の雲を探した。探した効果があり、まなみはついに閃いて、

「あ、わかった!」

と言い放った。その答えに優花は嫌味っぽく、

「わかるのがおそい!」

と返した。その後、二人はふわふわと流れゆく雲をぼんやりと静かに見ていた。その沈黙を破るように優花が、顔を赤らめて、こう言った。

「まなみ、わたし、そうだんがあるの」

「なに?」

「こうじくんがね、おとなになったらわたしとけっこんしてくれるっていったの!」

 こうじくんというのは、まなみと優花と同じ幼稚園の園児である。彼は優花が新しくあやめ組になったときに一目ぼれをした男の子で、本名は高坂浩司という。優花の浩司への猛烈なアタックで、最近二人は交際したばかりであった。そこからの唐突な結婚話だった。

「け、けっこん?それって、どういういみ?」

とまなみは聞いた。そんなまなみを優花は馬鹿にしたように、

「まなみー、けっこんもしらないの?けっこんっていうのはね、いっしょにおんなじおうちにすむことだよ!ほんとこどもね!」

と言った。この優花の言葉でまなみは始めて結婚の意味を知った。

「しょうらい、こうじくんとけっこんするのがいまからたのしみ!」

「たのしみだねえ」


 トントントン。この音でまなみは、はっと我に返った。来たのは優花だった。

「まなみ?そろそろ、準備はいい?もうすぐ、時間よ」

もうそんな時間かとまなみは驚いた。

「何ぼーっとしてるのよ。全く、今日の主役はまなみなんだからしっかりしてよ!」

「そうだね。今ね、私たちの昔の夢、見てたんだ」

とまなみがいうと優花はそうなのと言って笑った。その後、まなみは優花プロデュースの白い綺麗な花嫁衣裳で優花と共に式場に急いで向かった。式が終わり、祝杯のムードが続く中、優花はこう言った。

「あのまなみがこうじくんと結婚することになるとはねえ。人生わからないものだわ」

と。


 優花は本当なら、浩司と結婚するはずだった。優花は東京への修学旅行先でモデルにスカウトされ、そのまま成り行きで女優になった。持ち前の傲慢さを生かせる悪女役をたまたま監督に縁で貰い、そこから人気に火が付き、現在では旬の人気女優に特集されるまでになった。幸せそうに見える優花だが、私生活は仕事の忙しさで荒れに荒れ、ついには、浩司の前でのぶりっ子にも限界が来てしまい、浩司の目の前でも悪態を付くようになってしまった。その姿を見てしまった浩司はこんな人だとは思わなかったと言い別れを告げた。そんな浩司に優花は男なんて星の数ほどいるから貴方はもういらないと言い、強気だった。だが、内心はひどく落ち込んでいた。そんな優花を見ていたまなみが心配して、優花は不器用な性格だから本心と真逆のことを言ってしまうんよと浩司に説明し、よりを戻すように度々説得した。だが、二人の復縁は叶わなかった。浩司は懸命に説得するまなみの親友への優しさに惚れてしまい、まなみに告白した。親友の手前一回は断ったまなみだが、度重なる告白に折れて、交際を開始し、今回の結婚という運びとなったのだった。一方、渦中の優花は浩司がまなみに二度目の告白をする前にさっさと新しい男性を見繕っていたので、ずっと、親友のまなみを応援していたのだった。


この小説は自分の実体験を組み込んだ作品です。お姫様ごっこは妹が考え付いたものです。幼少期、よく妹と私で遊んでいました。

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