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黒猫図書館の掟 ~今日もいい天気です~  作者: と〜や
第一章

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13/42

十三の掟 クロ館長の言葉は絶対です。

20160818 全体的に手を入れています。

 ワタシたち三人を乗せた魔法陣は、王都の城門前に降り立ちました。地面に着いた途端に魔法陣は霧散してしまいます。


「クロード様、なぜ直接王宮につけないのですか? わたくしが同乗していますから、城の結界はすり抜けられるはずですのに」


 しかしクロ様は首を振ります。


「俺は王宮へは出入り禁止になっている。緊急とはいえ直接行こうとすれば撃ち落されてしまうだろうし、面倒なことになる」

「そうでしたか……ではご案内いたしますわね」


 キャリーさんが先頭に立って入都手続きをしてくれます。門番の方はキャリーさんのことを覚えていたようです。まあ、曲がりなりにも王宮付きの魔術師ですし、証もありますからすんなり手続きは通ったようです。ワタシとクロ様はキャリーさんの同行者、ということで許可されたそうです。

 渡されたカードを左手の甲に置くと、カードからふわっと光が出て、左手に吸収されていきました。何にも跡はついてないんですが、それで大手を振って街を歩けるのだとか。進んでますねぇ。すごいです。

 町中は飛行禁止、魔法禁止の場所が多いらしいです。が、許可証を持つ人だけは飛行可能だとか。キャリーさんは王宮付きですから当然許可証持ちですよね。


「どうされますか? ここから王宮の入り口までは大通りを通るしかありませんが、馬車を借りましょうか。わたくしは先に王宮に行って受け入れ体勢を整えますけれど」

「いや、これくらいの距離なら魔法陣なしでもあきちゃんを連れて飛べる。一緒に行こう」

「えっ……」


 キャリーさんは目を丸くしています。クロ様は右手の甲を見せて、紋章を光らせました。蔓のからまる羽のマークが赤く浮かび上がります。


「なぜか飛行許可証だけは取り消されてなくてね……」

「……わかりました、ではご一緒に」

「あきちゃん、俺の左側に立って、しっかり左手につかまってて」

「は、はいっ」


 まりーさんから預かった空のバスケットを落とさないように抱え込んで、クロ様の左手をぎゅっと握ります。

 ふわ、と風が吹いてキャリーさんが箒で浮き上がります。それに続いてクロ様はぽん、と地面を一回だけ蹴りました。

 あっという間に地面が離れて行きます。家も人も馬車も全部足の下に流れていきます。すごい速さで。おもわず変な声が出ちゃいました。


「あきちゃん、怖い? 怖かったら上を見て。足元は見ないで」

「い、いいえっ、だい、じょうぶで、すっ」


 魔法陣で飛んでた時は地面は揺れませんし怖くはなかったんですが、さすがに足の下がなにもないのは結構怖いです。いいえ、怖くはない、ですっ。がんばりますっ。

 どれぐらい飛んでたんでしょう。足元を見ないように一生懸命空ばかりを見てたので、足が着いたのに気が付かなくて、転んじゃいました。


「大丈夫? あきちゃん」

「は、はい。大丈夫です」


 キャリーさんもほぼ同時に到着です。すこし風の渦が巻いてますね。


「さすがはクロード様ですわね。では、こちらへどうぞ」


 キャリーさんは階段を上がっていきます。その時になってようやく気が付きました。王宮の真ん前ということは……お城ですよっ。

 ぐるっと首を巡らせると、至近距離でお城がそびえてます。後ろを見ると王宮の周りにはもうひとつ壁があるんですね。ワタシたちはそれも飛び越えて直接王宮の前まで来たんですねぇ。

 キャリーさんが入り口を守る衛士に何か言付けているようです。後ろを着いていこうとすると、クロ様がぐいと手を引っ張って制止してきます。


「あの、行かなくていいんですか?」


 しかし、クロ様は耳を少し倒し、しっぽも不安定に揺れてます。


「言っただろう、王宮は出入り禁止なんだ。このまま足を踏み入れる訳にはいかない。それに……あきちゃん。君もおそらくこのままでは王宮には入れない」

「えっと、なぜですか?」


 その答えは、予想外のところから降ってきました。

 キャリーさんの短い悲鳴が聞こえます。なんか……逃げてって言ってません?

 階段の上からわらわらと衛士たちが槍を持って出てきました。


「クロ館長」


 慌てすぎて呼び方間違えちゃいました。だって、このままだとあの槍に串刺しにされそうなんですよっ?

 ぐるりと囲まれてしまったら万事休すじゃないですかっ。

 するとクロさん、膝をついてワタシの目線に合わせてくれます。なんだか辛そうな顔です。そんな顔、しないでくださいよう。


「あきちゃん、ごめん。本当はまだここに連れてくるべきじゃなかった。でも、マリオン王子のためにはこれしか手がなかった。これから君は色々嫌な思いをするかもしれない。それでも、俺を信じて待っててくれ。アキラ・トールじゃなくて、あきちゃんとして」

「はい、クロ様。大丈夫です。信じて待ってますから」


 にっこりと笑ってクロ様にお返事します。クロ様は、ワタシの額に右手の肉球をぺたりとつけてくれました。クロ様の肉球、気持ちいいんですよね。冷たくて。

 きゃぁ、ほっぺと耳と唇もぺろりと舐められちゃいました! くすぐったいですようっ。

 気がつけば後ろになんだか偉そうな黒服の人が立ってました。クロ様も立ち上がります。


「クロード・クロッシュフォード。貴殿を王国への反逆罪で逮捕する。理由は……分かっておるな?」


 ――はんぎゃくざい? クロ様が何をしたっていうんですか? 黒猫図書館の館長してただけじゃないですかっ。キャリーさんのお願いで、ここに来ただけなのに。


 でも、ワタシの口が動きません。なんで? クロ様にすがりつきたいのに、手も足も動きません。

 なんで?

 クロ様、あっさりと縄を打たれて行ってしまいました。最後にちらっとワタシの方を見たのは気が付きましたけど。


「それにしても、よう御座いました。マリオン殿下が不明の時にアッシュネイト姫が見つかるとは」


 クロ様を逮捕した黒服の人がワタシの目の前に立ってます。膝を折り、ワタシの右手を持ち上げます。

 いやです、さわらないでください。目一杯抵抗したいんですが、体が動かないのです。

 それに、アッシュネイト姫って誰ですか?

 ワタシはあきちゃんです。黒猫図書館に勤めるあきちゃんですよ? 人違いも甚だしいですよ?


「ああ、これは魔法がかけられているのですね。後ほどゆっくり解除するといたしましょう。衛兵、姫をお運びせよ」


 硬直したままのワタシは、兵士に担がれて運ばれていきます。

 その途中で、やっぱり縄を打たれて抵抗してるキャリーさんが見えます。キャリーさん、泣きそうな顔でワタシの方を見ています。

 大丈夫です。クロ様が大丈夫って言ったんですから、安心してくださいね?

 それにしても、クロ様にさわられた額が少し冷たいです。

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