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十一の掟 魔女は入館お断りです

20160818)全体的に手を入れています

「マリオン王子はご存知ですわよね、クロード様」


 キャリーさん、立ったままのクロさんの方に向き直ります。


「そうなんですか?」

「クロード様はマリオン王子の名付け親で、幼い頃に魔法の家庭教師をなさっておいででした」

「えっ!」


 名付け親!

 このあたりでは、名付け親は実の親に次いで縁の深い存在です。子供の行く末を考えて、名付け親を選ぶのが一般的になっています。

 そうですね……たとえば、魔法使いの家系に生まれた子供は強い魔法使いに名付け親になってもらいます。騎士の家系なら勇猛な騎士、という感じにです。

 名をつけてもらうことで、名付け親からの加護が得られる、と考えるとわかりやすいでしょうか。


「当時は王宮付き魔術師のトップにいらっしゃった方ですもの。当然ですわ」


 となるとマリオン王子は魔法使いの将来を期待された方なんですね。


「もうずいぶん昔のことだよ。それに、直接の名付け親というわけでもないし、宮廷魔術師のトップだったというわけでもない。若かっただけだ。教育係だったのも短い間のことだし、家庭教師というわけでもない」


 苦笑しながらクロさんは耳の後ろをぽりぽりかいてます。


「謙遜なさらないでくださいませ。兄の年代の魔術師でトップだったのは間違いありませんし、クロード様が教育係になった短い間に、マリオン王子はメキメキと才覚を伸ばしたと伝えられております。今では同年代の魔法使いの家系の子たちをはるかに凌ぐ魔力をお持ちです。でも、それが魔女の耳に入ったようです」

「あの、すみません。魔女と魔法使いって、何が違うんでしょうか……」


 魔法を使うという意味合いでは同じ存在だとワタシは思っていたんですよね。なので、魔法を使うキャリーさんは魔女、と呼ぶのかと思っていたのですが。


「発生自体が違います。魔女は魔物、魔法使いは人間です。もちろん、人間が魔と契約して魔物に変ずることはございますけれど、それは魔女とは呼びませんわね」


 きつい目つきでキャリーさんは教えてくれました。うわー、すっごい睨まれてます。多分怒らせちゃいましたね……。そのくらい知っておけってことですよね、すみません……。


「それから、魔女は人間の使う魔法とは全く違う法則で力を使います。わたくし達魔法使いは、精霊と契約し、精霊を使役することで自然の力を利用します。ですが、魔女たちは、精霊どころか人間の持つ寿命さえ贄として、力を振るいます。魔女が不老不死だと言われるのは、人間の寿命を食らっているからだとも聞きます」


 それはなんというか、嫌な話を聞いてしまいました。幸い図書館の近くに魔女はいませんけれど、もし近くにいたりしたら、どうすればいいんでしょう……。


「魔女は人が強力な力を持つことを忌み嫌います。マリオン王子は時々、魔女ぐらい一人で倒せる、と豪語してらっしゃったそうなのです。それが彼女たちの耳に入ったのでしょう。魔女の逆鱗に触れてしまったマリオン王子は、ある朝、お目覚めになりませんでした」

「マリオン王子は今、何歳だったかな」


 クロさんが口を挟みます。


「クロード様が王宮を去られてから五年ですから、今年で十三になります」

「そうか。もうそんな年か。聡明な王子であったのだがな……」

「私が知るマリオン王子は……失礼ながら、鼻持ちならない自信家でございます。……王子の一番多感な時期に、なぜクロード様は王宮を去られたのですか?」

「図書館の館長に任命されたからだよ。それにあの時にはすでに教育係を離れていた」


 さらっとクロさんは答えます。でも、ひげが下に向いてます。きっと色々あったんだろうと思います。

 五年前、図書館ができた頃のことはワタシは知りません。多分、エディさんとタマさんあたりはご存知なんでしょうね。聞いたことはありませんけれど。


「ではなぜ、王宮付きの魔法使いの第一席を手放されたんですの? 図書館の館長になるため、ではありませんわよね?」

「それは……君のお父上か兄上に聞いてみるといい。フィッシャーズ卿はまだご存命だろう? 覚えておいでだと思う」

「……分かりました」


 クロさんの目、すごく寂しそうです。たぶん、キャリーさんも何か察したんでしょう。それ以上は聞きませんでした。

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