表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目指せ! 受験界の西横綱【京都大学】  作者: 明石竜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/9

第四話 謙一達、東大キャンパス視察に東京へ(前編)

「ただいまー」

 その日の夕方、謙一は帰宅途中に伸英宅に寄り今日配布されたプリント類と、学校近くのスーパーで買った抹茶シュークリームを届けてから自宅へ。リビングに向かうや否や、

「おっかえりー、謙一ぃ。これやるっ! 受け取れ」

秀樹爺ちゃんから突如、福沢諭吉の札束をぽんっと手渡された。

「えっ!」

 謙一はあっと驚く。

 ――三〇万円はあったのだ。

「謙一、今度の土曜にでもお友達も連れて東京へ行き、東大のキャンパスを視察して来い。京大のライバル校じゃから一見の価値はあるぞ。世間では東大ばかりが持て囃されておるが、僕は京大こそが日本一天才秀才の集う大学じゃと思っておる。理学部は特にな。なんといっても日本人初のノーベル賞受賞者、湯川秀樹を輩出したからのう。僕の名も湯川秀樹から付けられたのじゃ。振一郎は朝永振一郎、おまえの名は福井謙一から付けたのじゃぞ。三人とも全て京大卒のノーベル賞受賞者なのじゃ。ちなみに僕が生まれた当時は、湯川さんはまだノーベル賞を取っておらんかった。彼が取ったのは昭和二四年じゃからのう。ただ、当時から有名な物理学者で、ノーベル賞受賞はかなり期待されておったぞ」

 秀樹爺ちゃんが持論を捲くし立て、続けざまに名の由来をやや早口調で伝えてポンッと肩を叩いてくる。

「秀樹爺ちゃん、その話、もう百回くらいは聞いてるから。それより、この大金は、いったいどこから?」

 謙一は呆れ顔で質問した。

「振一郎の預金通帳から今日、勝手に下ろして来たのじゃ」

 秀樹爺ちゃんはきっぱりと言い張る。

「やっぱり。ダメだろ、それは」 

「まあ良いではないか。僕の自慢の一人息子なんだし。それにしても、振一郎のやつももう四六にもなったくせに、まだ年収九〇〇万くらいしかないのは残念じゃのう。京大を出ておればもっと高収入になれたかもしれんのに」

「それでも普通のサラリーマンよりはだいぶ多いだろ。それより秀樹爺ちゃん、その時って中間テスト直前になるんだけど」

「まあまあ謙一、高二のうちに東大を生で見るのはテスト勉強なんかよりもずっといい勉強になるぞ。どうせ中間テストの結果なんて当日一発勝負の入試には全く関係ないのじゃから。泊りがけで行ってついでに東京観光もして来たら良い。高級ホテルももうツインルームを二部屋は予約してある。もちろん、おまえと伸英ちゃんは同部屋じゃ!」

「ちょっ、ちょっと待て秀樹爺ちゃん」

 秀樹爺ちゃんにきりっとした表情で言われ、謙一はたじろぐ。

「ぜひ、子孫作りにも励んで来い」

 にやけ顔で、肩をポンポンッと叩かれた。

「……」

 謙一は迷惑顔。彼は自室に向かうと、さっそく伸英に携帯でこのことを伝える。

『謙一くん。今日はいろいろ迷惑かけてごめんね。プリントと、あと、私の大好きな抹茶味のシュークリームも届けてくれてありがとう。すごく嬉しかった♪』

 その前に、伸英からお礼を言われた。

「いやぁ、どういたしまして。体は、大丈夫?」

 謙一は少し照れてしまう。

『うん、おウチ帰った後もいっぱいおねんねしたからもう平気。体温も三六度八分まで下がってすっかり元気になったよ』

「そっか。それはよかったよ。あの、伸英ちゃん、今度の土曜、東京行かない?」

『東京!? やけに急だね』

「秀樹爺ちゃんからさっき、東大を見に行って来いって言われたんだ」

『行く、行く。私も絶対行くぅーっ!』

 伸英は快く誘いに乗ってくれた。声のトーンからとても嬉しがっている様子が窺えた。

 謙一は続いて貢にも連絡。

『もちろん行くぜ。アキバ巡りしたいからな』

 同じく参加する気満々。

『東京か。ボクも行くよん』

 久晃も同じ反応だった。彼への電話を切ってから五分ほど後、謙一の携帯に伸英から電話がかかってくる。

『真優子ちゃんと歩未ちゃんも東京旅行に参加するって』

「それじゃ、六人で行くことになるのか」

 この他いろいろ詳しい連絡を受け、

「――というわけで秀樹爺ちゃん。俺含めて六人で東京行くことになったんだ」

 電話を切ったあと謙一は、すぐさまリビングにいる秀樹爺ちゃんに報告しに行く。

「そうか。そりゃぁ良い! また振一郎の預金通帳から勝手に三〇万ほど」

「いやっ、参加費はあの子達が全額負担するからいいって」

「まあまあ。良いではないか」

 すると秀樹爺ちゃんは気前よく、追加メンバー分のホテルの予約もすぐにネットでしてくれたのであった。


       ※


「ついでに大相撲夏場所も見に行こう! チケット代は全部ワタシが負担するから」

 翌日学校にて、歩未はこんなことを提案して来た。

「相撲かぁ。今ちょうどやってるからなぁ。まあ、いいけど。予定に含めておくよ」

 謙一は快く引き受けてあげる。


同じ週、金曜日の帰りのホームルームにて、

「いよいよ二年生最初の中間テスト、一週間前になりました。この土日は皆さんしっかりテスト勉強に励まなきゃダメよ。あと、理系特進クラスでは皆さんが一年生の時みたいに教科書や問題集の丸暗記、一夜漬けで通用するような簡単な問題はどの教科もほとんど出さないからね。国立大二次試験レベルの問題もたくさん出しますよ」

 担任の西脇先生から中間テストの日程範囲表が配布され、こう告げられた。部活動も今日から禁止だ。

「こんな大事な時に東京なんかに遊びに行って、いいのかなぁ? 勉強道具も持っていかないと」

解散後、罪悪感に駆られ後ろめたい気分の謙一に対し、

「謙一殿、テストは来週の金曜からではないかぁ。まだまだ時間はたっぷりあるぜ」

「ケンちゃん、この土日はめいっぱい遊んで、来週から本気でテスト勉強頑張ればいいじゃない」

 貢と歩未は遊ぶ気満々だった。

 このあと、伸英が代表して生徒指導部長の金剛寺先生に旅行届を提出。旅行目的を観光ではなく東大見学としたことで、テスト前にも関わらずすんなり認めてもらえた。

帰りに謙一が代表して学校最寄り駅みどりの窓口で六人分の、東京駅までの在来線と新幹線の往復乗車券(学割適用)を購入し、参加者の五人に渡したのであった。

 

      ※


 五月十五日、土曜日。朝七時頃、柏岡宅玄関先。

「謙一、伸ちゃんとのお泊りデート、思いっきり楽しんで来なさいよ」

「姉ちゃん、デートじゃないから。貢や久晃、新免さんと坂東さんもいるし、修学旅行の班行動のようなものだから」

「東京旅行、とっても楽しみだね謙一くん」

「うん。今日は東京の方も天気いいみたいだね」

謙一はデニムのジーパンに黒地に白の英字がプリントされた長袖Tシャツ、伸英はココア色のワンピース、二人は先週土曜日に一緒にお出かけした時と同じく、それほど派手ではない私服を身に纏って聡美に見送られながら家を出て、集合場所に指定したJR芦屋駅前へと向かって歩いていく。

今朝は秀樹爺ちゃん、まだ寝ていたため謙一は特製メニューを振舞われずに済んだ。そうでなくとも、秀樹爺ちゃんも土日は特製メニュー作りをお休みすることがわりと良くあるのだ。


「おっはよう! ノブエちゃん、ケンちゃん」

「おはようございます伸英さんに謙一さん。今日は半袖でもじゅうぶんなくらい暑いですね。東京都心は二八℃まで上がるみたいですよ」

 謙一と伸英が辿り着いた時には、すでに歩未と真優子が待っていた。

「おはよう」

 この間の遠足の時と同じように謙一は若干緊張気味に、

「おはよう、歩未ちゃんも真優子ちゃんも、かわいいお洋服だね」

 伸英は穏やかな声と爽やかな表情で挨拶を返す。

歩未は青色のサロペット、真優子は鶯色のサマーニットにデニムのホットパンツという私服スタイルだった。

「貢と久晃は、やっぱりまだ来てないのか」

「まだ約束の時間まで五分以上あるからね」

 謙一の呟きに、伸英が突っ込む。

 構内で、謙一が周りをきょろきょろと見渡していたその時、彼の携帯の着信音が鳴った。

「貢か。遅れて来るのかな?」

 番号を確認するとこう呟いて、通話ボタンを押した。

『やぁ謙一殿、今どこおるん? おいら、新大阪駅におるねんけど』

 すると貢からいきなり陽気な声で話しかけられる。

『ボクも同じだよーん』

 久晃の声も聞こえた。

「おいおい、もう行ってたのか。昨日、集合場所はJR芦屋駅って言っただろ」

 謙一はちょっぴり呆れる。

『知ってたぜ。でもさぁ、おいら、その、女子となるべく一緒に動きたくないんだよね』

『ボクもだよん。あの三名方は三次元としては勿体無いくらい性格がすこぶる良いとは思うのですが、近くにいられたらボク、異様に緊張してしまいますしぃ。では柏岡君。後でおみやげ街道の所で落ち合いましょう』

「おーい、貢、久晃、旅行先では勝手な行動取るなよ」

 謙一は呆れ顔で忠告しておき、電話を切った。

「あっ、あのさ、貢と久晃、もう新大阪駅にいるってさ」

 そしてすぐさま三人に伝える。

「みっちゃんと久ちゃん、先に行くなんて、東京旅行にかなり気合入ってるみたいだね」

 伸英は笑顔で突っ込んだ。

「わたし達を避けてるようで、心配ね」

「ミッちゃんとヒサちゃん、東京で迷子になっちゃわないかワタシもすごく心配だ」

真優子と伸英は不安そうに呟く。

四人は改札を抜け、ほどなくしてやって来た新快速電車に乗り、新大阪駅で降りて待ち合わせ場所のおみやげ街道の所へ。貢と久晃はきちんと待ってくれていた。

「それでは点呼を取ります。貢さん」

「はっ、はい」

「久晃さん」

「はいぃ」

「歩未さん」

「はい!」

「伸英さん」

「はーい」

「謙一さん」

「はい」

「全員揃ってるわね。では、これから新幹線に乗るので、はぐれないようにね」

 真優子が指揮を執る。一同が新幹線乗換口へ移動しようとした際、

「ありりり?」

 突如、貢が呟いた。

「どうかしたのですか? 大井川君」

 すぐ隣にいた久晃が尋ねる。

「あのさ、おいらの、乗車券が見つからないんだ。すぐ取り出せるようにポケットに入れておいたんだが……」

 貢はズボンの両ポケットに手を突っ込みながら、やや動揺していた。

「あららら、さっそくトラブリング」

 久晃は苦笑いする。

「貢……」

「貢さん、いきなりトラブル起こさないで」

 謙一と真優子は呆れ顔になった。

「この駅でさっき確かめた時はちゃんとあったんだ。そのあと、ポケットに入れて……だから、まだ近くにあるはずなのだが……」

 焦り顔で言い訳する貢。周囲もぐるぐる見渡してみる。

「きっとその辺に落ちてるよ。そういえばみっちゃんって、中学の修学旅行の時も途中でデジカメを落としてたね。私も探すのを手伝うよ」

「ミッちゃん、ワタシも探してあげるよ」

 伸英と歩未は彼を責めるのではなく、心配そうに接してくれた。

「どっ、どうも」

 貢は緊張気味に礼を言う。その刹那、

「おーい、貢。予想通り床に落ちてたぞ」

 謙一が彼のもとへ近寄りながら叫んで知らせてくれた。貢がさっきいた場所から一五メートルくらい後方に落ちていたのだ。

「すまねえな、謙一殿。頼りになるぜ」

 貢は深々とお辞儀してから受け取る。

「ミッちゃんらしいね」

「みっちゃん、自分の荷物はしっかり管理しなきゃダメだよ」

 歩未と伸英はにっこり微笑む。

「貢さん、乗車券はポケットにそのまま突っ込むんじゃなくて、財布に入れてリュックに入れてきちんと管理しましょうね。そうすれば落としにくくなるから」

「わっ、分かりましたぁ」

 真優子に間近で注意され、貢はかなり緊張してしまう。

ともあれこれにて一件落着。

謙一、伸英、歩未、貢、久晃、真優子の順に改札を抜けて、一同は新幹線ホームへと向かっていく。全員、柄は異なるもののリュックサックを背負っていた。

無事辿り着くと、一同はすでに停車していた東京行きのぞみ号、自由席となっている二号車に乗り込む。

 女の子三人は富士山が見られる進行方向左側の二列席を回転させ、伸英と真優子が隣り合い、真優子の向かいに歩未が座った。

男子三人は右側の三列席に、通路側から数えて貢、久晃、謙一の並びで座る。

「大井川君も、一シート分でよくぞ足りましたね」

「ハハハッ、当たり前ではないかぁ。座席けっこう横幅あるだろ」

 久晃にさっそく突っ込まれ、貢は苦笑いする。

「確かに力士でも巡業とか本場所が始まる前、新幹線で移動してるけど一人一席分でちゃんと座れてるからな」

 謙一は意外にゆったり座れている貢を横目に見ながらこう呟いた。

まもなくのぞみ号の扉が閉まり、動き出す。

「ワタシ、新幹線で東京方面へ行くのは初めてだよ。富士山、すごく楽しみだなあ。なんてったって日本の山の横綱だもん」

 窓際席の歩未はまだ次の京都駅にも辿り着いていない今から興奮気味。

「歩未さん、幼い子どもの気分ね。わたしは昔家族旅行で東京行った時にも乗ったことがあるけど、雨が降っていたので富士山は全然見えなかったわ。今日は静岡の方もお天気いいみたいだから、くっきりと見られそうね」

「私も歩未ちゃんと同じで新幹線で東京へ行くのは初めてだよ。小学校の頃、家族旅行で行った時は飛行機だったから。私も富士山とっても楽しみ♪ さてと、富士山が見えて来るまでまだ時間たっぷりあるし、それまでにテスト勉強をしておこう」

伸英は続いて、古文のワークをリュックから取り出した。

「ノブエちゃぁん、ワタシ、こんな所でそんなの見たくないよぅ」

 歩未は苦い表情を浮かべ、嘆きの声を上げる。

「さすが伸英さん、いい心構えね。わたしも当然のように勉強道具一式持って来てるよ。歩未さん、今日現在、中間テスト六日前だってこと忘れてない?」

 真優子も自分のリュックから英語の問題集を取り出し歩未の眼前にかざした。

「旅行中くらい、容赦なくやって来るその現実思い出させないでぇー。二人とも真面目過ぎるよぅ。ワタシはこれ読んで過ごすよ」

 歩未はリュックから、最近発売されたばかりのコミック単行本を取り出す。

「歩未ちゃん、赤点取っても私知らないよ」

「歩未さん、そうなっても自己責任よ」

「大丈夫だよ。これだって現代文の勉強になるし」

「ラノベならともかく、マンガはならないでしょ。歩未さん、ちょうど新幹線に乗ってることだし、相対速度と慣性の法則について学習しましょう」

 真優子はそう告げると、リュックから物理の教科書とワークを取り出した。

「マユコちゃぁん、ワタシ、物理は特に勉強したくないよぅ。難し過ぎる」

「理系に来たくせに何言ってるのよ」

「歩未ちゃん、物理は真面目に勉強すれば理科の中で一番満点を取り易い科目みたいだから、しっかり頑張ろう」

こんな風に、楽しそうに会話を弾ませる女の子三人に対し、男子三人は家から持って来たラノベやアニメ雑誌、漫画などを読み、ほとんど会話を交わさず過ごしていた。


「おおおおおっ、富士山だぁっ! やっぱ生はいいね。今年の夏こそは登りたいよ」

 途中、京都と名古屋に停車し、のぞみ号がまもなく静岡駅を通過しようという頃、富士山の雄大な姿が車窓に見えて来た。歩未は興奮気味に叫びながら、携帯電話のカメラを窓に向け撮影する。

「帰りは真っ暗で見えないので、今撮影しとかなきゃ」

「山頂の方、まだ雪がけっこう残ってるんだね」

 真優子と伸英も楽しそうに携帯電話で撮影した。

男子三人は、それほど興味を示さず。

のぞみ号が新横浜、品川と停車し、まもなく東京駅に到着するという車内アナウンスが流れると、

「みんな、ちゃんと切符は持ってる? 特に貢さん」

 真優子は確認を取った。

「もっ、持ってます。ちゃんと財布に入れて、リュックにしまって」

 貢は俯き加減で緊張気味に答える。真優子も他の四人も当然のようにきちんと所持していた。

やがてのぞみ号は終点、東京駅に到着。

真優子は自分以外を先に下車させ、車内に忘れ物がないかの確認をしてから下車した。

「ホームに人、新大阪以上にめちゃくちゃ多いね。さすが日本の首都」

 歩未は好奇心いっぱいに人々を眺める。

「あっ、貢さんに久晃さーん、勝手に先々行かないでーっ」

 真優子がやや大きな声で注意すると、

「わっ、分かり、ました」

「申し訳ないでありますぅ」

 二人とも素直に従い、ぴたりと立ち止まってくれた。

「はぐれないように、なるべく固まって歩きましょう」

 真優子は念を押して注意する。

一同は階段を降りていき、謙一、貢、久晃、歩未、伸英、真優子の順に改札出口を抜ける。

「まだ早いけど、正午頃になると混んでくるからもうお昼ご飯食べちゃおう」

 その後、歩未はこう提案した。

 他のみんなも賛成し、一同は東京駅構内の飲食店街を散策する。

「ここの洋食レストランでいいかな?」

 十数店舗の看板や食品サンプルを見てみて出した歩未の希望に、

「うん、周りのお店と比較して入り易そうな雰囲気なので」

「私もそこがいいな」

「まあ、いいんじゃないか。店が他にもいっぱいあり過ぎて選んでるとキリがないし」

真優子も伸英も謙一も大いに賛成。

「あの、おいらは、ラーメンストリートで食うから」

「ボクも、そっちがいいです。そこはボクにはおしゃれ過ぎて似合わないよん」

 貢と久晃も緊張気味に希望を述べてみる。

「はぐれないようにみんな一緒に行動するべきなんだけど、久晃さんも一緒なら問題ないか。あとで銀の鈴の所で待ち合わせしましょう」

 真優子が許可を出すと、二人はすぐさま目的地へと逃げるように早歩きで向かっていった。銀の鈴とは、東京駅で最も有名な待ち合わせスポットだ。

「じゃあ、俺も、そっちにしようかな」

 謙一もこの二人に付き合おうと後を追う。

「ダーメ! ケンちゃんはワタシ達と付き合って!」

 ところが歩未にすぐに追いつかれ、腕をぐいっと引っ張られ阻止された。

「いてててっ。でっ、でもさぁ、女の子は女の子同士で食事した方が楽しいかと……」

「謙一くん、私、東京で女の子だけで動くのは危険だと思うの」

「わたしも伸英さんと同じ意見です。安全のため、謙一さんもご同行お願いします」

 伸英と真優子からも強く頼まれる。

「俺がいても変わらないでしょ」

「いやいやー、頼りにしてるよ、ケンちゃん。防犯対策には全然役に立たないだろうけど、道案内と荷物持ちで」

「……」

 歩未に爽やかな笑顔でこう言われ、謙一はほんの少しだけイラッとしまった。

 こうしてこの四人は歩未の希望した洋食レストランへ。

「四名様ですね。こちらへどうぞ」

店内に入ると、ウェイトレスに四人掛けテーブル席へと案内された。

歩未と真優子、伸英と謙一が向かい合うような形に座ると、歩未がメニュー表を手に取りテーブル上に広げる。

「ワタシ、スープカレーにする!」

「俺は、天ざる蕎麦で」

「謙一さん、渋いですね。わたしも渋めにかき揚げうどんにしよう。出汁が真っ黒で関東風だから、関西との文化の違いを感じるわ」

 歩未、謙一、真優子の三人はすんなりとメニューを決めた。

「……」

 まだ迷っていた伸英に、

「伸英さんはどれにする? いっぱいあり過ぎて迷っちゃうよね。じっくり決めていいよ」

 真優子は優しく話しかける。

「あっ、あのね、私……お子様、ランチが、食べたいなぁって思って」

 伸英は顔をやや下に向けて、照れくさそうに小声でぽつりと呟いた。

「ノブエちゃん、今でもお子様ランチ食べたがるなんてかっわいい!」

「伸英さん、わたしにも食べたいお気持ちはよく分かります」

歩未と真優子はにっこり微笑みかける。

「でも、さすがにこの年ともなると、恥ずかしいから、私、やっぱりトルコライスにする」

 伸英さらに照れくさくなったのか、希望を変更。

「ノブエちゃん、本当は食べたいんでしょ? 食べないときっと後悔するよ。ここでは年齢制限ないみたいだし」

「伸英さん、大人のお子様ランチというのもあるので、恥ずかしがらなくてもいいのよ」

「俺も、気兼ねすることなく食べた方がいいと思う」

三人がこうアドバイスすると、

「じゃあ私、これに決めた!」

伸英は顔をクイッと上げて、意志を固めた。

「ワタシが注文するね」

 歩未は呼びボタンを押し、ウェイトレスに注文する。

それから五分ほどして、

「お待たせしました。お子様ランチでございます。はい、お嬢ちゃん。ではごゆっくりどうぞ」

 伸英の分が最初にご到着。新幹線の形をしたお皿に、旗の立ったチャーハン、プリン、タルタルソースのたっぷりかかったエビフライなど定番のものがたくさん盛られている。さらにはおまけのシャボン玉セットも付いて来た。

「……ワタシのじゃ、ないんだけど」

 歩未の前に置かれてしまった。歩未は苦笑する。

「あらまっ、歩未さんが頼んだように思われちゃったのね」

 真優子はくすくす笑う。

「歩未ちゃん、若手に見られてるってことだから、気にしちゃダメだよ」

伸英は少し申し訳なさそうに、お子様ランチを自分の手前に引っ張った。

(ウェイトレス、普通はそう思うよな)

 謙一は笑いを堪えていた。

「……確かにワタシ、一七歳だけど小学生に見えるよね」

 歩未は内心ちょっぴり落ち込んでしまった。

さらに一分ほど後、他の三人の分も続々運ばれてくる。

 こうして四人のランチタイムが始まった。

「エビフライは、私の大好物なの」

 伸英はしっぽの部分を手でつかんで持ち、豪快にパクリとかじりつく。

「美味しいっ!」

 その瞬間、とっても幸せそうな表情へと変わった。

「モグモグ食べてるノブエちゃんって、なんかキンカンの葉っぱを食べてるアオムシさんみたいですごくかわいいね」

「伸英さん、あんまり一気に入れすぎたら喉に詰まらせちゃうかもしれないよ」

歩未と真優子はその様子を微笑ましく眺める。

「ノブエちゃん、食べさせてあげる。はい、あーんして」

 歩未はお子様ランチにもう一匹あったエビフライをフォークで突き刺し、伸英の口元へ近づけた。

「ありがとう、歩未ちゃん。でも、食べさせてもらうのはちょっと恥ずかしいな」

 伸英はそう言いつつも、結局食べさせてもらった。

「ケンちゃん、育ち盛りなんだし天ざる蕎麦だけじゃ足りないでしょう? ワタシのも分けてあげるよ。はい、あーん」

 歩未は、今度はグリーンカレーの中にあったチキンの一片をフォークで突き刺し、謙一の口元へ近づけた。

「いや、いいよ」

 謙一は以前伸英にされた時のように左手を振りかざし、拒否した。彼は照れ隠しをするように麺を啜る。

「謙一さん、かわいいです」

「ケンちゃん、お顔は赤くなってないけど照れてるでしょう?」

 真優子と歩未はにこっと笑いながらそんな彼を見つめた。

昼食を取り終え、レストランから出た四人は待ち合わせ場所の銀の鈴広場へと向かう。

「みっちゃんと久ちゃん、まだ食べ終わってないみたいだね。あの、私、おトイレ行ってくるよ」

 伸英はもじもじしながら伝える。

「ワタシも行きたいと思ってたところだよ」

「わたしもー。漏れそうです」

 歩未と真優子も同調した。

「じゃあ荷物、持っててあげるよ」

 謙一は優しく気遣う。

「サンキュー、ケンちゃん。頼りになるね」

「申し訳ないです謙一さん、なるべく早く戻って来るので」

「ごめんね謙一くん、迷惑かけちゃって」

こうして三人は荷物を謙一に預け、最寄りの女子トイレの方へ向かっていった。

 謙一は三人から受け取ったリュックサックを自分の側に固め、近くの長椅子に腰掛ける。

(早く、戻って来ないかなぁ。人多過ぎて落ち着かないよ)

 待っている間、そわそわしていた。

 見知らぬ土地なので、緊張感がより一層高まっていたのだ。

 多くの人々がひっきりなしに彼の目の前を通り過ぎていく。

「謙一殿ぉー。ラーメンすこぶる美味かったぜ」

「どうもー」

タイミング良く、貢と久晃が戻って来てくれた。

「貢、満足げな表情だな」

謙一は一安心する。

「大井川君は三種類、つまり三人分も食べていましたよん」

 久晃は笑顔で報告。

「貢、食べ過ぎだろ」

「おいらにとっては、まだ腹六分目といったところだぜ」

 呆れる謙一に、貢はにこにこ笑いながら言う。

 そんな時、

「お待たせーっ、謙一くん。みっちゃんと久ちゃんも食べ終わったんだね」

「お待たせしました」

「ミッちゃんとヒサちゃん、ちゃんと来てくれて良かった」

女の子三人も戻って来た。

「あっ、あのう、おいらは、これからアキバへ行くから」

「ボクも同じであります。というか、ボクが今回の旅行に参加した一番の理由は、アキバへ行くためでしたからぁ」

 貢と久晃はすぐに希望を伝える。

「やっぱりな」

 謙一は呆れ顔で呟いた。

「でっ、ではぁ、これからも、別行動ということでー」

「謙一殿も、おいら達と動こうぜ」

 久晃と貢が在来線切符売り場へ向かおうとしたところを、

「待って! 東京観光はもしもの時のためにみんなで動いた方がいいと思います」

 真優子は強く意見し、二人を引き止める。

「真優子ちゃんの言う通りだよ。みっちゃん、久ちゃん、私達と一緒に動こう」

「見知らぬ土地なんだし、その方が絶対いいよ。迷子になったらやばいじゃん」

 伸英と歩未も、真優子と同じ考えだ。

「でもぉ、きみ達アキバには興味ないでしょう?」

 久晃は困惑顔で質問した。

「いや、大いにあるわ。わたしも一度、秋葉原へ行ってみたかったの」

「ワタシもーっ。リケジョとして一度はアキバ行っておかなきゃいけないよね」

「私も、ちょっとだけ興味ある」

 女の子三人ともけっこう乗り気だった。

「「……」」

 一緒に行動せざるを得なくなってしまい、貢と久晃はげんなりとした表情を浮かべる。

「片道一三〇円で行けるのか。安いわね」

 真優子が代表して六人分の乗車券を購入。

一同は大阪環状線にも何度か乗ったことがあるためか、山手線内回りに迷わず間違えず乗り込むことが出来、二駅隣の秋葉原で下車した。

電気街口から一歩外へ出た瞬間、 

「ついに来たぜ、アキバ。おいらの一七年の人生で初上陸だ」

「ボクもこの地へ降り立ったのは生まれて初めてですが、やはりガイドブックに書かれてある通り良い雰囲気の街ですね。ポンバシよりもずっと良いです」

 貢と久晃は興奮気味に呟く。

「ここが秋葉原かぁ。オタク街の横綱、理系の街って感じだね。それにすごい人ぉ! みんなアニメが大好きなのかなぁ?」

 街の光景に歩未も大興奮していた。

「なんか、落ち着かないよぅ」

「わたしもです。人があまりに多過ぎるので」

「俺も、なんとなーく居辛い。早くこの街から出たい」

 伸英と真優子と謙一の率直な感想。

「謙一殿、二次元世界にどっぷり嵌ればきっとアキバが大好きになるぜ」

「アニメ系ショップの本店がいっぱいありますからねぇ。声優のイベントもポンバシよりずっと多いですしぃ」

 貢と久晃はとても機嫌良さそうに言う。

「ミッちゃん、久ちゃん、アキバ案内は任せたよ。どこか面白そうなお店、ワタシ達に案内してね」

 歩未ににこやかな表情で見つめられながら頼まれ、

「わっ、分かりましたぁ。ではぁ……」

 久晃はやや緊張気味に承諾した。

「あのさ久晃、女の子達が引かないような店に入れよ」

 謙一は耳打ちする。

「ゲー○ーズや、メ○ンブックスや、ら○んばんや、と○のあなや、ソ○マップは、ダメでございましょうか?」

 久晃も囁くような声で訊き返す。

「……どれも絶対ダメだ。もっと、親子連れや小学生くらいの子でも楽しめる店だ」

 謙一は再度、耳打ちした。

「謙一殿、無難に、ここか? 客の三次元女率が高いから、おいらはあまり好きではないのだが」

 貢は秋葉原のガイドブックの該当箇所を手で指し示す。

「それがいいな」

 謙一はオーケイを出した。

 こうして一同は中央通り沿いにある、大型アニメショップに立ち寄ることに。

発売中または近日発売予定のアニメソングBGMなどが流れる、賑やかな店内。

 この六人と同い年くらいの子達は他にも大勢いた。

「私、こういう雰囲気のお店、初めて入ったよ。お店の名前見るとアニメグッズしか売ってなさそうだけど、お菓子もいっぱい売ってるんだね」

「これって、東京でしか売られてないよね。美味しそう。わたし、このお饅頭買おう」

「ワタシは、十個中八個が激辛のキャンディー買おうっと。あっ、このメイドさんの激辛クッキーも美味しそうじゃん。これも買おうっと!」

 女の子三人が一階土産物コーナーの商品を眺めているうちに、男子三人は三階ラノベコーナーへ。

「おう、G○文庫の新刊、出ているではないかぁ」

「今月はけっこう読みたい作品が多いですね。ファン○ジア文庫とM○文庫の新刊も今月は良さそうなのが揃っていますし、出費がかさみそうです」

 貢と久晃はお目当てのラノベを手に取り、次々と籠に詰めていく。

「ラノベって、そんなに面白いか? 表紙のキャラクター、全部同じに見えるぞ」

 謙一は商品に手を触れず、ただ眺めているだけだった。

「謙一殿、全く違うではないかぁ。まだまだ学習不足であるな」

「柏岡君、これらのキャラの見分けが簡単につくようになれば、これから習う、似たようなのが多い三角関数の公式や、有機化合物の化学式や性質を暗記するのも楽に出来るようになるよーん」

 貢と久晃は笑顔でそう言って、機嫌良さそうにレジへ会計を済ませに行った。

「教科の勉強とこれとは全く関係ないだろ」

 謙一は呆れ顔。

男子三人は続いて七階アニメDVD/ブルーレイコーナーへと移動していく。

「おいら、この作品のブルーレイすげえ集めたい。三話収録で八〇〇〇は高いけど、秀樹爺さんからポケットマネー貰ったし、買おうかな」

貢はそこにあった、店内設置の小型モニターに目を留めた。今年一月から三月まで放送されていた深夜アニメのブルーレイのCMが流れていたのだ。

「貢、それ、秀樹爺ちゃんのじゃなくて父さんの金だから」

 謙一が苦笑顔で伝えると、

「そうであったかぁ。ではやめた方が良いな。自分の小遣いの範囲内で済ませることにしよう」

 貢は残念そうに告げた。

 三人は、ここでは何も買わずに五階へ。

「おいら、このフィグマ欲しい。けど二五〇〇円もするんかぁ。やっぱ高いなぁ。これ買ったら今月分の小遣い半分無くなってしまうぜ」

貢は商品の箱を手に取り、全方向からじっくり観察する。

「買おう!」

 約五秒後、魅力に負けあっさり購入することに決めた。

「大井川君、やりますねえ。ボクも欲しいグッズがあるよん。あの携帯ストラップとかコースターとか」

「おいらもあれめっちゃ欲しいぜ。喉から手が出るほどに」

「あんまり無駄遣いするなよ」

 欲しいグッズを見つけては次々と買い物籠に詰めていく貢と久晃に、謙一は呆れ顔で忠告しておいた。

貢と久晃は当初買う予定の無かった商品もカゴに入れ、レジに商品を持っていく。

「七八五〇円になります」

 店員さんから申されると、代金は先ほどと同じく貢と久晃二人で出し合った。

 同じ頃、

「このTシャツ、デザインめっちゃ格好いいじゃん、買おうかな」

「私、あのマグカップとお皿が欲しいよう。あっ、あのシールも」

「歩未さん、伸英さん、お気持ちはよく分かるけど無駄遣いは程ほどにしましょうね。きっと後悔するわよ。さっきも画材いっぱい買ってたでしょ。どれか一つだけにしなさい。千円以内で」

女の子三人は四階の、有名週刊少年誌などに登場するキャラクターのグッズなどが多数売られているコーナーでけっこう楽しんでいた。

「分かったよ真優子ちゃん。旅行中、まだまだお金使う機会いっぱいあるもんね」

「マユコちゃん、なんかおもちゃやお菓子売り場とかで幼い子どもに、これ買うんやったらあれは買わへんよって言うママみたいだね」

伸英と歩未は真優子の忠告をきちんと守り、どうしても欲しいグッズを一つだけ選んで会計を済ませる。

「それにしても貢さんと久晃さん、今度は謙一さんも、また勝手に動いちゃって」

 真優子はため息混じりに呟いた。

「お店が広過ぎて、みっちゃん達どこへ行ったのか分からないよ」

 伸英は周囲をぐるりと見渡してみる。

「絶対まだお店の中にいるよ。一階の出入口で待っておこう」

歩未はそう告げて、エレベーター横の《→》ボタンを押した、

しばらく待ち扉が開かれると、

「あっ!」

 中にいた一人が思わず呟く。

 謙一だった。他に貢と久晃もいた。

「やっほー、謙一くん、みっちゃん、久ちゃん」

「おう、なんという偶然!」

「噂をすれば影が立つ、のことわざ通りですね」

 女の子三人も思わず声を漏らした。そして乗り込む。

「「……」」

 貢と久晃は緊張からか、黙ったままだった。

 こうして一同は一階へと下り店から外へ出た。さらに中央通りを北方向へ向かって歩いていく。

「ねえっ、アキバはしょっちゅうテレビで特集されてるのに、ポンバシはほとんど注目されないのは寂しいよね?」

 信号待ちをしている際、歩未は貢に話しかけてみた。

「うっ、うん。まあ、二番目ってのは、注目されないからな」

 貢はやや上を向きながら緊張気味に意見する。

「日本で二番目に高い山とか、広い湖とか訊かれて、即答出来る人は少ないと思う」

「……言われてみれば、確かに。京大も東大に比べたら注目されないもんね」

 謙一のツッコミに、歩未はハッと気付かされた。

「遠足で京大見に行った時にも似たような話題したわね。わたし、気になって、あれからAm○zonのすべてのカテゴリーで検索してみたの。東大は四万件くらい表示されたのに、京大だと千件くらいしか表示されなかったわ」

 真優子は伝える。

「二番目の宿命ですね。柏岡君の質問の答えは北岳と霞ヶ浦だけど、定めし知名度は落ちますしぃ。オリンピックの銀メダリストも同じですねぇ。二番目の方が有名なものといえば、鳥取砂丘とエアーズロックくらいかなぁ」

 久晃の呟きに、

「鳥取砂丘とエアーズロックって二番目だったの?」

 歩未は少し驚く。

「イェス。砂丘の広さ日本一は、青森県にある猿ヶ森砂丘だけど、防衛省の弾道試験場になってて民間人は立ち入り禁止ゆえに、知名度が低いようです。岩の大きさ世界一も、マウント・オーガスタスだし」

「へー、ワタシ初めて知ったよ」

「久晃殿、相当物知りなのだな」

 貢も感心していた。

「久ちゃん、小学校の頃のあだ名、『博士』だったもんね」

「……」

 伸英ににこっと微笑みかけられた久晃は、照れてしまう。

「久晃さんの雑学の豊富さには、わたしも適わないわ」

 真優子は尊敬の念を抱いているようだった。

「ねえねえ、ミッちゃんとヒサちゃんは、メイド喫茶にもよく行ってるんでしょ?」

 歩未がこう問いかけると、貢と久晃は手をぶんぶん振りかざし、ノーの合図を取った。

「メイド喫茶のメイドは、三次元なんだぜ」

「そんな不健全な空間に、ボク達が立ち寄るわけがないじゃないですかぁー」

 続けて苦々しい表情を浮かべながらこう意見する。

「そうなんだ。楽しそうなんだけどな。このあとどこ行く? 渋谷と原宿はどう? ハチ公とモヤイ像見て、毎年お正月に横綱の土俵入りしてる明治神宮参拝して、竹下通りを歩かない?」

 歩未の誘いを、 

「一番あり得ないぜ」

「リア充の溜り場じゃないですかぁー」

 貢と久晃は困惑顔で即、拒否した。

「私も、渋谷原宿はちょっと。昔行った時、人が多過ぎて落ち着かなかったから。私は池袋のサンシャイン水族館に行きたいな。リニューアルしてからは、まだ行ってないから」

「いいねえ、池袋といえばナン○ャタウンも面白そうだよ」

 伸英の希望に、歩未は大賛成。

「あの、先に東大見学を済ませちゃいましょう。秋葉原のすぐ近くなので」

 真優子はこう提案してみた。

「そうだな。俺もその方がいいと思う。秀樹爺ちゃんからのノルマも達成出来るし」

 謙一は賛成のようである。

 結局、他のみんなも真優子の希望に賛同し、全会一致でそこへ行くことにした。

一同は末広町駅から地下鉄を乗り継ぎ、本郷三丁目駅へ。

 構内を出ると、本郷通りを北へ向かって歩いていく。

 目的地へ辿り着くと、

「写真で見るよりもずっと格好いいね。さすが日本一の大学なだけはあるよ」

「そうだねノブエちゃん。この前に立ってるだけで、頭が良くなりそうな気がするよね」

 伸英と歩未はやや興奮気味になった。

一同が訪れたのは、かの〝東大赤門〟だ。

「わたし達の他にも観光客けっこう大勢いるわね。わたし達もみんなで一緒に赤門を背景に記念撮影しましょう」

 真優子は提案する。

「いいねえ、撮ろう、撮ろう!」

「せっかく来たもんね。撮らなきゃ勿体無いよね」

 歩未と伸英は快く賛成したが、

「俺はいいよ」

「おいらも結構」

「ボクも結構ですよん。女性方だけでお撮り下さいませー」

 男子三人は嫌がっていた。

「まあまあそう言わずに」

「のっ、伸英ちゃん……」

 謙一は伸英に腕をぐいっと引っ張られ、無理やり赤門前に並ばされる。

「謙一殿が写るというのであれば……」

「ボクも、柏岡君が写るので一緒に写りますよん」

 貢と久晃はしぶしぶ加わることにした。

真優子が近くにいた他の観光客に撮影をお願いし、無事記念撮影完了。

撮られた写真の並びは左から順に貢、久晃、謙一、伸英、真優子、歩未。男子は三人とも若干硬い表情であったが、女の子は三人ともとても満足そうな表情だった。

「マユコちゃんは、東大は志望校に考えてないの?」

 歩未は気になって尋ねてみた。

「うん、全く。わたし、京大しか考えてないよ。家から通えないし、何よりわたし、京大の自由の学風に魅力を感じてるもん。でも、東大のキャンパスは見れて良かったわ」

 真優子は嬉しそうに言う。

「父さんは東大の中でも理Ⅲは別格の難しさだって言ってたけど、久晃なら、あの理Ⅲにも受かるんじゃないか?」

「いやいや柏岡君、ボクなんかには絶対無理だよーん。日本の大学受験において、東大理Ⅲに次ぐ入学難易度といわれる京大医学部医学科もね」

 謙一の質問に、久晃は謙遜気味に答える。

「久晃殿でもはっきりと無理だと言い張るとは。でも、東京藝大は理Ⅲよりも難しいらしいな。別の意味で」

 貢の呟きに、

「あそこは生まれつきの才能がなきゃ無理らしいですからね。宝塚音楽学校も同様に」

 久晃はすぐさま突っ込む。

「学力じゃ測れない最難関か。力士で例えるなら……雷電爲右エ門だね」

「歩未さんらしい例え方ね」

 真優子は感心していた。

 その時、

「ソコノオカッパアタマノキミハ、コノバニハヒジョウニフサワシクナイデゲスネ」

 六人の背後からこんな声が。

「こっ、この声は――」

 歩未が最初に反応した。

「この鳥さん、ひょっとして……」

「たぶんそうよね。江戸弁だから」

 同じようなタイミングで、伸英と真優子も反応する。

 京大吉田キャンパス内でも目撃した、オカメインコの喜三郎だったのだ。

「こいつ、なんで東大にまで?」

 歩未が驚き顔でこう呟いた。

 それからほとんど間を置かず、

「あのう、この子が失礼なこと言ったようで申し訳ございません」

 飼い主の智穂が姿を現した。

「あっ、この子は、確か智穂ちゃん」

「おう、チホちゃんじゃん。また会ったね」

「こんな場所でお会いするとは、なんという偶然でしょう」

 伸英、歩未、真優子は思わぬ再会にかなり驚く。

「どうも、お久し振りです。歩未お姉ちゃん、伸英お姉ちゃん、真優子お姉ちゃん」

 智穂はいたって冷静だった。にこやかな表情でぺこんとお辞儀する。

(誰だ?)

(はてはて、誰なのでしょう? あの妙に二次元美少女キャラに近いお方は)

 彼女達から数メートル離れた場所にいた貢と久晃は心の中でこう思った。当然のような反応である。

 しかし、

「ちっ、智穂!? なんでここに?」

 謙一はこう呟いて、顔を引き攣らせたのだ。

「あっ! 謙一お兄ちゃんもいるじゃない。今年のお正月に会って以来だね。皆さん、謙一お兄ちゃんとお知り合いだったんですね」

 智穂はやや驚きつつそう言うと、謙一の側にとことこ駆け寄る。

「この子、謙一くんの知り合いなの?」

 伸英も近寄って来て、不思議そうに質問して来た。

「うん。父さんの妹の陽子叔母さんの娘、つまり俺の従妹だ。めっちゃ頭がいいぞ。この子ならほぼ百パーセント京大どころか東大理Ⅲにも合格出来る」

 謙一はやや焦り気味に説明する。

「そうなんだ。やっぱり智穂ちゃんはものすごい天才なんだね」

 伸英は智穂に尊敬の眼差しを向けた。

「いやいや伸英お姉ちゃん、全国にはまだまだ上には上がいっぱいいましたし、たいしたことないです。それより謙一お兄ちゃん達は、どうして東京に来たの?」

 智穂は謙遜したのち、謙一に質問する。

「秀樹爺ちゃんから東大を見に行けと言われて」

「そっか、納得。秀樹お爺ちゃんはおそらく、京大のライバルを謙一お兄ちゃん達に視察して欲しかったんだね」

「当たってる。相変わらずすごい推察力だな。それより智穂はなんで東大に?」

「あたし、月に二、三回くらいは東大の本郷キャンパス内をお散歩することを習慣にしてるから。なんか、頭がもっと良くなりそうなパワースポットみたいな感じがするの。特に赤門と安田講堂の側は」

「ああ、そういうことね」

「ところで、謙一お兄ちゃんは最近受けた模試、判定どうだった?」

 智穂が無邪気な表情で質問してくる。

「神大で、D判定だったけど」

「神大でD判定じゃ、京大はかなり厳しいね。こうなったら、あたしが謙一お兄ちゃんの代わりに京大に進学して、柏岡家の負の連鎖を断ち切るよ。あたし、東大第一志望だったけど、京大に変える! あっ、でもあたし苗字が仙頭だから……謙一お兄ちゃんと結婚すれば柏岡姓になるね」

「おいおい智穂、そんな単純な理由で進路を変えるなよ」

 謙一は呆れ顔。結婚計画は幼い子どもの言う事と捉え、完璧にスルーした。

「チホちゃん、第一志望、京大に変えたんだね。ワタシも京大第一志望だよ」

「私もー」

「わたしもよ」

「おううううう! 三人とも、京大第一志望なのですか。仲間ですね。一緒に合格目指して頑張りましょう!」

 智穂はとても嬉しがった。三人に握手を求めてくる。

「よろしくね、智穂ちゃん。謙一くんの従妹だったんだね。すごくかわいいーっ。私の妹に欲しいよぅ」

「ワタシ、一足先に京大で待ってるよ」

「歩未さんは今の勉強のやり方じゃ現役、いや何年浪人したって絶対無理でしょ。智穂さん、一緒に頑張りましょうね」

三人は快く応じてあげた。

「はい。あたし、今から京大受験がとっても楽しみです」

智穂は満面の笑みを浮かべる。

「仙頭智穂……確かこのお方、ボクが前に受けた全国模試で、かなり上位の方にいたような気がします。理Ⅲも狙える八〇番台にいたような……ボク、全国上位百位くらいまではどんなお方がランクインされているのか、いつもチェックしておりまして」

 久晃はぽつりと伝える。

「四月十日と十一日にあったマークの分だよね?」

 智穂は久晃の側へぴょこぴょこ歩み寄り、質問してみた。

「はっ、はいぃぃ。その分でございますぅ」

 久晃の心拍数、ドクドクドクドク急上昇。少し年下の現実の女の子は特に苦手なのだ。

「じゃぁあたしも受けてます。八六位だったよ」

 智穂はにっこり微笑みながら伝えた。

「智穂、まだ高一なのに高三浪人生用の模試、もう受けたのか。しかも全国上位層に躍り出るとは……」

 謙一は驚き顔。

「だって、大学受験用の勉強は早めにするに越したことないからね。うちの学校、中三で高三浪人生用の模試受けてる子だっているよ。こちらの外見の○太くんみたいだけど出○杉くんのように賢そうなお兄ちゃんは、東大を志望してるんだよね? 雰囲気的にそんな感じがします」

「いやぁ、じつはボクも、第一志望、京大なんですぅ」

 久晃は俯き加減に伝えた。

「そうなんですかっ! すごく嬉しいです! あたしと握手しましょう!」

 智穂はそう言うや否や、久晃の右手をガシッと握り締めた。

「あっ、あっ、あっ、あのうぅぅぅぅぅぅ」

 久晃のお顔は瞬く間に茹蛸のように真っ赤になる。

「あっ、なんかお相撲さんまでいるぅ。ねえねえ、あなたの四股名は何って言うの? 出身地と所属部屋はどこ? 番付の最高位は? 通算成績は何勝何敗何休? あっ、それより今夏場所中でしょう? お稽古はしなくてもいいの?」

 智穂は貢にも興味を示してしまった。彼の側にぴょこぴょこ近寄っていく。

「いや、おいら、お相撲さんではぁ」

 貢がかなり緊張気味に否定したその時、

「キミハ、ココヨリモ〝リョウゴク〟ノホウガズットオニアイデゲス」

 オカメインコの喜三郎から突っ込まれてしまった。

「失礼な鳥だぜ。否定は出来ないが」

 貢は困惑顔を浮かべる。

「喜三郎、思ったことをそのまんま口に出しちゃダメだよ。ねえ謙一お兄ちゃん、あちらの四名、みんな京大を第一志望にしてるよ。謙一お兄ちゃんも仲間外れにされないように、京大本気で目指そうよ!」

 智穂は謙一の方へ近づいて勧めて来る。

「智穂、俺の学力じゃ絶対無理だから。京大なんて、レベルがあまりに高過ぎて俺の志望校の眼中に無いよ」

 謙一は迷惑している様子だった。

「あーん、まだ高二始まって間もないのに、今からそんなネガティブ思考じゃダメダメ」

「智穂、さっき俺に神大D判定じゃ京大はかなり厳しいと言っただろ」

「確かにそうなんだけど、一生懸命努力すれば絶対なんとかなるよ。じゃあ謙一お兄ちゃん、歩未お姉ちゃん、伸英お姉ちゃん、真優子お姉ちゃん、の○太くんみたいなお兄ちゃん、お相撲さん、あたし、これからお友達とリスーピアに遊びに行くから、また会おうね。ばいばーい」

 智穂はそう告げてオカメインコの喜三郎を手の甲に乗せ、ここから立ち去った。

「謙一くんの従妹の智穂ちゃん、本当にめちゃくちゃかわいいよぅ。ランドセルが今でも絶対似合いそうだよ」

 伸英はそんな智穂の後姿をうっとり眺める。

「智穂は、何にでも興味津々で好奇心旺盛な子なんだ。百人一首やパズルゲームも昔から得意だったよ」

「その強い意欲が、学力の高さにも繋がっているわけね。久晃さんが受けた模試で高一にして全国八六位って、わたし、どれだけ頑張ってもあの子に学力で勝てそうにないわ」

「ボクも、到底敵いませんね」

 真優子と久晃は智穂に一目置いたようである。

「チホちゃんは横綱級に賢いしかわいかったけど、ペットの喜三郎が小結級にすごく腹立つよ。あの毒舌江戸弁オカメインコめ」

 歩未は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

「それにしても智穂、ペットをあそこまで賢く躾けるとはな」

 謙一はほとほと感心していた。

 一同はこのあとさらにもう少し北へ歩き、赤茶色の煉瓦造りの外観が特徴的な安田講堂も見学する。

「ここで東大頭脳パワーを授からなくては」

 歩未は真剣な表情で安田講堂に向かって両手をかざし、大きく深呼吸した。

「私もやるよ。これで次のマーク模試は九割超えられそう」

 伸英もつられて真似をする。

「わたしは、恥ずかしいのでやめておきます」

 真優子は周りにいる東大生と思わしき方々の姿を眺め、苦笑顔で呟いた。


一同が次に訪れた観光地は、浅草。時間の都合上、池袋へ行くのはやめたのだ。

「やっぱ東京見物は東側エリアに限るな」

「ボクも同意です。渋谷や原宿はリア充DQN専用ですよん」

「ミッちゃんとヒサちゃん、また先々行ってるよ」

 歩未は、雷門前から十数メートル先の仲見世通りをお喋りしながら歩き進むその二人を目で追いながら伝える。

「仲見世通りも人多過ぎるし、迷子になるわよーっ」

 雷門前から真優子は大声で叫びかけるが、彼らは聞こえなかったのかはたまた無視しているのかさらに奥へ奥へと進んで行ってしまう。

「みっちゃんは体すごく大きいし、目印になるからきっと大丈夫だよ」

「確かにね」

 伸英の考えに、真優子は概ね納得出来た。

 雷門をしばし眺めたり撮影したりして、四人も仲見世通りへ。土産物屋を覗きながら浅草寺本堂に向かってゆっくり歩き進んでいく。途中、宝蔵門の所でスカイツリーを背景に記念撮影もした。

 貢と久晃はきちんと本堂の前で待ってくれていた。

「勝手に動いちゃダメでしょ」 

 真優子は困惑顔で注意。

「わっ、分かってたけど、おいら、つい本堂の概観に見惚れて」

「ボクも、人ごみに流されて足が勝手にぃ」

 貢と久晃は緊張気味に言い訳になってない言い訳をする。

「次は花やしきに行かない? ここのすぐ近くだし。お化け屋敷が和風で面白そうだよ」

 歩未が提案すると、

「そこは、絶対ダメだ。渋谷原宿並に」

 貢は即、拒否した。顔をやや蒼白させながら。

「さてはミッちゃん、今でもお化け屋敷苦手なんでしょう? 小学校の遠足でひらパー行った時、班行動から逃げ出したもんね」

 歩未はにやけ顔で問い詰める。

「いっ、いや、今は、さすがに、そんな、ことはぁ……」

 貢は首を左右にぶんぶん振る。

「もう、隠さなくても。お顔を見れば一目瞭然だし」

 歩未はにこにこ笑う。

「みっちゃん、私も今でもお化け屋敷苦手だから、そこには入らないようにするよ」

 伸英は優しく話しかけた。

(わたしも今でも苦手だなぁ。貢さんのこと笑えないです)

 真優子の今の心境。

「ボクも、お化け屋敷は幼少期から大変苦手でございます。柏岡君はどうでしょうか?」

 久晃は苦い表情で尋ねてみた。

「俺もまあ苦手だ。あの、皆、もうすぐ五時になるし、今から花やしき行ってもアトラクションあまり楽しめないと思う。そろそろ両国へ行こう」

 謙一は意見を伝える。

「もうそんな時間かぁ。じゃ、しょうがない。ワタシも両国大好きだし、花やしきは諦めよう」

 歩未がそう言うと、貢はホッとした表情を浮かべたのであった。

 こうして一同は浅草をあとにしてJR両国駅へ。

「ママーッ、お相撲さぁん」

 駅構内にて、貢は幼い女の子に指を指された。

 ママの方は、

「本当だぁ。テレビでは見ないから、三段目くらいの子かな?」

 その娘に向かってこう話しかけていた。

「みっちゃん、やっぱりお相撲さんに間違われちゃったね」

「ミッちゃん、力士の風格があるよ」

「貢さん、間違えられても全く不思議ではないです」

 女の子三人はついつい笑ってしまった。

「おいら、浴衣じゃなくて、私服なのだが……」

 貢は苦笑いを浮かべる。

「貢、両国の街歩いてたらまた力士に間違われるかもな」

「リアル力士も今の時期は特に多いですからねー」

謙一と久晃も笑いながら言った。

「おいら、両国はなるべく出歩きたくないぜ」

 貢は肩身の狭い思いになり、ため息混じりに呟く。

「そういや両国っていうと、父さんから聞いたんだけど昔、両国予備校っていうスパルタ式のめっちゃ厳しい大学受験予備校があったんだって」

 謙一が伝えると、

「両国予備校かぁ。ボクも小耳に挟んだことがあるよん」

「わたしもありますよ。全寮制で、校則や寮の規則も軍隊のようにとても厳しかったらしいですね」

 久晃と真優子はすぐに反応した。

「ワタシも知ってるぅっ。おじいちゃんちで見た大相撲の昔のビデオで、貴乃花の取組の懸賞にかかってたのを見たよ。相撲部屋よりも厳しかったのかなぁ?」

 歩未の呟きに、

「大相撲の取組で存在知るなんて、坂東さんらしいね」

 謙一は微笑み顔で突っ込んだ。

「怖そうだなぁ。私がそこの授業に出たら、一分足らずでPTSDになりそうだよ。アウシュビッツみたいな感じなのかなぁ」

「おいらは、看板眺めただけで逃げ出しそうだぜ」

 伸英と貢はいろいろ想像して、恐怖心が芽生えていた。

一同はこのあと、両国国技館のすぐお隣にある江戸東京博物館へ。普段は午後五時半閉館だが、土曜日は午後七時半まで開いている。そのため一同は東大から浅草へと移動する最中に、ここを訪れることを決めていたのだ。

館内を、貢と久晃は展示物にあまり興味ないのかまたも先々進んで行ってしまった。

他の四人は閉館時刻に気を付けながらもゆっくりと鑑賞する。

「ワタシ、この絵、めっちゃ大好き。一年生の時使ってた世界史Aの教科書にもカラーで載ってたよね」

 江戸時代末期の展示がされてある場所で、歩未は興奮気味に叫ぶ。

 ペリーに対抗にして、力士達が米俵を担ぎ上げている様子が描かれたものだったのだ。

 江戸ゾーンでは力士の浮世絵も多数展示されていたため、六人の中で歩未が一番楽しめたようだ。

夜七時過ぎ、江戸東京博物館をあとにした一同は浅草へ戻り、今夜宿泊する高級ホテルへチェックイン。

 フロント係員からルームキーを手渡されると、エレベーターを利用してお部屋へ向かっていく。

 三部屋ともツインルームかつ予約日時も近かったためか、同じフロア二一階に割り当てられていた。謙一と伸英は2103号室、真優子と歩未は2105号室、貢と久晃は2108号室だ。

「わぁーっ、お部屋広くてすごくきれーいっ!」

伸英は2103号室に入りルームキーを差し込んで電気をつけるや、嬉しそうに叫ぶ。

「一人当たり一泊一万五千円以上するからな。高校生がこんな高級な所に泊まっていいのかな?」

 謙一は少し罪悪感にも駆られていた。

「景色もきれーい。スカイツリーが見えるよ!」

 伸英は荷物を置くと窓に近寄り、興奮気味に叫びながらぴょんぴょん飛び跳ねる。

「確かに、すごくいいね」

 謙一も景色を眺め、共感した。

「ロマンチックだね」

「うっ、うん」

 伸英に上目遣いで見つめられ、謙一はちょっぴりドキッとしてしまう。

「謙一くんは東京タワーとスカイツリー、どっちが好き?」

「どっちも、好きかな。あっ、あの、俺。ちょっとトイレ」

 伸英に無邪気な表情で見つめられ、気まずくなった謙一はそっちへ向かおうとしたら、

「謙一くん、私もおトイレ行きたい。おしっこ漏れそう。ずっと我慢してたの」

 腕をぐいっと引っ張られた。伸英は足をごぞごぞさせ、もじもじしていた。

「さっ、先にどうぞ」

「ありがとう謙一くん。さすが男の子だね」

 伸英は嬉しそうにトイレの中へ。

「あっ、ここ、ウォシュレットが付いてる。よかった♪」

 嬉しそうに呟きながら便器に背を向け、ショーツを脱ぎ下ろして便座にちょこんと腰掛けた。

「テスト勉強しないと」

 謙一は待っている間、家から持って来た物理の教科書とワークをリュックから取り出し、テスト範囲となっている範囲を黙読する。

 その最中、彼の携帯の着信音が鳴った。

「秀樹爺ちゃんか」

 番号を確認すると謙一はため息混じりに呟いて、通話ボタンを押した。

『ぅおーい、謙一ぃ。子孫作りには励んでおるかのう?』

 いきなりされたこんな質問。秀樹爺ちゃんはとても機嫌良さそうだった。 

「……秀樹爺ちゃん、もう切るね」

『待て待て謙一、今どこにおるんじゃ?』

「さっきホテルに着いたところ」

『そうか、そうか。伸英ちゃんはそばにおるかのう?』

「今トイレに行ってるけど」

『そうか。ということは、ウォシュレットで尻と、赤ん坊の生まれいずる場所を清めておるな。謙一、これは誘いの合図じゃぞ。謙一も伸英ちゃんももう一六。生物学的に考えてそろそろ子作りしても良い頃じゃろう。伸英ちゃんはすこぶる真面目で心優しく賢い子じゃし、いいヒップラインをしておるし、きっと広中平祐に匹敵するような頭の良い子を産むぞ。謙一よ、子孫作りのやり方は知っておるかのう? おまえが学校で今使っておる保健や家庭科や生物の教科書にも書かれておるじゃろう。ちゃんと予習はして来たか? 謙一の精子を伸英ちゃんの卵細胞に受精させ、着床させるのじゃぞ。その際、共有結合の物質みたいに互いの体を強く密着させにゃいかんぞ。もちろん素っ裸でな。謙一と伸英ちゃんの体を原子核、着ておる服を電子と仮定するとプラズマ状態じゃ』

「……」

 秀樹爺ちゃんからどうでもいいアドバイスを長々と聞かされて、謙一はほとほと呆れ返る。

『お爺ちゃぁん』

 そんな彼の耳元に、電話の向こうから女性の声が聞こえて来た。

『さっ、聡美ぃ、待て。今僕は謙一に、柏岡家の将来に関わる非常ぉに大事な話をしておるところなんじゃ』

『はい、はい』

 声の主は姉だった。

『謙一、変な電話が出来ないように、お爺ちゃんの携帯没収しておいたからね。あと、固定電話の方も謙一の携帯の短縮ダイヤル、一時的に解除しておいたから』

『オウマイゴッド。プリーズリターンミー、マイキュートグランドドーター聡美よ』

 秀樹爺ちゃんの嘆き声が電話の向こうから聞こえてくる。

「ありがとう姉ちゃん。秀樹爺ちゃんは俺の携帯番号はちゃんと覚えてないもんなぁ。じゃあ、切るね」

 謙一は礼を言って、清清しい気分で電話を切った。気を取り直して再び物理のワークを開き、テスト勉強に戻る。

「ふぅ、すっきりしたぁー」

 ほどなくして、水を流す音が聞えて来て伸英がトイレから出て来た。ほっこりとした表情を浮かべながら。

「じゃ、俺も行くか」

「あっ、あと五分くらい待って……お通じも、来たから」

 伸英はちょっぴり俯き加減で囁くような声で伝えた。恥じらいを持っているようだった。

「……分かった。待っててあげる」

 状況を察し、謙一は紳士的な対応を取る。

「ありがとう。それにしても謙一くん、ここでもお勉強するなんて真面目だね。新幹線に乗ってる時以外は息抜きしようよ。これは帰りの新幹線に乗るまで没収ぅ!」

 伸英は謙一の手元からパッと奪い取った。

「返せよ、伸英ちゃん」

 謙一は取り戻そうとするが、

「ダーメ、それぇー」

 伸英に物理のワークを傍らにポンッと投げ捨てられてしまった。さらに謙一は、伸英にガバッと抱き付かれベッドの上に仰向けに倒されてしまった。

「うわっ!」

 今、謙一は伸英に上から乗っかられ密着された状態だ。大相撲の決まり手で表現するならば浴びせ倒しを食らわされた直後のような感じである。

「どう謙一くん、動けないでしょう?」

 伸英はにやりと微笑む。

「のっ、退いて伸英ちゃん。重いっ」

「もう、謙一くん、女の子に重いは失礼だよ。私、まだ四〇キロ台なのに」

「いたたたっ」

 さらに強く密着された。

 ベッドがギシギシと軋む。

「のっ、伸英ちゃん、おっ、俺、トイレ、行きたいから」

「そういえば、そうだったね。ごめんね謙一くん。そろそろ行ってもいいよ」

 伸英はすぐに謙一の体から離れてあげる。

「やっと解放されたぁ」

 謙一はくたびれた様子で立ち上がり、トイレに入る。それとほぼ同じタイミングで、コンコンッと2103号室の出入口扉がノックされる音が聞こえて来た。

「はーい」

 伸英が鍵を開け、対応する。

「ノブエちゃーん、夕食バイキングに行こう!」

「食事代も宿泊料金に含まれているので、食べ放題よ」

 訪れて来たのは、歩未と真優子だった。

「了解。ねえ謙一くん。夕食はバイキングだって」

 伸英はこう伝えて、出入口すぐ横のトイレの扉をガチャッと開けた。

「うっ、うわぁっ!」

 タイミング悪く、謙一はちょうど用を足している最中だった。

「きゃっ!」

「ありゃりゃ」

 謙一の男のあの部分を、真優子と歩未にもばっちり見られてしまったのだ。

「ごめんね、謙一くん、ついうっかり開けちゃって♪」

 伸英はにこにこ笑いながらこう言って、トイレの扉をそーっと閉める。

「ケンちゃんの、思ったよりちっちゃかったね。それに、まだほとんど生えてなかったよ」

 歩未はくすくすと笑ってしまう。

「歩未さん、謙一さんに失礼よ」

 真優子は頬を少し赤らめながら注意する。

「鍵掛けるの、忘れてたよ」

 ほどなくしてトイレから出て来た謙一、悲しげな表情を浮かべていた。

「謙一くん、バイキングで美味しい物いっぱい食べて、さっきのことは忘れちゃおう」

 伸英は肩をポンッと叩いて慰めようとする。

「ミッちゃんとヒサちゃんも呼びに行かなくちゃね」

 歩未の呟き。

 四人がこのお部屋から出た後、2108号室へ貢と久晃を呼びに行こうとしたら、謙一の携帯宛に一通のメールが届く。

「貢と久晃、もうレストランにいるって」 

 確認し、謙一はすぐに伝えた。

「あの子達ったら、また勝手な行動して」

 真優子は困惑顔。

 四人もレストランへ。

 三人用の円形テーブル席に謙一、貢、久晃。女の子三人はそのすぐ隣の同じタイプのテーブル席に固まって座る。

「貢、予想通りのものを選んでるな。野菜もちゃんと食べろよ」

 貢の皿を見て、謙一はやや呆れた。

「そりゃあおいらの大好物だからな」

 貢はナイフとフォークを使い、幸せそうな表情を浮かべながらモグモグ美味しそうに頬張る。彼は松坂牛ステーキやローストビーフ、ドネルケバブ、北京ダックなどの肉料理を中心に選んでいたのだ。

「量もすごいな。五人前はあるだろ」

「大井川君の選んだものを全て合わせると、三千キロカロリー以上はありそうです。現役力士の一食の摂取量に匹敵しますね」

 謙一と久晃は海鮮料理、

「あー、唐辛子が効いてて美味しい♪ マユコちゃんとノブエちゃんもどう? 一口」

歩未はトムヤムクン、ケジャン、麻婆豆腐などの激辛料理。

「いいです」

「私、辛過ぎるのは無理だよぅ」

真優子と伸英はフルーツやモンブランなどのデザート類が中心だ。

「ところで貢さん、久晃さん、お部屋の鍵は持ってる? オートロックよ」

「ボクが持ってるよーん」

 真優子が問いかけると久晃はすぐにそう答え、鍵をかざした。

「さすが久晃さん、しっかりしてるわね」

「いえぇ、当たり前のことですのでぇ」

 褒められると、いつもの癖で謙遜。

「ここのホテル、大浴場もあるみたいなので、ご飯済んだら入ってみませんか?」

 真優子は誘ってみる。

「いいねえ。部屋にもお風呂付いてるけど、それじゃワタシ物足りないよ」

「私も大浴場に入るぅ。広いお風呂は最高だよね。謙一くん達もそっちを利用してみたら?」

 歩未と伸英は快く乗った。

「貢、久晃、どうする?」

「入ってみようかな。せっかくあるんだし」

「ボクもそっちに行ってみるよん」

 こうして男子三人も利用することに。食事を済ませるとすぐに男湯へと向かっていく。

 女の子三人も食事を済ませた後、女湯へと向かっていった。

 女湯脱衣場。

「ここの湯船、横綱級に広いみたいだからクロールの練習しようっと」

「歩未さん、ここで泳ぐのは禁止よ。注意書きを見なさい」

「歩未ちゃん、ここではゆったり浸かるのがマナーだよ。泳ぐのはプールでね」

三人とも幼い子どものように、恥ずかしげも無く服を脱いで堂々と裸体をさらけ出し、バスタオルは手に持っていた。 

「ノブエちゃん、すっぽんぽんになったことだし、ワタシとお相撲ごっこしよう。はっけよぉーい、のこった!」

「あんっ!」

 伸英は一五センチくらい背の低い歩未におっぱいを両手でわし掴みにされ、あっという間に壁際に押し込まれてしまった。

「歩未さん、やめなさい。伸英さん嫌がってるでしょ」

 真優子は優しく注意しながら歩未に背後から近寄る。

「それっ、小股掬いっ!」 

「きゃんっ!」

 真優子はスルンッと転び床にびたーんと尻餅をついた。さらには足がM字開脚状態になりあられもない姿に。

「マユコちゃん、足腰もっと鍛えた方がいいよ」

 歩未は片方の手で伸英を壁に押さえ付けたまま、もう片方の手で真優子の太ももの内側を抱え込み、バランスを崩すという器用な技を繰り出したのだ。

「歩未さん、動き速すぎ」

 真優子はあっと驚く。

「歩未ちゃん、あんまりイタズラしちゃダメだよ」

伸英は歩未の両腕をしっかり抱え身動きを封じ、宙にふわっと浮かした。さらに左右に振り子のようにぶらんぶらん揺らす。

「あーん、ノブエちゃぁん。離してぇー。ワッ、ワタシ、吊り上げられると何にも抵抗出来なくなっちゃうの」

「それが歩未さんの弱点なのね」

 真優子はにこっと笑い、歩未のわき腹をこちょこちょくすぐり始めた。

「まっ、マユコちゃぁん。やめて、やめてぇ。キャハハハッ。ワタシ、くすぐられるのもすごく苦手なんだーっ」

「歩未ちゃん、もうお相撲の技掛けちゃダメだよ」

「わっ、分かりましたぁ」

「いい子だね」

 歩未が苦し紛れに返事をすると、伸英はそっと下ろしてあげた。真優子もくすぐり攻撃を止めてあげる。

「ワタシ、女の子としてもちっちゃいから、小学校の頃に何回か女相撲大会に出たことがあるんだけど、よく吊り上げられて一回戦負けしてたよ。それで悔しくて、足腰と瞬発力も鍛えようと思うようになったんだ」

 歩未は照れ笑いしながら打ち明ける。

浴室へ入った三人は、隣り合うようにして洗い場シャワー手前の風呂イスに腰掛ける。出入口に近い側から真優子、伸英、歩未という並びだ。

「歩未さん、シャンプーハットはそろそろ卒業しなきゃ。幼稚園児みたいよ」

 真優子はくすくす笑う。

「私も、今はさすがに使ってないな」

 伸英は、歩未の方をちらりと眺めた。

「べつにいいでしょ」

歩未はにこにこ顔で堂々と言い張り、シャンプーを押し出して髪の毛をゴシゴシ擦り始める。

「歩未ちゃん、かわいい! 妹に欲しいよぅ。髪の毛洗うの、手伝ってあげよっか?」

 伸英は歩未のその仕草にときめいてしまった。

「それはいい、自分でやるから」

 歩未は頬をポッと赤らめた。

「歩未ちゃんますますかわいいよ。真優子ちゃんも、眼鏡外したお顔すごくかわいいね」

 今度は真優子の方を振り向く。

「あっ、ありがとう、伸英さん。あの、伸英さんは今度の記述模試、自信ありますか?」

「うーん、どちらかと言われればないよ。マークはなんとかなるけど、記述になると特に数学は全然出来なくなっちゃう」

「わたしも同じです。久晃さんは記述模試でも数学と物理は、いつも満点近く取れてるので羨ましいです」

 伸英と真優子が小声でおしゃべりしながら体を洗い流している最中、

「わぁーいっ!」

 歩未のはしゃぎ声と共に、ザブーッンと飛沫が上がる。湯船に足から勢いよく飛び込んだのだ。さらに犬掻きのような泳ぎをし始めた。

「歩未ちゃん、はしゃぎ過ぎだよ」

「歩未さん、小学校低学年の子みたいね」

 伸英と真優子は湯船の方を振り向き、微笑ましく眺める。

「歩未ちゃん、周りのお客様に迷惑かけちゃダメだよ」

 体を洗い終えると伸英は再度歩未に注意して、湯船に静かに浸かった。

「ちょうどいい湯加減だし、広くて最高。わたし、お風呂大好きなの。夏は朝と学校から帰ってからと、夜の一日三回入ってるよ」

 真優子も同じようにお行儀良く浸かると、湯船に足を伸ばしてゆったりくつろぎながら嬉しそうに語る。

「真優子ちゃん、し○かちゃん並だね。でもあんまり入り過ぎるとお肌ふやけちゃうよ。あの、真優子ちゃん。お膝ぶつけた所はもう大丈夫?」

 伸英は心配そうに尋ねた。

「うん、もうとっくに痛み引いたよ。心配してくれてありがとう」

 真優子がそう言ったその時、

「ワタシもノブエちゃんが絆創膏貼ってくれたおかげですぐに治ったよ」

 歩未が二人の側へ近寄ってくる。

「どういたしまして。ねえ歩未ちゃん、明日は、朝からずっと両国国技館でお相撲さん見て過ごすの?」

「いやいや、夕方までは東京観光するよ。大相撲はテレビ中継されない番付下の方の力士の取組見ても、迫力なくてあんまり面白くないからね。十両以上からだよ、面白いのは」

 伸英の問いかけに、歩未は笑顔でこう答えた。

「そっか。私もその方がいいよ。私、明日は上野動物園へ行きたいな」

「ワタシもーっ。日本の動物園の横綱だもんね」

「わたしは、そこと併せて国立科学博物館へも行きたいです」

「いいねえ。ガイドブック見たけどめっちゃ面白そうだったし。ところで話は変わるけどマユコちゃん、ヒサちゃんのこと好きでしょう?」

「もう、歩未さん。幼稚園時代からもう何十回、いや何百回その質問してるのよ。この間の遠足でも恋占いの石の所で訊いて来たし。いつも言うけど、あの子はわたしの勉強のライバルなの」

 真優子は淡々とした口調で即否定する。

「久ちゃん、昔からすごくいい子で真面目で賢いもんね。真優子ちゃんが好きになっちゃう気持ちはよく分かるよ」

 伸英はほんわかとした表情で言った。

「だから違うって」

 真優子は困惑顔だ。

「マユコちゃん、もういい加減、ヒサちゃんと付き合っちゃいなよ。見た目と運動能力はの○太くん、頭脳は出○杉くんなところが気に入ってるんでしょ? 両親のお仕事もお互い大学教授なんだしさぁ」

 歩未はにこにこ笑いながら、真優子の肩をペチペチ叩く。

「いいって」

 真優子は俯き加減で言う。

「マユコちゃん、お顔赤いよ」

 歩未はにやけ顔で指摘した。

「これは、体が火照って来たからなの。わたし、もう出るね。あつい、あつい」

 真優子はそう告げて焦るように湯船からバシャーッと飛び出し、脱衣場へと早足で向かっていく。

(今何キロあるかなあ?)

 そしてすっぽんぽんのまんまそこに置かれてある体重計にぴょこんと飛び乗ってみた。

「……えええええっ!? 身体測定の時より、二キロも増えてるぅ。なっ、なんでぇ!? バイキング食べ過ぎた?」

 目盛を眺めた途端、真優子は目を見開き大きな叫び声を上げた。

「マユコちゃん、贅沢な悩みだね。少々太ったっていいじゃん。ワタシは風に飛ばされないようにあと五キロくらいは増やしたいのに」

 歩未も駆け寄って来て、真優子に慰めの言葉をかけてあげる。

「歩未さんは標準以上に痩せてるからそれでいいけど、わたしは違うもん」

「体重気にした時のマユコちゃん表情、タヌキっぽくってかわいかったよ」

「もう、ひっどーい。罰としてくすぐり攻撃しちゃおう」

「あーん、やだぁ」

 すっぽんぽんの真優子に追われ、歩未もすっぽんぽんで逃げ惑う。

「歩未ちゃん、サ○エさんに追われてるカ○オくんみたいだね」

 伸英も脱衣場へ上がって来て、にこにこ微笑みながら眺めていた。

同じ頃、

「一四七キロかぁ。身体測定時よりさらに増えてしまったな。夏コミ前に一五〇キロ超えてしまいそうだぜ」

 男湯脱衣場にて、貢も自分の体重を量っていた。トランクス一丁で。

「貢、太り過ぎ。貢の身長でも八〇キロくらいが理想だろ。これ以上太ると絶対体壊すぞ。あの女の子達三人合わせた体重よりも多いんじゃないのか?」

「きっとそうであろうな」

 貢は苦笑顔で答える。

「ボクは今日歩き回ったせいか、少し減って四九キロになっていました。ボクは柏岡君と同じく太りにくい体質でありますからぁ」

 久晃からの報告。

「俺も五〇キロ無いよ。貢はますますぶよんぶよんになっていくなぁ」

 謙一は貢の上半身を眺め、にこにこ笑う。

「おいら、疑問に思うんだが、リアル力士って、おいらより背が低くて体重は多いのに、おいらよりずっと体が引き締まってるやつも多いだろ」

「そりゃあ大井川君とはトレーニング量が天と地ほど違いますからぁ。力士って体脂肪率は意外と低いですよん。大井川君も力士の稽古のような猛トレーニングを長期的に積めば、現役時代の朝青龍みたいな体つきになれますよん。そのお方と身長・体重の値が近いですしぃ」

 貢の疑問を、久晃はすぐさま一刀両断する。さらに助言もしてあげた。

「トレーニングなんて、おいらには百パー無理ぽ。三日坊主どころか三秒坊主だぜ」

 貢はそう言ってにっこり笑う。

 男子三人がこうしているうちに、女の子三人組は大浴場から出てすぐの休憩所へ移動していた。

「どれにしようかな? ジンジャーエールかな」

「わたしはレモンミルクティーにするわ」

「私は、抹茶ラテにしよう」

 自販機でお目当てのドリンクを買うと椅子に腰掛け、風呂上りの一杯を楽しんでいたところへ、

「いい湯でござったぁー」

「ホテルに大浴場があるのはけっこう珍しいかも」

「あれれっ、女性方は先に出ていたのですか」

 男子三人も休憩所に姿を現した。 

「お風呂上りのミッちゃん、力士っぽさがますます醸し出されてるね」

 歩未は浴衣姿の貢を楽しそうにじーっと眺める。

「貢さん、どう見ても相撲取りよ」

 真優子は思わず笑ってしまった。

「浴衣だもんね。みっちゃん、すごく格好いいよ」

「そっ、そんなことはぁ」(なんか、女子特有の匂いが……)

 伸英に褒められ、貢はかなり動揺する。女の子三人の体から漂ってくる、ラベンダーやオレンジ、ミントのシャンプーや石鹸の香りが、彼の鼻腔をくすぐっていた。

「おう、あそこにプリクラがあるじゃん。みんなで一緒に写ろう!」

 歩未は今いる場所から数十メートル先を手で指し示す。

 ホテル内のアミューズメント施設、言い換えればゲームコーナーであった。

「けっ、結構です。おいらはフレーム内に収まらないだろうし」

「ボクもいいですぅ」

 貢と久晃は速やかにその場から逃げ出した。

 しかし、

「走るの遅いよ、ミッちゃん、ヒサちゃん」

 歩未にあっという間に追いつかれ前に回られてしまう。

 次の瞬間、

「うおっ!」

 貢は前につんのめるようにして倒れ、

「あーれー」

 久晃は尻餅をついた。

「ただいまの決まり手は、引っ掛けで貢さんに、突き倒しで久晃さんに、歩未さんの勝ちね」

 真優子は微笑み顔で決まり手を告げる。

歩未はさっき、貢の腕をぐいっと前へ引っ張りバランスを崩させてこかし、久晃の胸をとんっと突いて倒したのだ。貢との身長四〇センチ、体重百キロ以上もの体格差も全く物ともしなかったのである。

「なんという、パワー」 

「ひいいい、恐ろしやぁー」

 貢と久晃はびくびく怯えていた。

「ミッちゃん、もっと足腰鍛えなきゃ。まるで引退直前の小錦さんみたいだよ。ケンちゃんは、もちろん一緒に写ってくれるよねえーっ?」

「俺も、いい。プリクラは、女の子だけで撮った方が、楽しいよ」

 歩未ににじり寄られた謙一は苦笑いを浮かべながらそう伝えて、エレベーター乗車口へ向かってタタタッと走り出す。

「待って!」

「はやっ!」

 しかし彼もあっという間に追いつかれてしまった。

「そりゃぁっ!」

「うわぁっ」

 そして一瞬のうちに歩未に体を掴まれ、豪快な捻り技を食らわされてしまった。謙一はごろーんと床に転がる。

「ただいまの決まり手は……内無双ね」

 真優子は少し考えてから告げた。

「その通りだよ」

 歩未は嬉しそうに言う。右手で謙一のズボンの裾をガシッとつかみ、左腕を謙一の太ももの内側に通した状態で、捻り倒したのだ。

 貢と久晃は謙一が技を掛けられている間にエレベーターに乗り込んでしまった。

「ひどいよ、坂東さん」

「大丈夫? 謙一くん。歩未ちゃん、男の子達にもお相撲の技かけちゃダメだよ」

 伸英は手を差し出してくれた。

「あの、伸英ちゃん、俺、一人で起きれるから」

けれども謙一は照れくささからか拒否し、自力で立ち上がる。

「ごめんね、ケンちゃん。一応、手加減して投げたつもりだけど」

 歩未は申し訳なさそうに謝っておいた。

「けっこう効いたよ。それにしてもプリクラか……」

 謙一は気が進まなかったが、

「ご当地の限定プリクラ、あるかなぁ?」 

「謙一さん、高校時代の思い出になるので、一緒に写りましょう」

 伸英と真優子はかなり乗り気であった。

「このフレームにしよう!」

歩未はいくつかあるプリクラ専用機の一つの前で立ち止まる。彼女の選んだ東京スカイツリーのフレームに他の三人も快く賛成した。四人はその専用機内に足を踏み入れると、前側に歩未と謙一が並ぶ。

「一回五百円か。けっこう高いね」

謙一はこう感じながらも気前よくお金を出してあげた。

    *

 撮影落書き完了後、

「おう、めっちゃきれいに撮れてる!」

 取出口から出て来た十六分割プリクラをじっと眺める歩未。自分が見たあと他の三人にも見せる。

「坂東さん、謙一くんとデート、ハートマークとかって落書きしないで」

 謙一は迷惑顔になる。

「いいじゃん、ケンちゃん、ほとんど事実なんだし」

 歩未はてへっと笑い、舌をペロッと出した。

「真優子ちゃんは、相変わらず表情がちょっと硬いね」

「本当だ。なんか気難しい弁護士みたい」

 伸英と歩未の突っ込み。

「あれれ? 笑ったつもりなんだけどな。生徒証の写真はもっと表情硬いよ」

 真優子は照れくさそうに打ち明ける。

「私も生徒証の写真は、そんな感じだよ」

 伸英がさらりと打ち明けると、

「伸英さんも同じなのね、よかった」

 真優子に笑みが浮かぶ。

「ワタシも生徒証の写真は表情めっちゃ硬いよ。あの、ワタシ、次はこれがやりたいな」

 歩未はプリクラ専用機すぐ向かいの筐体を指し示した。

「歩未ちゃん、動物さんのぬいぐるみが欲しいんだね?」

「うん!」

 伸英からの問いかけに、歩未は弾んだ気分で答える。歩未やりたがっていたのはお馴染みのクレーンゲームだ。

「動物のぬいぐるみは特にかわいいよね」

 真優子は同調する。

「あっ! あのナマケモノのぬいぐるみさんとってもかわいい! お部屋に飾りたぁい」

 お気に入りのものを見つけると、歩未は透明ケースに手の平を張り付けて叫び、ぴょんぴょん飛び跳ねる。

 めっちゃかわいいな。

 謙一はその幼さ溢れるしぐさに見惚れてしまっていた。

「歩未ちゃん、あれは隅の方にあるし、他のぬいぐるみさんの間に少し埋もれてるから、難易度は東大級だよ」

「大丈夫! むしろ取りがいがあるよ」

 伸英のアドバイスに対し、歩未はきりっとした表情で自信満々に言った。コイン投入口に百円硬貨を入れ、操作ボタンに両手を添える。

「歩未ちゃん、頑張れーっ!」

「歩未さん、落ち着いてやれば、きっと取れるわよ」

「坂東さん、頑張って」

 三人はすぐ後ろ側で応援する。

「ワタシ、絶対取るよーっ!」

歩未は慎重にボタンを操作してクレーンを動かし、お目当てのぬいぐるみの真上まで持っていくことが出来た。

 続いてクレーンを下げて、アームを広げる操作。 

「あっ、失敗しちゃった」

 ぬいぐるみはアームの左側に触れたものの、つかみ上げることは出来なかった。

歩未が再度クレーンを下げようとしたところ、制限時間いっぱいとなってしまった。クレーンは自動的に最初の位置へと戻っていく。

「もう一回やるもん!」

 歩未はとっても悔しがる。お金を入れて、再チャレンジ。しかし今回も失敗。

「今度こそ絶対とるよ!」

この作業をさらに繰り返す。歩未は意外と頑張り屋さんなのだ。

 けれども回を得るごとに、

「全然取れなぁい。何でよ?」

 歩未は徐々に泣き出しそうな表情へ変わっていく。

「あのう、歩未さん、他のお客さんも利用するので、そろそろ諦めた方がいいかもです」

 真優子は慰めるように言った。

「このままだと歩未ちゃんかわいそう。ねえ謙一くん、小学五年生の頃、歩未ちゃんに裁縫セットを歩未ちゃんに貸してもらったことがあるでしょ。恩返ししてあげて」

伸英が肩をポンッと叩いて命令してくる。

「……よく覚えてるね。でも俺も、クレーンゲーム得意じゃないし、真ん中ら辺のシマウマのやつはなんとかなりそうだけど、あれはちょっと無理だな」

 謙一は困惑顔で呟いた。

「ケンちゃん、お願ぁい!」

「……わっ、分かった。取ってあげる」

 歩未に寂しがる子犬のようにうるうるとした瞳で見つめられると、謙一のやる気が急激に高まった。クレーンゲームの操作ボタン前へと歩み寄る。

「ありがとう、ケンちゃん。大好き♪」

 するとたちまち歩未のお顔に、笑みがこぼれた。

「さすが謙一くん、柏岡家の男の子だね」

「謙一さん、心優しいですね」

 歩未と真優子も、彼に対する好感度が高まったようだ。


(まずい。全く取れる気がしないよ)

 謙一の一回目、歩未お目当てのぬいぐるみがアームにすら触れず失敗。

「ケンちゃんなら、絶対取れるはず♪」

 背後から歩未に、期待の眼差しで見つめられる。

(どうしよう)

 当然のように、謙一はプレッシャーを感じてしまう。

「謙一くん、頑張れーっ!」

「謙一さん、ご健闘を祈ります!」

(よぉし、やってやるぞ)

 伸英と真優子からの声援を糧に謙一は精神を研ぎ澄ませ、再び挑戦する。

 しかしまた失敗した。アームには触れたものの。

けれども謙一はめげない。

「ケンちゃん、頑張ってーっ。さっきよりは惜しいところまでいったよ」

 歩未からも熱いエールが送られ、

「任せて坂東さん。次こそは取るから」

謙一はさらにやる気が上がった。

 三度目の挑戦。

「……まさか、本当にこんなにあっさりいけるとは思わなかった」

 取出口に、ポトリと落ちたナマケモノのぬいぐるみ。

謙一は、歩未お目当ての景品をゲットすることが出来た。ついにやり遂げたのだ。

「やったぁ! さすがケンちゃん」

 歩未は大喜びし、バンザーイのポーズを取った。

「謙一くん、おめでとう! 三度目の正直だね」

「謙一さん、素晴らしいプレイでしたね」

 伸英と真優子がパチパチ拍手しながら褒めてくれる。

「たまたま取れただけだよ。先に、坂東さんが、少しだけ取り易いところに動かしてくれたおかげだよ。はい、坂東さん」

 謙一は照れくさそうに語り、歩未に手渡す。

「ありがとう、ケンちゃん。ナマちゃん、こんばんは」

 歩未はさっそくお名前をつけた。受け取った時の彼女の瞳は、ステンドグラスのようにキラキラ光り輝いていた。このぬいぐるみを抱きしめて、頬ずりをし始める。

「歩未ちゃん、幸せそうだね」

 伸英はにこやかな表情で話しかけた。

「うん、とっても幸せだよ。ワタシ、ミッちゃんのぬいぐるみもあったら欲しいなぁ。だってミッちゃん、ト○ロみたいだもん。癒し系だよ」

「確かにみっちゃん、ト○ロっぽいよね。私もみっちゃんの等身大ぬいぐるみがあったら欲しいーっ! 久ちゃんもの○太くんっぽいからぬいぐるみにしたら見栄え良さそう」

「ヒサちゃんは、お勉強のすごく出来るの○太くんだね」

「歩未さん、伸英さん、貢さんと久晃さんにちょっと失礼でしょ」

 真優子はくすくす笑いながら注意する。

「貢と久晃のぬいぐるみかぁ」

 謙一も想像し、思わず笑ってしまった。

 その頃、当の貢と久晃は2108号室でウェブサイトを見て遊んでいたのであった。

ここにいる四人はこのあと最後の締めくくりとしてモグラ叩きゲームをすることに。

「歩未さん、反射神経も凄まじく優れてるわね」

「歩未ちゃん、手が四本あるみたい」

「俺達三人で挑んでも、坂東さんのスコア出せそうに無いな」

 歩未の機敏な手の動きに、他の三人は唖然。歩未は制限時間内に穴から出て来たモグラを一匹も逃さず叩き、見事パーフェクトスコアを出したのだ。

「このゲーム、横綱級のすごい爽快感だよ」

 歩未は満面の笑みを浮かべ、快哉を叫ぶ。

 これにて四人はゲームコーナーを後にし、それぞれの部屋へと戻っていった。

「よぉし、やるぞぅ!」

 歩未はお部屋に入るとそのままベッドの上に乗っかり、足をガバッと大きく広げて股割りをし始めた。

「トレーニング、今日も欠かさずやるのね」

「うん、寝る前の日課だからね。健康にも良いし。マユコちゃんが飽きもせず毎日勉強してるのと同じことだよ」

「勉強は毎日必要だと思うけど」

 真優子はやや呆れ気味にこう言いながら、英語のワークの確認をし始めていた。

 歩未はその後も腕立て伏せ、腹筋背筋運動、屈伸をこなしていき、ベッドにごろんと寝転がった時にはまもなく日付が変わろうという頃。

それからさらに数十分後、2103号室の謙一も勉強道具をリュックに片付け、寝る準備をする。電気を消して伸英の隣のベッドに上がると、

「ねえ謙一くん、私と一緒に寝て」

 伸英が突然こんなことをお願いして来て、同じベッドに移動してくる。

「ダッ、ダメだよ」

 謙一は慌ててきっぱりと断った。

「私、動物さんのジャンボぬいぐるみを抱いてないとぐっすり眠れないの。おウチから持ってこようと思ったんだけど、大き過ぎてリュックに入らなかったから。だから」

「俺をぬいぐるみの代わりにしようと思ったのか。ダメダメ。一緒に寝るのだけはダメ」

 強くせがまれても、断固拒否する。

「あーん、お願ぁい」

 伸英がもう一度頼んだちょうどその時だった。

ピカピカピカッとジグザクに走る稲光が窓の外に見えた。

その約三秒後、

ドゴォゴォーンと強烈な爆音が鳴り響いた。

「びっくりしたぁー。けっ、謙一くん。さっきの雷、めっちゃすごかったね。近くに落ちたのかも……」

「あっ……あの、伸英ちゃん」

 謙一はかなり気まずい気分になる。伸英が謙一の膝の辺りにコアラのようにしがみ付いて来たのだ。

「ごめんね謙一くん、私、今でも雷さんが怖いの」

 伸英は顔をこわばらせ、プルプル震えていた。

「そっ、そうだったんだ」

 謙一は意外に思った。

 その時、

ドゴォーン! と強烈なのがさらにもう一発。

「謙一くぅん、怖いよう」

 伸英はさらに強く抱きしめて来た。

「いっ、痛いよ伸英ちゃん」

「一緒に寝てぇぇぇー。お願い、お願ぁい」

「……しょっ、しょうがないなあ。今回だけだよ」

 甘えるような声で言われ、謙一はしぶしぶ承諾した。

「ありがとう謙一くん。恩に尽きるよ。おへそしっかり隠さなきゃ」

 こうして伸英は、謙一と同じ布団にしっかりと潜り込む。

「あの、伸英ちゃん、あんまり密着しないでね。暑いから」

「うん!」

 雷はまだ、数十秒おきに鳴り続けていた。

 同じ頃、2105号室の歩未と真優子は、

「マユコちゃん、雷怖いよぅ」

「大丈夫よ歩未さん。寒冷前線によるものだから短時間で止むと思うので」

ベッドの布団に二人(間に謙一に取ってもらったナマケモノのぬいぐるみ)で包まって過ごしていた。

 2108号室の貢と久晃は、

「雷の音、うるさ過ぎる。テレビの音が聞こえにくいではないかぁ」

「天気予報通りになっちゃいましたか。どうせ鳴るならあと二時間くらい後にして欲しかったですね」

 U局で関西よりも先行で放送されている深夜アニメを熱心に視聴していた。

「本当に、早く治まって欲しいものだな」

 貢は若干、雷に怯えていたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ