初恋の貴方
お久しぶりの投稿です。
最後まで読んでいただけるとうれしいです。
「初めて出会ったのは、まだ私がエルダーテイルを初めて間もない頃でした。
右も左もわからぬまま、レベル不相応なフィールドダンジョンに迷いこんでしまった私。
沢山のエネミーに囲まれてもうダメかと思ったその時、貴方は颯爽と現れ、瞬く間に全てのエネミーを倒してしまいました。
文字チャットで『町まで守ってやる』とだけ告げて私に付き添っていただき、町に着いたら『気をつけるのだぞ』とだけ言い残して去っていく、その寡黙なお姿は正しくヒーローそのものでした。
私が若い女だと見るやベタベタとした下心を隠しもせずに寄ってくる男どもとは大違いでしたわ。
その後私もレベルが上がり、大きなレイドイベントなどで遠目にそのお名前を拝見することはございましたが、ついぞお声をおかけすることは出来ませんでした。
私の周りには常にくだらない男どもが取り巻いていましたしね。
そして大災害に巻き込まれて......
周りの者が悲観にくれる中、私の心は躍っておりました。
貴方に会える。
整備されていない交通機関。
機能停止した妖精の輪。
冒険者の身とはいえ女の一人旅、決して楽な旅路ではございませんでした。
グリフォンのような便利なものも持っていませんでしたしね。
でも、ついに貴方に直接お会いして、私の胸の内を伝えることができる。
その一心でミナミからアキバまで、長い道のりを駆けてまいりました。
そしてついに再開した貴方が……
まさかこーんなちみっこになっていただなんて」
「うるさい!誰がちみっこだ!」
「初恋の人がまさか、こーんな可愛らしくなってしまっているだなんて、ショックでしたわ」
「主君!この無礼な女狐を成敗してもよいか!」
「あー、いや、この人こう見えてミナミの偉い人だから、何かあると色々と困るからそっとしといてもらっていいかな」
「もちろん今はシロ様一筋ですけどね。さあシロ様、一緒にミナミとアキバのこれからについてじっくりと話し合いませんこと? もちろん二人っきりで……」
「主君!やっぱりこの女叩き落とすぞ!」
「やめてアカツキ! 濡羽さんもそんな窓から覗きこんでないでせめてこっちに入ってきてください!
ここ二階なんですから!」
「あら、シロ様から私をお部屋へ招いてくださるなんて光栄ですわ。さあそこの小姓は空気を読んでさっさと次の間にさがりなさい」
「誰が小姓か! 初恋がどうとか言った舌の根も乾かぬうちに、しゅくん! やはり此奴たたっ斬る!」
「やめてアカツキ!」
「おや、シロエちの部屋がなにやら賑やかですにゃ。若さというのはうらやましいものですにゃあ」
最後までお読み頂きありがとうございました。
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