二話 一葉の戸惑い
また真相を追う事になった私…
ですが私には会っておかなければならない者が居ました
「245番!面会だ!」
一葉
「はい!」
私は悩んでいました。
何と一葉に説明したらよいのかと…
一葉を待つ時間は凄く長く感じました。
「時間は分かっているな、おとなしくしろよ」
一葉
「はいはい、分かってますよーだ
先生、久しぶりね」
久々に会った一葉はすっかり明るく普通の女の子と変わらなくなっていた
私
「や、やぁ。久々だね」
一葉
「どうしたの?何かあった?」
私
「いや、何も」
話せない、話せる訳がない。一葉が今こうして明るく居るのは双葉と暮らす事を夢見ての事だろう
一葉
「ふーん、何かあったんだね?」
私
「何もない、本当だよ。」
一葉は私の顔をじっとみて、人差し指をそっと自分の眉間に当てた
一葉
「シ・ワ!
先生ってね、嘘つく時眉間にシワが寄るんだよ。」
とっさに私は自分の眉間に人差し指を当ててみた
一葉
「やっぱり何かあったんだ?シワなんか寄ってないよ。
先生も未熟ね、患者の私に騙されるなんて」
私
「患者ではないだろう?私は一葉の保護者だ」
一葉
「はは、そうだった。
そうか!何かあったって事は双葉の事ね?
どうしたの?私に早く会いたいって泣いてる?」
私は言葉を返すことが出来なかった
一葉
「やだ、冗談よ!怒った?
久々に会えたから嬉しくて、先生?何か言ってよ」
今にも泣きだしそうな一葉の声に、やっと決心が固まった
私
「一葉、落ち着いて聞いてほしい。
双葉は先日亡くなりました。」
一葉
「先生、冗談きついよ。どうしてそんな事言うの?」
私
「残念ながら本当です。当日、私の携帯に双葉から着信がありました。ひどく怯えた様子で、知らない女の子が入ってきたと…
すぐに向かいましたが、間に合いませんでした。
腑甲斐ない保護者で申し訳ありません。」
頭を下げた私に、一葉はこう声を掛けてきた
一葉
「双葉、死んじゃったんだ…
殺されたのね、清水美希に」
私は驚いた、何故一葉は清水美希の事を知っていたのか
私
「何故それを?どうして清水美希の事を?」
一葉
「分かるのよ、私の首から下は清水美希という子の体なんでしょう?
この体から、お父さんに対する憎しみが、そして私に対する憎しみが沸き上がってくるみたい
きっと双葉は私と間違われて殺されたのね…」
そう言うと、一葉は顔を伏せ
わんわんと泣いた、自分の体が枯れるほど
面会時間は過ぎていたが、看守はその光景に話を止める事が出来なくなっていた
私
「一葉、私はまた真相を追うつもりです。
どうやら被害者はまだいるようなので」
一葉
「お父さんの日記…きっとそれに答えがある」
私
「日記?あの三冊には目を通しましたが問題ありませんでした」
一葉
「それは、私の育成日記だもん
書斎にあるお父さんの日記よ」
私
「分かりました。行って調べてみます。」
一葉
「先生?私は一体どっちなのかな?
一葉と清水美希、どっちなのかな?」
私
「貴方に罪は全くありませんよ。貴方は唯一、酒井一葉という存在なのですから」
それを聞くと一葉は安心したように笑いました
一葉
「ありがとう先生。私は生きていてもいいんだね?」
私
「当たり前です。待っていますよ一葉」
一葉
「はい。」
一葉は涙を流しながら扉の向こうに行ってしまいました
一葉のように傷つき怯える子供たちが居る
私は、そんな子供たちの為に立ち止まる訳にはいかないのです。