第1章 謎の青年
「なかなか目覚めないよ」
「もうダメじゃね~」
と、二人の少年が会話をしていた。
一人はロウ・コンドン(15歳)真面目で素直な少年だが、見た目は華奢な女子のようである。
もう一人はソージョー・ワーム(15歳)といい、いたずら好きで活発な少年だ。
「ほらほら、二人とも、お医者様は命に別状はないと言っていたじゃないの。看病は私とレイカがするから、外で遊んできなさい」
と、言ったのは、ロージア・ブルー(23歳)という金髪の女性だ。
ロウとソージョーは孤児だ。
半年前、コンドン一家とワーム一家で船旅をしている時に嵐に会い、生き延びたのはロウとソージョーの二人だけだった。
二人はカーワ村近くの海辺で倒れていて、それをロージアとレイカが発見し、介護をした後、二人の少年は彼女たちの住む家に引き取られたのだ。
そして今は、二十歳前後の男性を介護しているのだ。
二日前に彼女たちの家の近くで意識を無くして倒れていたのだ。
ロウとソージョーの話では、突然空から落ちてきたと証言している。
その時に頭を打って、意識を無くしたと思われる。
夕方……
茶色の長い髪をポニーテールにし蒼い瞳をした女性が帰ってきた。
レイカ・ルー・ナーシー(23歳)という女性だ。
実はレイカとロージアは、あの最強の戦士リュウ・シー・ドーラの弟子だ。
だが、3年前病で他界していた。
この世界の平均寿命は120歳くらいだ。
リュウだけでなく、他の戦士たちも他界し、唯一生き残っているのはリュウの父、ゴン・ドーラだけだ。
今でこそ隠居の身だが、彼は当時10歳という年で2度も魔王たちと戦った戦士だ。
レイカとロージアが夕食の仕度をしようとした時、ロウとソージョーが騒ぎ出した。
「お姉ちゃんたち来て!」
「どうしたの?」
意識を失っていた男が意識を取り戻したのだ。
「ん?……ここは?どこぜよ?」
「なんて言ったの?」
と、ロウがレイカとロージアに聞いた。
「ワシは確か……ん?おまんらがワシを助けてくれたんか?」
「……?」
「ああ、外国の人か……マイネーム・イズ・リョウマ・ナカオカ」
もちろん通じるはずがない。
「困ったのう……言葉が通じんぜよ」
するとレイカがある実を渡した。
「なんぜ?これは?見たことのない木の実じゃき」
男は実を食べた。
これはホンヤックの実というもので、食べれば一部を除く、魔法世界の言葉が分かるようになり話せるようになる実だ。
「わしの言葉わかるか?」
「ええ」
「まず、助けていただき感謝します。わしの名は中岡龍馬といいます」
レイカたちも自分たちを紹介した。
「ワシは土方総司という男と勝負したくて、高知県から彼がいると噂される山に向かっていたんだ。そうしたら暗闇に飲まれ……」
「あなたも時空の術の影響で魔法の世界へ来てしまったのね」
「魔法の世界!?」
レイカは龍馬に魔法世界の事を話した。
100年前に起きた魔王たちとの戦いのことも、そして、その魔王たちと戦った一人に土方総司がいたことも……
「そうか……別の世界にワシや土方は来たのか。そして、土方はもういない」
「お兄ちゃん、別の世界の人間なんだ」
ロウの問いに龍馬は頭をかき笑いながら「そうみたいだ」と答えた。
そしてロウはある紙を見せた。
そして龍馬は驚いた。
「これ、父ちゃんから貰ったんだ。この国はまだまだ知らないことが多い。海の向こうにも国がある。それを確かめようと、ソージャー君とこと海に出たんだけど、嵐に会って……」
「そうか……この世界の事はいまいちまだ、分からないが、海の向こうにはこの地図に書かれたような国がある。」
「ホント!」
「ああ、不思議なことにワシのいた世界と似ている。少し違うがね」
「龍馬さんのいた国はこの地図だとどこなの?」
ロウの問いに、龍馬は小さな島国を指した。
「この地図では聞いたことのない街や村の名前が書いてあるが、でもワシが生まれた日本に似ている」
「小さい国なんだな」
と、ソージョーが言った
「地図では小さくても行ったら、大きな国だぜ」
「へ~」
「でも不思議ね。土方さんや龍馬さんのいた世界と私たちの世界が似ているなんて」
と、レイカが言った。
「私思うんだけど、これ土方さんが書いた落書きじゃないの?」
と、ロージアは言った。
「そんなことないよ。この地図はビンの中に入っていて、父ちゃんが海辺で拾ったんだ。きっと海の向こうの人が海に流して、世界にはいろんな国があるんだと教えてくれたんだ」
「そ、そうかもね」
「とりあえず明日、龍馬さんが元気になられた報告と地図の事などを長老様に伝えましょう。」
果たして海の向こうには別の国があるのだろうか?
龍馬は日本語を話すときだけ土佐弁になります。
あと、マジカルワールドは国王がいるファンタリームの街を中心に東西南北に村や町などがある。政治なども国王を中心に村長や町長、長老らによって行なわれる。
国王の座は王族の生まれでなくても、なる事ができ、死戦組の者たちにもそのような話があったが、誰一人王や王妃なった者はいない。